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33 告白2


 暴走していた時の意識は混濁していて、記憶はほとんどない。


 自分がそんなことを口走っていたなんて、今の今まで知らなかったのだ。


「ねえ、クレストくん。君はいったい――何者なの?」


 核心を突く質問が僕の胸に突き刺さる。


 長い、重い沈黙が部屋を支配した。


「僕は――」


 言葉が、震える。


「僕、は……」


 意を決して、すべてを語ることにした。


「おそらく姉上が推察している通りです。本当の僕は『アレス・メルディア』――今はこの『クレスト・ヴァールハイト』に転生した身です」

「てん……せい……?」


 フラメルが呆然とした顔で僕の言葉を繰り返す。


「この現象を『転生』と呼べばいいのかどうか、それすら分かりません。ただ僕は祖国で処刑され、半年後にこの体へと転生しました。今まで調べたことから推測すると、本来の『クレスト』の肉体に僕の――『アレス』の魂が移植されたようです」

「魂の移植……?」


 彼女はまだ呆然とした様子だった。


「じゃあ、もともとのクレストくんは?」

「分かりません」


 僕は力なく首を左右に振った。


「どこかに魂だけの状態で存在しているのか、それとも完全に消え去ってしまったのか……」

「……そう」


 フラメルが悲しそうにうつむく。


「だから、僕は――あなたの弟ではありません。この体はともかく、魂は――」

「……あたしは、そもそも君の姉じゃないのよ」


 フラメルが悲しげな顔で僕の言葉を遮った。


「あたしは皇帝陛下と母上の実の娘じゃない。母が別の男と通じて、生まれた……魔女」

「魔女――」


 その言葉に息を呑む。


「【癒しの聖女】なんて言われているけど、あたしは……あたしの父は」


 フラメルの表情が歪んだ。


 今まで見たことがないほど痛々しい表情だった。


「人ならざる者――魔族だ、と。母は……はっきり教えてくれなかったけどね」

「姉上は、魔族と人間の間に生まれたということですか……!?」


 僕は驚きに言葉を失った。


 魔族。


 伝説の中にしか存在しないはずの【闇】の眷属。


 かつて世界を滅ぼそうとしたという恐るべき存在。


「ずっと、自分はここにいてはいけないんじゃないかって思ってた。あたしは、みんなとは違う『他人』なんだって……ううん、そもそも人間の世界にいていい存在なのか、どうかも……」

「姉上……」


 フラメルの告白は、僕の胸に深く突き刺さった。


 彼女もまた、僕と同じように孤独を抱え、自分の居場所を探し続けていたのだ。


「姉上も、寄る辺のない気持ちでいたのですね」

「ふふ、君と同じだね」


 フラメルが寂しげに微笑む。


 その儚い笑顔を見て、僕は衝動を抑えきれなかった。


 気づけば、僕は彼女の華奢な体を強く抱きしめていた。


「僕が、側にいます」

「クレストくん……?」


 僕の腕の中で、彼女が小さく身じろぎする。


「僕があなたに寄り添います。あなたが魔族との混血だろうと、僕が転生者だろうと、関係ない。僕たちは、同じ痛みを抱えている」

「……ありがとう」


 やがて、フラメルの腕が僕の背中にそっと回された。


「あたしも、君に寄り添いたい」


 彼女の声は震えていた。


「たとえ姉と弟じゃなくても。もっと深い絆で支え合えたら……」


 その言葉は、僕たちの間にあった最後の壁を溶かしてくれた気がした。


 僕たちは本当の意味で、ようやく出会えたのかもしれない。


 この孤独な世界で、互いの魂を温め合う、たった二人の同類として。


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敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。


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