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困っちゃったな……

 ロランシルトでの時と同じで、僕達はいつの間にか大地の上に立っていた。魔穴のあった辺りのはずだ。端末で確認しようかと思ったところで、名前を呼ばれて振り返る。と同時に抱き付かれた。


「ありがと、ランちゃん。皆の魂を……私達の未来を、救ってくれて……」


 見上げれば、キリーさんはまた泣いていた。でも今度は、嬉しい涙だよね?


「ランちゃんはさ、手慣れてたよね……。前にもこうして助けた事があるんでしょ? ランちゃんって、私達を救ってくれてるんだね。放浪者で、異世界の人で、この世界には生きてないのに……。本当に、ありがと。でもお礼がしたいのに、何をしても釣り合わないよ。困っちゃったな……」


 そう言って、またきゅっと抱き付く。可愛い。


 僕なんて、もうこれだけでも満足なんだけどなあ。これ以上のお礼なんて必要ないよ。


「さ、帰りましょう。調査も終わりましたし、明日は帰りますよね? それなら宿でゆっくり休んで、備えないと。また二人で、走って帰るんですから」


「そうだね。……うん、帰ろうか」


 涙を拭うと、キリーさんは笑顔を見せてくれた。いつものものとはまた違う、晴れやかで素敵な笑顔だ。かなり魅力的で、ちょっとときめいた。


 女性の笑顔って、やっぱり良いよね。




 帰りも来た時同様に、なるべく戦闘を避けた。でも魔穴を閉じたからか魔物は少なく、遥かに楽だ。あ、ロープと杭は回収した。ロープは僕達と同じように地表に出てて、適当な感じにごちゃっとなってた。


 そんなこんなでノリアエントに着いたのは夜だった。酒場は賑やかで、楽しげに人々が行き来してる。その中を二人で歩き、宿に帰った。


 食堂兼酒場で食事した後はまたキリーさんの部屋に呼ばれて、そこで相談だ。


「魔穴が消えたでしょ? 報告をどうしようかと思って」


 そうなんだよね。調査に来たのに、僕は閉じちゃった。無くなったものの情報なんて、もう意味の無いものだ。ならどうするかって事を話し合わないといけない。


「途中まで報告するというのはどうです?」


「何処まで?」


「黒い壁に顔がびっしり、まででしょうか」


「んー……それが無難かなあ」


 閉じた事は当然秘密。そこまで行って、魔物が大挙して来たから帰った。それで良くないかな?


 まあ、要は嘘の報告するわけだね。帰らなかったから。


「うん、そうしようかな。それじゃ、寝ようか」


 賛成……はするけどさ。僕を掴んだその手は何?


「よいしょっ」


 なんてかけ声で、僕をベッドに押し倒す。


「お礼、させてね。これからいっぱい返してくから」


「えー!?」


 そういうお礼の仕方は感心しないよ!


「あー……ごめん。嘘吐いたかも。お礼って言うより、私がそうしたいだけかな」


「それって、どういう……」


「うん、好きに……なっちゃったかな?」


 ……ず、随分ストレートに来るね。


 こういう事、慣れて……はいないみたいだね彼女も。顔が赤くなった。可愛いなあ。でも僕も今似たようなものだと思う。もう熱くて熱くて。


「いきなりでごめんね。でも、ランちゃん……格好良かったよ」


「か、格好良かった……ですか」


「うん。そう言えばあの時、変な事言ってたね。でも、それはまた明日聞こうかな。今はね、夜を……」


「待って待って!? 僕はほら、放浪者ですから! そういう事は出来ないわけで!」


「そういう事は出来なくても、出来る事はあるでしょ?」


 ああ、ヒルダ様から離れてほっとしたのも束の間、今度はキリーさんか……。しかもヒルダ様と違って、思いっきりそういう好意を向けられてる。滅茶苦茶困った。


 嬉しいけどさ、伴侶にはなってあげられないじゃん!


 などと戸惑ってると、唇を奪われた。ああもう、強引なんだから。


『だが、嫌いではないのであろう?』


 よくわかってらっしゃる。


「まあ、今日のところはここまでにしとこうか。もっと色々したいけど、ランちゃんを困らせちゃうのは不本意だしね。でも添い寝は許してくれる?」


「……はい」


 添い寝くらいならね。すごい安堵しちゃった。


 何かね、ヒルダ様よりやり辛さがあるんだよ。あちらはそういう行為自体が目的って感じだったから、まだ気楽なところがあった。でもキリーさんは違う。そうなると、こちらの気持ちが伴ってないからどうにも罪悪感がね。


 出来れば口付け前に、思い留まって欲しかったなあ。







 翌朝、端末を見て驚いた。階級上がってるじゃん!


 小躍りして、ハイテンションのままキリーさんにも見せて大喜びした。


「ランちゃん可愛い」


「う……。はしゃぎ過ぎましたかね」


「良いと思うよ?」


 恥ずかしいので、今後は気をつけたい。


 ともかく、二人で確認した。敏捷が二点上がって十六に、魔力も二点上がってこちらは二十になった。筋力は上がりませんかそうですか。わかってたよ!


 魔導器がとうとう強化するか一つ増やすか選べる。ここは強化一択だけどね。剣で斬れない相手がどうにも苦手だからなあ。飛ばす刃の威力にも繋がるし、確実に戦力を上げられる。


 最後は技術。あると便利なのは、やっぱり識別かな。効果がわかってない魔道具持ってるし、これが何なのかわかるってのも大きい。


 後は……魔具? 何これ? 説明を読むと、魔道具を作る技術……!?


「え、ランちゃん何でそんなの選べるの!?」


「いや、何ででしょうね……」


 作った事があるからだね! これ取れば自分だけで作れるわけ? でもファリアに任せれば良いからなあ。一緒にやるの、楽しいし。


『お主はまたそうやって、可愛らしい事を言う。我をこれ以上虜としてどうするつもりなのだ?』


 ……どうしようね。


 ファリアは置いといて、技術を選ぼう。識別で良いかな。


 ……並び方が気になるなあ。看破の次に入れられたら……移動した……だと……!?


 まさかこれも魔力操作? まあ別に、順番なんて特に意味の無い事だろうけども。この調子で、例えば敏捷を減らして筋力にとか……出来ませんかそうですか。


 何はともあれ、これでチョーカーの効果がわかる。さて、どんな魔道具なのかな?


 インベントリの表示を見ると名前が『浄化のチョーカー』に変わってた。効果は範囲内の対象に付着及び混入した異物の除去。これはまた、便利な。早速装着。


「あ、可愛いね」


 首ぴったりに巻かれた黒い生地の帯に、黄色を宿す魔石が銀の金具で取り付けられてる物だ。識別によれば魔術の階級は三、魔力量五。


 ちなみに集音の耳飾りは階級二の魔力量五、風盾の腕輪は階級五の魔力量十二だった。


 階級五て……。四じゃなかったのかね。


 まあ、高い分には良いか。それじゃあ、試しにキリーさん。


「浄化!」


 いきなり使ったんで驚かせたけど、キリーさんの服や装備、身体などに付いてた汚れが全部除去されて綺麗になる。


 ふっふっふ……ごめん、フレア! 洗濯してもらわなくても大丈夫になっちゃった!


 生地の傷みとかは見てもらわないと駄目だから、結局お世話になるけどね。


「すごい! ありがと、ランちゃん!」


「僕にもやっておきますかね」


 キリーさんには三点の魔力でやったんだけど、範囲は直径でおよそ四メートル。僕には二点で、これは三メートルくらいだった。使い切ったから僕から魔力を注入してみる。


 キリーさんから魔力を受け取った使い方の逆パターンだね。上手く出来て充電……じゃないや。充魔力? 充魔? 完了だ。腕輪と耳飾りにもしておいた。


「キリーさんのおかげで魔道具の魔力も補給出来ます。使い放題ですよ!」


「本当に魔力操作って便利だね。こんなに色々出来るなんて……」


 エーテルの知識は必須だけどね! こちらはファリアのおかげ。


『使いこなしておるのはお主よ。胸を張って良いのだぞ?』


 だったら皆のおかげって事で。


 二人揃ってさっぱりしたところで、宿はチェックアウト。戦士ギルドに顔を出したら、トリシアへ帰還だ。




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  名前 ラン

  種族 ハーフエルフ

  性別 男性

  階級  四


  筋力  六

  敏捷 一六

  魔力 二〇


 魔導器 強化属性剣

  魔術 魔力操作   魔力感覚


  技術 看破     識別

     軽業     跳躍


  恩寵 旧神ナルラファリア


  ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一

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