ちゃん様?
しばしお喋りしたところで、リーフは勉強を始めた。インベントリから教材が出て来て驚かされる。教科書は革の装丁がなされた本、ノートは植物由来の紙の束、それに羽ペンとインクがテーブルの上に広げられた。
これは全部、公式サイトで買えるらしい。現実のお金でも良いし、ゲーム内のお金でも大丈夫。
ただし他人に所有権限を渡す事は出来なくて自分の端末にしか仕舞えず、自分から一定距離離れると自動的にインベントリへ収納されるという。それはそれで放っといても大丈夫なわけだし便利だね。
教材は全年齢分揃っていて、提携してる会社の物が使えるそうだ。あまりにも懐かしくて、ぼんやり勉強風景を眺める。
あら? この羽ペン、もしかしてインク付けなくても使える? 魔力がある、魔道具みたいだ。
「便利なペンですねー……」
「……これも教材セットに含まれてる。付けたインクでずっと書ける魔道具」
それなら、インクさえあれば他の色も使えるわけだね。尚更便利。書類仕事すんごい捗るじゃん。
ヒルダ様とかセシルさんに手伝わされた時は、インクの扱いが不便でさあ。このペンとインクだけ欲しい。売ってないかな?
「……端末から公式サイトに繋がる。そこで買える」
「ありがとうございます!」
早速覗いた。SNSの機能から行けたんだね、気付かなかった……。
見てみると、案外高い。魔道具だから当たり前か。羽ペンとインク数色のセットで金貨一枚だ。これは悩ましい……。一回事務仕事手伝った時は銀貨一枚だった。単純にそれを基準として計算すれば百回だ。
もちろん他の事にも使えるわけだけど、そこまでじゃないよねえ。必要になったら、その時に買おうか。急ぐ必要は無いね。
教材も結構するなあ。こういうのは、あちらのお金で買うものなのかな。
お茶を淹れ直したり、勉強の合間に少し喋ったり。そうしてのんびり過ごす。たまにはこういうのも良いね。落ち着きながらも何となく楽しい。ファリアもゆったりとソファに身体を預けてる。寝てはいないみたいだ。
その内にフレアも一息入れに来たのでお茶を出し、ねぎらう。肩を軽くマッサージなどして
「あ……んあ」
「その声はアウト」
「そう仰られましても……んん」
やらしく喘がないでくれないかな。
んー、結構凝ってるね。元神様でも凝るんだ? よくわかんないな……。
じーっと見られてる、リーフに。何? どした?
「……次、わたし」
「あー。はい、良いですよ」
お、何か気合いが入ったみたいだぞ。可愛いなあもう。高校三年生って言ってたから、今年は受験生か。頑張って……は、いると思うから、上手く気が抜けるようにしてあげたいね。
その後、ファリアにまでやらされたのは言うまでもない事か。
外が暗くなったところで、今日はお城に戻るとリーフはテーブルの上を片付けた。それなら僕も同行しないとね。従士として。
ファリアを中に回収したらフレアにお別れしてお店を出る。二人でてくてく歩いて北門をくぐり、お城の北門も抜けて敷地内へ。お城の入口まで付き添ったところで、お別れになる。
「……ありがとう。またね」
「はい。それでは失礼致します」
お城に戻る彼女の背中は、何となくだけど満足げな気がした。足取りが軽いし、髪が弾んでる。勉強が上手く出来たのかな?
さ、僕も隊舎へ帰ろう。
到着すると、頃合いとしては夕食時だった。そう言えばまだ隊舎でご飯食べた事が無いね。ちょうど良い、行ってみようかな。
食堂を覗くと結構広い。そして結構な賑わいだ。日曜の夜だし、ここで英気を養うつもりだね?
ゲイルとレジーナさんの姿もあった。レジーナさんが僕を見つけてくれて、そばに呼んでくれる。隣が空いてるのでそこにお邪魔した。
料理はテーブルに並べられてる物を適当に取って食べるみたい。飲み物は給仕の人に頼めば持って来てくれるそうだ。果実のジュースやお酒、エール、お茶など種類は幾らかある中から選べる。こういう席だからエールにしようかな。
運ばれて来たエールは麦の香りがしっかり利いててとっても美味しい。料理は魚介類が多い。港が近いし、海の幸が中心の町なのかな? 大好きだから問題無し! 魚から貝からイカやらタコやらあちこちつまむ。サラダは海藻が使われてて、ドレッシングもかけてある。
料理方法は焼いたり蒸したり揚げたり。加工も手が込んでたりして、種類豊富。主に洋と中……これ、教えたね? 餃子とかあるじゃん! 魚介餃子!? 食べる!
などと飛び付いたりしてたら、微笑ましく見られてた。美味しそうだったんだもの、仕方ないね。
そんな席で、何やら妙な言葉が。
「なあ、ゲイル。あの子がまさか?」
「あー? まあ、そうだが。あんま広めんなよ?」
「気をつけるって。ってか、スカートだったよな?」
「フレアだフレア。あいつの仕業だ」
「何っつー良い仕事を! 滅茶苦茶似合う!」
「だが男だ」
「それもまた、な?」
「な、じゃねーよ。俺に同意を求めんな」
「しかしまさか、ちゃん様が従士になってくれるとはなあ」
ちゃん様? それってあれでしょ? 名前が大砲なキャラの。
「それ、僕の事ですか? 射線上に立つなって……僕言ってませんよね?」
「そこは言おうよ!」
言わないよ? 射線なんてねじ曲げるし。
「え、この子そうなの?」
「掲示板で噂の?」
「おー、本物!?」
何これ?
集まって来ちゃったんだけど……。
一部始終を聞いた。こんなの聞かされたら掲示板なんて見に行けないよ……。
とりあえず、ちゃん様はやめさせた。
「じゃあちん様で」
「下品! 酷い!」
悪化してんじゃん! まともなの頼むよ!?
その後は従士仲間達の自己紹介が始まった。でもさあ、こんなに覚えられないって。
ところてん式にどんどん頭から抜けて行く。また後で、個別に自己紹介してね。
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名前 ラン
種族 ハーフエルフ
性別 男性
階級 三
筋力 六
敏捷 一四
魔力 一八
魔導器 属性剣
魔術 魔力操作 魔力感覚
技術 看破 軽業
跳躍
恩寵 旧神ナルラファリア
ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一
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