これから、こちらでもよろしく
セシルさんの仕事を手伝った後は、部屋で眠ってからログアウトする。ベッドに身体を起こして時間をスマートフォンで確認すると、六時を過ぎたところだった。家の事を色々し始めるにはちょうど良いかな。
おっと、メールが来てる。リーフからだね。
「これから、こちらでもよろしく」
端的だ。こちらこそよろしく、と返事をしておいた。
その後掃除や洗濯などを済ませれば、あっという間に昼前の頃合いだ。
今のところ体調は問題無し。精神的疲労も感じない。やっぱり眠るのはあちらでも大丈夫そうだなあ。まあ、まだもう少し様子見しよう。今日は日曜だからちょうど良い。
一通り片付いたけど、ログインは買い出ししてからにしようかな。今からだと、あちらの時間も深夜帯で良くないからね。
そんなわけで帰宅後、昼をしばし過ぎてからのログイン。第三従士隊隊舎の部屋で起き上がると、微妙な目でこちらを眺める顔が見えた。
「おや、ゲイルじゃないですか。今日はもう来てたんですね」
「俺も今来たところだがよ。お前、何て格好してやがる」
「何って、下着ですけど。眠ってたんですから当然ですよね。寝巻きは持ってませんし」
キャミソールも洗濯に出してるから、紐パン一枚だけど。つい胸を隠す。
「隠すくらいなら何か着やがれ」
「習性ですね。こうしてないと落ち着かなくて。あ、でもこの方がそそ」
「黙れ馬鹿たれ」
「酷い!」
既婚者の意見を聞きたかったのに。
やっぱりレジーナさんがこうしたら、すごい破壊力なんだろうなあ。
「ゲイル、まだ……ランちゃん……」
「あ、おはようございます」
「ええ、おはよう。そのポーズはちょっと……」
「いえ、レジーナさんがやったらきっとすっごい破壊力だと」
「ランちゃん!?」
「あー、そうかもなあ。ランと違ってでけえからな」
「ちょっとゲイル!?」
「ノックアウトされます?」
「むしろヒートアップするな」
「もう、二人とも! いい加減にして! ランちゃんはとっとと服を着なさい!」
「はーい」
ちょっと楽しくなっちゃった。怒り方も可愛い感じだったし、本人満更じゃなかったりするのかな? 今度ゲイルから聞き出そう。
ベッドから出て戸棚を開けて
「そっちに仕舞ってるの!?」
「さすがに隠せ馬鹿野郎!」
ゲイルだからねえ。学生時代に更衣室で散々見たでしょ? あ、でもレジーナさんに見られるのはちょっと恥ずかしいかも。まあ、もう見られちゃったし今更今更。
「せっかくありますから、使わないと勿体ないですし。ゲイル、こういう下着はレジーナさんにどうです?」
「ああ? まあ、悪くねえがよ」
「いいからもう、早く着て!」
はいはい。
何か、手伝われた。
「お前、制服までそれかよ!」
そしてやっぱりげらげら笑われた。
今日の予定は、まず洗濯を頼んでいた服の回収かな。その後は、戦士ギルドに行ってみようか。
そんな話をすると、人を紹介してくれた。
「戦士ギルドに行くんなら、キリーっつー受付の職員を頼れ。あいつは信頼出来る」
「そうね、キリーならランちゃんを任せても大丈夫ね」
二人揃ってそう言うなら、訪ねてみよう。特徴を聞いておく。
「俺達は迷宮に行ってくるぜ」
「トリシアにもあるんでしたね」
場所は南らしい。行けばわかるそうだから、今度見に行こうかな。混沌の領域なら、魔穴同様消さないとだし。
また魂を解放出来るかもしれない。それを思ったら、挑戦するしかないよね。
洗濯物は手入れまで万全にしてあって、新品みたいになって帰って来た。早速着替えるけど、今日は戦闘を今のところ予定してないし青のワンピースとサンダルにしようかな。
「ラン様。そのお召し物なら、こちらなど如何でしょう?」
履かせてくれたのはワンピースと同じ色合いの、淡い青のベルトを使ったやや底の厚いサンダルだ。幅広のベルトが足の甲をしっかり覆い、フィットして歩き易い。若干踵側に厚みが寄っていて、ヒールのような足を長く見せる効果もある。
お値段は銀貨一枚。事務仕事の報酬がちょうど消える。良い物なんだとはわかる。お金もあるから別に買っても構わない。ただ、普段なら絶対買わない物だ。
……ええい、買っちゃえ!
ついでに下着についてご相談。そしたら合う物を数点見繕ってくれた。上はキャミソールやビスチェのような形の物、下は紐の物は間に合ってるのでショーツを幾つか。
普通に婦人物なんだよなあ……。
こちらは合計で銀貨二枚と大銅貨八枚。まとめてお買い上げ。紐パンだけ替えとこうかな。白のショーツにインベントリからチェンジ。
え? 洗濯? するの? これ?
……脱ぎ立て紐パンを持って行かれた。
顔の熱を感じながらフレアにお礼を言った。さっさと戦士ギルドに向かおう。恥ずかしくて顔を見れない。
戦士ギルドは貴族地区を囲む円形の第一防壁の外側、ぐるりと回る中央通りの南側にある。中央通りと南通りのぶつかった、三叉路になる南東側が戦士ギルドの敷地だそうだ。
貴族地区は通らず、外側を歩く。内側は完全に壁が続いてるだけだけど、外側は様々な商店が軒を連ねていた。高級感漂うお店が多く、僕には無縁そう。でも眺めて歩くのは楽しくて、高そうな絨毯や宝飾品の数々、美味しそうな匂いのする料理店などをちらちら覗きながらの道中となった。
お金はあるのよ。領主様……いや、もう閣下って呼んだ方が良いのか。従士として仕える事になったわけだし。でまあ、閣下がいっぱい報奨金くれたからね。
でも、高い物買ってもなあ。貴族みたいには意味が無いからねえ。彼らはそれがステータスになるから。侮られないようにだったり、お金を使って経済を回すためだったり、理由は色々だけど贅沢をするにも意味がある。それが僕には無いからね。
使うなら、やっぱり魔道具の素材かな。二つ確保したままの魔石を使うために、ひいては閉じ込められた魂の解放のために、魔道具を作らなきゃね。
風の力の抜けたミスリルは、エーテルにさらせば普通のミスリルとして使う事が出来るらしい。ただし、年単位で時間がかかる。なので使えない。今はちょうど部屋を与えられたから、枕元のテーブルに置いてる。窓が近いからエーテルを回収するにはちょうど良いと思う。
もちろん僕の魔力をあげても良い。けど、多くの魔力で包んでも一度力を失ったミスリルが急速に復活するわけじゃないそうだ。結局、放っとくしかない。
そんなわけで、素材探しは現在全く進んでない状況だ。この辺に良さそうな物は無さそう。貴族向けのお店なんだろうね。
何処かで良い素材が見つかると嬉しいんだけど。
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名前 ラン
種族 ハーフエルフ
性別 男性
階級 三
筋力 六
敏捷 一四
魔力 一八
魔導器 属性剣
魔術 魔力操作 魔力感覚
技術 看破 軽業
跳躍
恩寵 旧神ナルラファリア
ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一
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