もうちょっと触っててもらえません?
誰かが腰回りを触ってる。しっとりした手で、ちょっと気持ちい。
「うう、ランちゃん細い……」
「別にお前だって贅肉なんか付いてねえだろ」
「そりゃ、頑張ってるもの」
「抱き心地が良いからな。ちょうど良いと思うぜ?」
「そ、そう? それなら……嬉しい……」
いちゃ付いちゃってもう。
「そいつみてえに肉の無え身体は、ちっとなあ」
「細くて悪かったですね!」
「え!? 起きてたの!?」
「今起きたところですよ。レジーナさん、もうちょっと触っててもらえません?」
「ヒルダ様にしてもらいなさい!」
「ヒルダ様だとほら、色々されちゃうので……」
触るだけじゃ済まないのよ、あの人。それこそ筆舌にし難いからここまで!
「触らせろじゃねえところが、如何にもお前だよな」
「あー……。言われてみると、そちらの欲求は薄いかもしれませんね。触るなら筋肉の方が」
「それもどうだよ?」
「ランちゃん、女性が好きなのよね?」
「もちろんですとも」
だからファリアとかヒルダ様に絡まれると、気恥ずかしくて困るんだよね。この二人の場合は、やり過ぎるところも悩みの種だけども。
だからってむきむきの女性なら完璧かと言えば、そうはならない。筋肉のある女性ならヒルダ様とかリーフくらいが良いな。あんまり筋肉質過ぎると、女性と思えなくなっちゃうからさ。
やっぱり女性らしさが無いと惹かれないよね。僕も男だし、当然の結論だ。
『我も筋肉を付けるべきなのであろうか……』
そのままで良いと思うけどな。ファリアはファリアで、女性としての理想け……いや、何でもない。
『ほう、そうかそうか! 我は理想形であったか! 嬉しい事を言うてくれるのう!』
一般論! あくまでも一般論の話だから!
『そういう事にしておいてやろう。くっくっく……』
うぐぐ……。
今日二人は、これから任務に行くそうだ。何日か継続する任務だけど今回はトリシアを離れるようなものではなくて、むしろ離れられなくなる類いの仕事だという。
「ここには戻って来るがな。調練だとよ」
「兵士の訓練を頼まれたのよ。技術的な事は彼らも上手なんだけど」
「対戦相手っつーかな。まあ、しごいてやってくれって頼まれてよ。報酬が良かったんで受けちまった」
「私は念のための治療担当ね。回復の魔術も手当ての技術も持ってるから」
ほー。そういうお仕事もあるんだね。僕には無縁だけど。人に教えられるような腕前は持ってないから。
従士の制服に着替えたら三人で部屋を出た。僕もフレアのところに行くから、隊舎前までは一緒だ。そこからは僕が北、二人は南と分かれる。水の馬に乗って睦まじく離れて行く姿を見送って僕も出発。お城を迂回して北門を目指し、ヒールの靴で颯爽とは言えないけど颯爽のつもりで歩く。
そうして少し時間がかかりながらもフレアのお店に到着。
「おかえりなさいませ、ラン様」
「えっと、ただいまです?」
「はい。そう仰っていただけると嬉しく存じます」
僕よりも丁寧な言葉遣いで温かな笑顔を浮かべるフレア。今更だけど、ちょっと丁寧過ぎない?
さて、まずは忘れない内に寝巻きを買おう。幾つか見せてもらうけど、勧められたのはやっぱりローブタイプの物だ。薄い生地のそれを二着、二百イルで購入。ネグリジェみたいな物もあるけど、ローブにした。特に透け透けなのはさすがにね!?
「ヒルダ様ならお似合いになるのですけれど」
好きそうだね。新作らしいよ、これ。
工房で試着などさせられてると、奥の扉が開いてリーフが出て来た。透け透けなのを着た僕を見て一言。
「……ランには、似合わない」
「ほら! やっぱりそうじゃないですか!」
「ラン様の場合、その不釣り合いなところが良いのでございます」
背伸びして大人っぽくなろうとしてるみたいだって? もう大人だよ!
「……一理ある」
「無いから! リーフ、そちらに行っては駄目です!」
「酸いも甘いも知ってこそ大人と言います。リーフも一歩、成長なされましたね」
「それ要らない成長ですから! 真っ直ぐ! 真っ直ぐ育って下さい! フレアやヒルダ様の真似しちゃ駄目ですって! ひん曲がっちゃいますからね!?」
「……冗談。ラン、可愛い」
何と!? とうとうリーフにまでからかわれるように……。あれ? ちょっと嬉しい。
さっさと着替えて、透け透けの寝巻きは返した。これは要らない。……何故残念がるかな、フレアさんや。
……と言うかね、何でこんなの着たんだろ僕は。すごい自然に混ぜ込まれて、流れで着させられてたんだけどさ。油断も隙も無いな。
場所を奥にあるフレアの自宅部分に移してリーフとお喋り。ファリアも混ざって、三人のお茶会になった。フレアは店主だからね、閉店までは来れないね。
話題もこちらよりはあちら、日本の事が多い。ファリアにとっては僕以外の話せるプレイヤーは初めてだ。色々興味深いんだろう。僕とは違う生活をしてるしね。学生の日常なんてなかなか聞ける事じゃない。
ただ、そういう話をする相手としてリーフが相応しいかどうかは、ちょっと疑問の残るところだ。
「剣の修練を習慣化しておるとは。ランとは随分違うな。年も違うようだが、世代の差かのう?」
「いやいや! あちらは剣の修練なんてしない時代ですからね!?」
「……わたしは父さんが趣味でやってたから」
「そうであったか。早とちりしてしまったの」
日常的に剣の稽古をしてるとは、さすがに思わなかったよ……。何となく察するところはあったけどこの子、普通の女子高生じゃないねやっぱり。
お父さん、何を教えてんのさ。
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名前 ラン
種族 ハーフエルフ
性別 男性
階級 三
筋力 六
敏捷 一四
魔力 一八
魔導器 属性剣
魔術 魔力操作 魔力感覚
技術 看破 軽業
跳躍
恩寵 旧神ナルラファリア
ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一
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ラン「レジーナさんの手が思いの外心地良くって」
ゲイル「手入れは怠ってねえみたいだぜ」
ラン「とっても気持ち良かったです……」
レジーナ「本当に男性が好きなわけじゃないのよね? ゲイルは駄目よ?」
ラン「無いです無いです」
ゲイル「願い下げだっつーの」




