お断りしまーす
さすがに出払ってるわけじゃない魔穴。ある程度進めば魔物達と遭遇する。それを僕の剣とキリーさんの魔術で何とか迎撃して進んだ。
「そこ! 走っちゃ駄目です!」
「魔物は聞いてくれないよね」
でもつい、ね。酷い魔物なんか、爪を食い込ませて走るんだよ? さすがに言いたくなるでしょ。
そのついでに刃飛ばして斬るんだけども。
奥へ行けば行く程魔物の集まりも良くなって来るから、結構きつい。キリーさんの使う土の荊の魔術が迫る魔物の数を制御してくれるおかげで随分助かってるね。荊が捕らえた魔物に剣を突きの形で撃ち込み、深々と貫けばダメージも大きい。忙しいけど、おかげで何とかかんとか進めてる。
「あ、また! もう……顔の上を走るなって僕、言わなかったっけ!?」
「ランちゃんが怒った……」
酷い事して、許さないからね!
キリーさん、少しは気分戻ったかな? まだ暗い感じはするけど喋る事は喋るし、しっかり付いて来てる。顔色も良くはなってる。ただ、目には疲れが見えた。
この世界の未来を考えると確かに辛い。でもこちらの人達は、ここで生きるしかない。
何とか元気になってもらいたいところだ。
進み始めて三時間程が過ぎた。度重なる戦いには打ち勝って来てるけれど、いよいよ魔物の数が馬鹿にならない量となった。キリーさんの足止めは手が足りず、刀身の殲滅力では倒し切れない。退かなければ危険な場面が多くなり、進む距離に戻される距離が並び始める。
風の盾を使って接近を阻んだりはしても、それで何とかなる数でもない。二人というのが、無茶だったのかもね。……当たり前か。
「仕方ありません! ここまでにしましょう!」
「わかったよ!」
包囲される前に離脱を始める。追いかけて来る魔物の前には風の盾を横にして配置。細い板に身体を打ち付けたような状態でぶつかり、後続も次々餌食に。それを何度か繰り返せば、さしもの魔物達と言えどスピードは鈍った。
一方で僕達は魔力操作による身体操作で速く軽く走れる。追い付かれる心配は無いし、このまま逃れられるはずだ。
ところが。
「ハーピー!?」
「何ですかこの数!?」
上を先回りするように飛び、ハーピーの群れが行く手を遮った。僕達を帰すまいと、口々にぎゃあぎゃあ威嚇してる。
二人でハーピーに攻撃を集中させた。僕は連続で刀身を撃ち、魔力を消費して爆発までもさせる。キリーさんも細かく魔力を込めて、強めに束縛して棘を突き刺す。それでも止め切れず、ハーピーの接近を許してしまった。翼を使った飛び込みは素早くて、やっぱり手が足りてないんだ。
僕は前に飛び出し、魔力操作の力を乗せて剣を振り回す。出鱈目でも振るスピードを重視して、飛ばしたりも織り交ぜながら迎撃した。
でも、追いかけてる魔物も後ろから来てる。斬り上げて跳びながらそちらにも刃を撃って牽制、風の盾を併用して何とか阻み続けた。
そこを隙だと見たハーピーの蹴りは魔力操作で強引に身体をひねって回避。ついでに蹴り返して足場代わりにさせてもらい、方向転換してキリーさんのそばに着地する。
「すごい動きだね、ランちゃん」
「レイドボスよりは怖くないですからね」
「一人で食い止めてたって噂には聞いてたけど、本当なんだ……」
シュテンとの戦いが、上手い具合に僕の度胸の在処になってる。良い経験だったね。
しかしこれ、逃げられるのかな。足を止められちゃったからすごい集まって来てる。包囲されるのも時間の問題かもしれない。
キリーさんだけは何とか逃がさないといけない。なのに、もうハーピーの向こうに次の敵が見えてる。ハーピーを突破出来ても次が来る。本格的にまずい。
「ランちゃん、私の事」
「お断りしまーす」
「まだ言ってないって」
「僕は放浪者だから死に戻れます。でもキリーさんは違いますから。絶対に生きて帰らせますんで」
「……わかった。私も頑張るね」
とは言え手の施しようが……。
『ランよ。ちと思い付いた事がある』
はいはい、何でしょ?
『今お主が蹴って戻るのを見て思ったのだが、風の盾を蹴れるのではないか? あれは大気中に留まるであろう? そしてそれが可能ならば、足場の代わりにもなるやもしれん』
……おー、足場か。ちょっと怖いかもしれないけど、それ良いね。
今はちょうど盾を最大で作ってる。直径一メートル強。このままじゃ見えないから、魔力操作で魔力を出して纏わり付かせよう。そしたらキリーさんに乗ってもらえばちょうど良さそうだ。そのまま持ち上げる事は出来ないから、何度かジャンプする事でその瞬間に上げるという方法で浮かそう。
ぶっつけ本番だけど、キリーさんの身体能力に賭ける! 魔力操作でもサポートするし多分大丈夫!
早速盾を持って来て、ハーピーを牽制しながら魔力でコーティング。
「キリーさん、この上に!」
「え?」
「急いで!」
戸惑う様子を見せるけど、彼女は乗ってくれた。
「真上に何度かジャンプして下さい! これを上に持ち上げます!」
「了解!」
初めの三回くらいは着地が上手く出来ずに体勢を崩したけど、すぐに慣れて五メートルくらいまで上げられた。成功だ。そして彼女はそこから土の荊で攻撃してくれる。
上に上がれば当然飛んでる魔物には狙われた。でもキリーさんへの魔力操作のサポートが最小限で済むようになったから、僕が全力で動ける。飛ぶ魔物を優先的に襲い、次々に斬り刻んだ。キリーさんも同じくそちらを優先するから、ぼとぼと落ちてゆく。
彼女を囲まれる心配が無くなれば、僕の懸念材料はほとんど無くなった。飛ぶ魔物に注意しながらだけど、下の魔物も駆けずり回って斬りまくる。爆発も使いつつエーテルの回収もしておけば、魔力にも然程困らない。
「レッドオーガよりもミノタウロスよりもヘルハウンドよりも弱い魔物に、負けてなんていられないんですよ!」
「比較対象が強過ぎるよランちゃん!」
「ユニークは外してあげましたよ!」
「まだ温情がある方だった!」
ファングハウンドを斬り上げてオークの頭に突きを入れ、刀身を消す事で引き抜く動作を省略したら荊に捕らわれたリザードマンを真っ二つに。バイコーンに乗って迫るホブゴブリンに圧縮した刀身を飛ばし、爆発させて付近の魔物諸共吹き飛ばしたところでファリアの声を聞いた。
『ハーピーとブレードイーグルが来ておるぞ!』
「ブレードイーグルは僕が!」
「ハーピーは任せて!」
キリーさんに向かう刃のような爪を持つブレードイーグルへと飛びかかり、その進路に剣の軌道を重ねた。刃と刃が触れて、ぎんと鳴る。進路を変えた背中へと素早く返した刀身を飛ばして両断。続いて落下地点で待ち構えている魔物複数に連続して刃を撃って、斬り刻んでやった。
ハーピーは荊に捕らわれて落ちている。もがく度に食い込む長い棘がじわりじわりと生命力を削って仕留めた。
彼女の周りには、似たような末路を迎えた者達が転がっていて、黒い塵へと姿を変えている。やがてそれすら一切の痕跡を残す事無く消え去ってしまうはずだ。
魔物達はいつしか攻勢を弱め、僕達を怖れるようにじりじりと退き始める。辺りには死屍累々に塵の山が築かれていた。
「ランちゃんって、とんでもなく強かったんだ……」
「剣で斬れる相手限定ですね。階級五を越えた辺りからは、やっぱり厳しくなりますよ」
「階級三で戦える相手じゃないからね、それ」
「全部魔力操作と魔力感覚のおかげです」
「すごい有用だって事は、物凄く実感したよ」
「キリーさんの荊もすごかったですね」
「これしか無いけどね」
上からの魔物をわりと任せておけたんで、随分助かった。ブレードイーグルだけは速くて厳しいみたいだったから僕が相手したけど、それさえ無ければ任せっきりでも大丈夫なくらい。こちらにも援護が来たりしてて、お互いに持ちつ持たれつで戦えた。さすがは階級四。
ひょいと降りて来るキリーさんを魔力操作でサポート。落下の衝撃を弱めた。風の盾に色を付けてる魔力は回収し、また不可視の盾にする。
さて、進んでも良いくらいの戦果になった。どうしようかな。
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名前 ラン
種族 ハーフエルフ
性別 男性
階級 三
筋力 六
敏捷 一四
魔力 一八
魔導器 属性剣
魔術 魔力操作 魔力感覚
技術 看破 軽業
跳躍
恩寵 旧神ナルラファリア
ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一
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