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78 アストリア要塞を攻略する

「お見事ね、総司令官閣下」


 フラメルが僕と馬を並べ、悪戯っぽく微笑む。


「みんなが僕の指示を忠実に実行してくれたからですよ」


 僕は前方を見据える。


 ドルファ将軍を始めとした騎士団の各部隊が、敵要塞を勇猛に攻め立てている。


 魔法師団は要塞の破壊部分にさらなる攻撃を加え、城壁の損傷を拡大させていく。


 相手側は要塞の防御力に絶対の信頼を置いていたんだろう。


 明らかにパニック状態で、こちらの攻勢に対して防戦一方の様子だった。


 僕はさらに【鑑定の魔眼】を発動し、敵軍の動き全体を見極める。


「どうやら逃走に入りそうですね。このままの勢いで押し切れると思います」

「君の眼には全部見えてるんだね」

「【魔眼】の精度が以前より上がっているように感じます。魔王の力を何度か行使したことで能力そのものが底上げされているのか、あるいは――」


 僕はふと思いついて、自分自身を【鑑定】した。




 名前:クレスト・ヴァールハイト

 真名:アレス・メルディア

 体力:特級→超越級

 魔力:なし

 耐久:特級→中級

 スキル:剣術(特級)→剣術(超越級)

    :魔王の力(上級)※追加

 魔眼【鑑定】

 魔眼【石化】

 魔眼【毒殺】

 魔眼【呪怨】

 魔眼【吸収】

 転生【祝福】(器の魂の書き換え)

 転生【覚醒】(能力の覚醒と進化)

 備考:魂の定着率:63%(不安定状態)→91%(安定状態)




「これは――」


 以前とは表示が変わっている。


 いくつかの能力が『特級』から『超越級』となり、おそらく能力が向上したんだろう。


 さらにスキルの部分には『魔王の力』が追加されている。


 しかも魂の定着率も以前の不安定状態から安定状態へと移行したようだ。


 これは、以前より状態が良化していると考えていいんだろうか?


 それとも……。


「クレストくん?」


 フラメルが怪訝そうに僕を見つめた。


「どうかした?」

「……いえ」

「あたしには言えないことなの?」


 フラメルが僕をじっと見つめる。


「それは……」


 僕は口ごもった。


 自分の『変化』を誰かに語ることに不安を覚えた。


 いや、弱みにつながるかもしれない情報を見せたくなかったのだ。


 相手がフラメルでも……いや、彼女だからこそ。


「クレストくん」


 フラメルが僕を見つめる。


 ――いや、違う。


 他の人間ならいざ知らず、フラメルだからこそ……彼女にだけは伝えておいた方がいい。


「今、僕自身を【鑑定】してみました。以前とは内容が変わっていて――」


 と、先ほど見た内容を彼女に伝える。


「能力の底上げに『魔王の力』の追加――確かに、今までのクレストくんの戦いぶりを反映したような情報ね。ただ……」


 フラメルが眉を寄せる。


「『耐久』の部分が下がってるのが気になるの。君は……以前よりも体が弱くなっている、ということ?」


 僕を見つめる目には不安や心配の色が濃い。


「ねえ、体の調子はどうなの? もしかして『魔王の力』を使うようになって、君の体に反動が――」

「大丈夫ですよ、フラメル」


 僕は微笑んだ。


「体調の変化は特に感じません。ただ、耐久が減っているなら、以前ほど無茶はできない、ということかもしれませんね……」

「――じゃあ、その分はあたしたちを頼って」


 フラメルが身を乗り出す。


「君は今まで、一人で戦いすぎたのよ」


 一人で……か。


 確かに僕は単騎で戦うことも少なくなかった。


 絶大な『魔王の力』を振るう際、周囲を巻き込まないために。


 何よりも僕一人で戦局を打開すれば、味方を誰一人傷つけずに済むという思いから――。


「それは君の優しさから来る好意だったんでしょう? でも戦争を一人で終わらせることはできない。あたしたちも、戦う」


 フラメルが僕を見つめる。


「その覚悟は全員が持っているのよ」

「覚悟――」


 彼女の言葉が僕の胸を打つ。


 そう、僕だけが命を懸け、想いを背負い、戦っているわけじゃない。


 そんなことは分かっていたはずなのに――。


『魔王の力』という絶大な力を振るっている内に、いつのまにか自分一人で全てを打開できるような気持ちになっていたのかもしれない。


 だとすれば、それは傲慢だ。


「僕は――」

「お願い。あたしたちのことを信じて。あたしたちのことも頼って」


 フラメルが手を差し伸べる。


「信じていますよ、いつでも」


 僕はその手を取った。


「だから、一緒に戦って――勝ちましょう」




 その後も、僕たちはアストリア要塞を攻め立てた。


 特に歴戦の猛将であるドルファ将軍の功績はやっぱり大きかった。


 さらにフラメルの補助魔法が全軍の能力を底上げし、やがて戦いは一方的なものとなった。


 僕自身も最前線で剣を振るったし、リゼッタ先生も獅子奮迅の活躍を見せてくれた。


 さらにドルファ将軍が指揮する騎士たちの働きも大きく、魔法攻撃を間断なく繰り広げてくれた魔法師団の援護もあり――。


 ほどなくして、僕らはアストリア要塞を攻め落とすことができた。


 わずか半日足らずでの圧勝劇だ。


 兵たちは歓声を上げ、空には無数の帝国の旗が空にひるがえった――。

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敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。


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