白熊の野望:タ式航空機
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なので次回は特別回を挿入いたします。
気球を見た後に、二ノ宮博士が現在開発中の「タ式航空機」の模型と、その試作機製作の様子を見学させてもらった。
タ式航空機とは、史実の二ノ宮博士が陸軍に考案していた航空機である玉虫式航空機の略称である。
史実では玉虫式飛行器として開発が進められていたもので、理論的にいえば飛行可能であったが肝心の飛行機のエンジンの出力が不足していたことと、ライト兄弟の飛行機完成の報を聞いた二ノ宮が怒って飛行機を破壊してしまい、以後開発は中断となってしまった悲劇の飛行機であった。
後に、とある陸軍中将が二ノ宮が考案していた航空機の着眼点に気が付くも、既に第一次世界大戦が終結した後であった。その時には既に二ノ宮は飛行機に関連する事業から足を洗っていた後であったので、彼の功績が評価されるまでには実に20年以上掛ったのだ。
現在製作されているタ式航空機は、史実の鬱憤を晴らすべくエンジンなどの動力源を大幅に強化した航空機として、後世の歴史家が人類史でも初めて航空機開発に成功した例として取り上げてもらうべく、日々開発と研究が進められている。
陸軍の気球生産によって開発速度が低下しているとはいえ、それでも19世紀末までには飛行が可能になる予定だ。
まずタ式航空機のスペックは、全長6メートル、全幅11メートルの大きさで、使用するエンジンは現在テスラ博士が目標値15馬力を発生させるガソリンエンジンをダムの発電機と並行して開発が進められている。
二ノ宮博士とテスラ博士との関係は良好であり、齟齬などは現在生じてはいないようだ。
また、科学的に航空機が実証可能なものかどうかの研究資料が必要なので、風洞実験や数学・科学分野の専門家や研究者を交えた意見交換会も定期的に開かれている。
二ノ宮博士も風洞実験や科学的な実験結果に関しては、学ぶべきことが多いと感心し、初心に戻って数学や科学分野の研究に熱を入れているようだ。
タ式航空機が世界初の有人動力飛行となれば、航空機開発も大幅に加速するだろう。
同時にそれは敵国に強力な航空機の出現を速めることにもなり得る。
航空機の出現は戦場を変えた、特に第二次世界大戦は空の戦いが陸海の戦いを制したといっても過言ではない。
それを位置づけたのは真珠湾攻撃である。
それまで航空攻撃によって戦艦は沈まないとされていたのを日本海軍の航空隊の奇襲攻撃によってアメリカの戦艦数隻が着底ないし大破する被害をもたらした。
この被害を受けたアメリカは艦隊火力決戦思想ではなく航空火力決戦思想を重視するようになった。
ミッドウェー海戦以降、米軍は航空機による攻撃が有効であると判断し、陸海に戦闘機や攻撃機、爆撃機などを大量に生産し、太平洋と西ヨーロッパに派遣し大きな成果を上げた。
対する日本は次々と戦艦や空母といった大型艦艇を失い、また敵艦隊への有効な反撃手段が徐々に減っていき、最終的にたどり着いたのが死を厭わない神風攻撃であったのだ。
パイロット自身が搭乗する機体そのものが爆弾であり、アメリカを中心とした連合国軍艦隊への反撃可能な手段として戦争末期には多くのパイロットが戦艦や空母に体当たり攻撃を仕掛け、そのうち2割近くが体当たりに成功したのだ。
しかし、戦局の流れを変えることには出来なかったのだ。
最も恐れているのが八木アンテナのように、自国では評価されずに海外で評価された結果、占領したシンガポールで八木アンテナを見た日本軍将校が、捕虜から日本人の発明品だと聞かされて驚いた逸話があるといった具合に、電波やアンテナに関する分野で日本が遅れていたという笑えないような話が史実ではあったのだ。
戦後の歴史研究家の間では、もし八木アンテナの重要性を日本軍が理解していたら、太平洋戦争は日本が勝利していたかもしれないと言われているほどなのだ。
つまり、航空機も真っ先に軍に理解してもらえないといけないということだ。
幸い陸海軍には顔が効くのでその辺は大丈夫だろう…たぶん。




