第106話 屋台街
「いやあ~本当にうまかったぜ。なるほど、ヴィオラとリリスとどうして一緒にいるのか不思議だったが、ケンタは凄腕の料理人だったのか」
「……そうですね、そんな感じです」
確かに今は3人の専属料理人みたいになっている気もする。
「ケンタさん、本当にご馳走さまでした。あのソースという調味料もとてもおいしかったです」
「気に入ってくれたようでよかったです」
もちろんソースもしっかりと味わってもらった。2人とも特殊個体のアースドラゴンに満足してくれたようだ。
「……それにしてもこのカツという料理法は驚きましたね。ソースもそうですが、レシピを大手の商会へ持っていけばかなりの高値で買い取ってくれると思いますよ」
「そんなこともできるんですね」
確かにネットがないから、こっちの世界では簡単にレシピを共有したり教えたりできず、料理法自体に価値があるのかもしれない。
「ありがとうございます、少し考えてみます」
ロイマさんにお礼を伝え、冒険者ギルドをあとにした。
「レシピを売るなら商会を紹介するけれど、どうする?」
「う~ん、料理方法は全然広げてもいいけれど、お金には困っていないからやめておくよ」
「キュウ」
街の市場と屋台がある方へ向かいながら、リリスが先ほどのロイマさんが言っていたことを聞いてくる。
悪用できたり武器になるような技術とは違って、料理方法なら俺の世界の知識をこちらの世界に広めてもいいと思っているけれど、レシピを提供して変に目立つのは避けたいところだ。目立ってトラブルに巻き込まれることが一番困る。
ただ、こちらの世界でどうしてもほしいような高価な物を見つけた時にはこちらの世界のお金の確保手段として覚えておくとしよう。
「今は偵察の報酬としてもらった金貨200枚もあるからね。本当に偵察だけでこんなにもらっていいかはちょっと疑問だけれど……」
レンダーさんに確認をしたところ、偵察の報酬はリリスがもらった金貨200枚分らしい。
「あの偵察があったから、犠牲者が出なかった。他の冒険者も最低金貨100枚以上はもらっているだろうし、むしろ少ないくらい」
「そんなものなのか……」
ドローンで安全に偵察をしただけで200万円近くの報酬を受け取れたことに驚いている。
リリスが言うには参加している冒険者たちもそれくらいもらっているらしい。だいぶ気前がいいなとも思ったけれど、アースドラゴンの素材は特殊個体でなくともかなりの価値があるらしく、街の市場もにぎわうし、最終的には冒険者ギルドも黒字で終わるらしい。
アースドラゴンの群れという災害級の魔物だが、こうやってお金になるのはありがたいな。地震や津波みたいに害になるだけの災害とは少し違うみたいだ。
俺もこちらの世界で自由に手に入れたことだし、このあとの市場や屋台をまわる時は気兼ねなく回れるぞ。
「おお、ここが屋台街か! すごく広くていろんなお店があるな!」
「キュキュ、キュウ!」
まずは腹ごしらえということでいろんな屋台が立ち並ぶ屋台街へとやってきた。他の街ではここまで広い屋台街はなかったので、俺の肩にいるハリーも興奮しているようだ。
「それにすごくにぎわっているみたいだ」
「アースドラゴンの群れの討伐が無事に終わったことで、みんなお祭り騒ぎになっている。人が多いからはぐれないように注意して」
「……うん、了解」
屋台街は人が多くてだいぶにぎわっている。昨日俺たちが祝杯をあげたように、街のみんなもお祭り騒ぎなのだろう。これからアースドラゴンの肉や素材なんかも市場に回ってくるから、市場はさらににぎやかになるらしい。
見た目だけでいうと小さな子供に見えるリリスの方が迷子にならないか注意したほうがよさそうだけれど、実際に迷子になって一番困るのは俺だからな。ヴィオラの場合は迷子になろうとひとりでどうにでもできそうだ。
「飯は屋台で食うよりもケンタが作ってくれた飯がいいんだけどな……」
「私も……」
「俺もこの街の屋台を楽しみたいからな。夜は市場で購入してきた食材を使ってなにか作るから我慢してくれ」
2人がそう言ってくれるのは嬉しいが、俺もせっかくなら異世界の街の屋台の料理を楽しんでみたい。夜はまた宿で何か作るから我慢してもらおう。
それにしても道を歩く人たちからだいぶ見られている。ダークエルフのヴィオラとエルフのリリスと魔物のハリーを肩に乗せた俺はこちらの世界では目立ちすぎるのだろう。冒険者の格好をした人たちはヴィオラを見て一瞬ギョッとしていたから、昨日の討伐戦での戦闘でだいぶ目立っていたんだろうなあ。




