民主主義を守る戦い:黄海海戦2
だが、ローゼンハイム級駆逐艦は砲火を掻い潜り、単装砲による集中攻撃に切り替えた。
魚雷を撃ち尽くした彼らは速力の早いことを活かして近接攻撃を仕掛けてきたのだ。
火力と装甲でいえばレトヴィザンが上であるが、4隻の駆逐艦から集中砲火を食らい、そのうちの一発が後部主砲塔に着弾。
砲塔内にいた砲手は全員戦死した。
後部主砲塔が沈黙したが、副砲はいまだ健在であった。
絶え間なく、駆逐艦を寄せ付けないように副砲は連射しながら防衛戦を行う。
「後部主砲塔沈黙!中にいた者は全員戦死!!」
「副砲にて駆逐艦への対応を継続中!!!」
艦内はより一層緊迫した空気に包まれる。
そしてドイツ帝国海軍駆逐艦ノイボイアーンの放った砲弾が、佐官たちを閉じ込めていた懲罰室に直撃した。
厚い装甲に守られていた筈の懲罰室に砲弾が届き、炸裂する。
艦内で激しい揺れが襲い、水兵たちの悲鳴が唸りを伴って響き渡る。
アルチョム大尉は被害状況を知らせろと怒号を飛ばす。
「落ち着け!!!各員、被害状況を報告せよ!!!」
「右舷に駆逐艦の砲弾が命中!!!右舷後部の副砲2門が使用不能、火災発生!!」
「右舷後部側の通路の一部が破壊されました!!!懲罰室もろとも吹き飛びました!!!クラーミ大佐、ムドロフスキー少佐の戦死を確認!!!」
「………くっ、すぐに消火作業に当たれ!!!いいか、回避行動を取りながら駆逐艦を寄せ付けるな!!!魚雷もありったけ撃ちまくれ!!!」
アルチョム大尉は冷静に判断を出しつつも、佐官クラスの人間が死んだことを悔やんでいた。
彼らが生きていれば、まだロシア帝国政府との交渉で有利に立てたかもしれない。
しかし、死んだことでそれはできそうにない。
もしこの艦が行動不能になり、ドイツ帝国海軍の捕虜になってロシア帝国の軍法会議に引き渡されたりでもしたら確実に死刑は免れない。
自身の正当性の主張すら言える機会はないだろう。
一刻も早く日本海軍の救援がこないものだろうか…そう思っていた矢先であった。
「あ、アルチョム大尉!!!前方11時の方向より飛行物体が接近中!!!」
「飛行物体だと…気球や飛行船ではないのか?」
「はい…えっと………おそらく日本海軍の軍用飛行機だと思われます!!」
アルチョム大尉が双眼鏡を取り出して11時の方向を見てみると、そこには8機の飛行物体がこちらに接近しているのを確認した。
4年前に日本が最初に実用化した飛行機という乗り物かもしれない。
アルチョム大尉も飛行機は写真で見たことがある。
確かに今、見ているのは飛行機だろう。
飛行機から発光信号が送られてきた。
いち早く発光信号をソドロフ中尉が読み上げる。
「【……我々は日本帝国海軍航空隊なり、当部隊はレトヴィザンを援護する、当機への攻撃は慎むように………】ま、まさかあの飛行機で駆逐艦をやるつもりなのか?!」
「あの飛行機があてになるのかはわからないが………おそらく近くに日本海軍の艦隊がいるのだろう。全砲手に伝令、あの飛行機は絶対に撃つなと厳命しろ!!!それと日本海軍の援軍が来たと伝えろ!!駆け足で、そして大声で伝令しろ!!!」




