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わかりました、なります

「そのなりで男とはな! ははははは!」


 領主様笑い過ぎ。酔ってんじゃないの?


 ともあれ疑惑は……晴れたような晴れてないような。


「まさか女装趣味とはな。なかなか高尚な事だ」


「違います! これは、ヒルダ様の……」


 じと目で見れば、何でもないような顔でワイン飲んでる。


「ランには男装など似合いませんもの。似合う物を合わせたらそうなっただけですわ」


「男装って言葉、男性に使います?」


「ランには使いますわね」


 使わないでしょ!?


 ……ヒルダ様にはこういう話、しても無駄な気がする。おのれ。


「ヒルダの言も納得ではあるがな」


 納得しないでいただきたい!


 ともあれこの話はそれでひとまず終わり。領主様は話題を僕への報奨と今後の事に変える。


「報奨は後でアルベルトから受け取れ。くくく、部屋に向かわせてやる」


 結構ですってば!


「話したいのは今後の事だ。ランよ、お前従士にならないか?」


 謁見でも誘われてたっけね。その場では返事を求められなかったけど、ここで聞いてくるわけだ。


 なったらなったで楽しいとは思うんだ。ゲイルもレジーナさんもいるし、リーフやヒルダ様、ホークさんとも会える。知り合った人がそちら側に多くて、しかも皆良い人達。楽しくならないわけがない。


 でも、どうしたって縛られる。それは一緒に行動したここ最近だけでも明らかだ。好きなように動けないのは結構ストレスだし、貴族との絡みは本当に面倒だった。


 繋がりが切れてしまうわけじゃない。端末でいつだって話せる。僕はそのくらいの関わりでちょうど良いと思ってる。


「お断りさせて下さい」


「ならん」


 えええ……。


「籍だけ置いておけ。お前の自由を奪おうなどと考えてはいない。放浪者相手では最初から不可能だろうしな。任務も強制ではない。報酬も出る。隊舎に部屋を用意してやる。そこでならば食うにも困らん。これで、何の不満がある?」


「え? えーと……案外その、待遇良いんですね」


 自由は奪われない? 任務も強制じゃないの? 住む場所も食事も提供されて、仕事すればお金だって稼げるし……。何か、待遇良過ぎて逆に怖い。


「ほ、本当に自由なんですか? 任務しなくても?」


「その場合は自力で稼ぐ事になるが、隊舎は使って良い。戦士ギルドに入り浸る従士もいたはずだ。無論緊急の任務は受けてもらう事になるがな。最近で言うならば、ロランシルトの事がそうだ。だがお前達放浪者の従士にそれ以上は求めん。どうだ、それでも断るのか?」


 つまり宿代はかからず自分の部屋を持てて、食事はそもそも要らないから考慮に入らないけど、義務はイベント事への参加。MMORPGをやってる以上はイベントなんて参加一択だし、デメリットに当たらないね。そして稼ぎたくなったら任務を受ければ良い。


 これ、相当良い話なんじゃ?


「わかりました、なります」


「うむ、そうしろ」


 領主様はにやりと笑って頷く。




 会食の後に契約書へのサインを求められ、内容を確認した後にさらさらと書いた。これで僕も、今日から従士だ。


 その日の夜はまた客室を借りれて、やって来たアルベルトさんから報奨の入った袋を受け取った。


 ずしっとした手応えは硬貨二枚らしき内容物のわりに重く、もらい過ぎの予感……。一礼して立ち去るアルベルトさんを見送って中を確かめると、黄金色の輝きが。金貨二枚でした。


 二万イル……! こんなにもらってどうしろと!?


 ……何か魔道具の素材でも買おうかな。







 翌日は週末。今週はどうしようかな。先週がっつりログインしたら、結構疲れたんだよね。シュテンから戦争、魔穴と連続したからだけども。


 二週連続でそんな事も起きないか。とりあえず今日は先にお風呂入ってからのログインだ。徹夜しそうな気がするんだよね。もしくは向こうで寝るとか。だから先に済まして、あまり推奨されてない長時間ログインをする前提でいようかなと。


 食事も水分も必要無くなった僕だから出来る荒業だ。


 一応swivelには設定時間での自動切断の機能があって、初期の設定では三時間になってる。この機能を切る事も可能だ。僕はもう切ってる。でもその時には警告が出て、何があっても責任は持てないって言われるんだ。これに同意しないと切れない。もちろん安全性は保証されてるけど、絶対なんて事はあり得ないからね。


 今のところ何かあったという話は聞いた事無い。swivelの全く関係しない事件が起きてどうこうと取り沙汰された事はあったけど、むしろ報道の方が悪意的だと散々に叩かれて謝罪する事態になってたっけ。普通に名誉毀損だからね。訴訟問題にまでは行かなかったけど、裏で示談が交わされただろう事は誰の目にも明白だった。


 世の中には人を轢いておいて車が悪いなんてのたまう輩がいるからね。せめて社会は常識的であって欲しい。




 ログインすると、今日は登録している全員が既にログインしていた。そして、何故か部屋にリーフとヒルダ様がいる。ここ、客室よね?


「……おはよ」


「来ましたわね」


「おはようございます?」


「……従士の隊舎に行った後、会わせたい人がいるから」


 ああ、そんな話してたっけ。


「その方の都合でわたくしは今回同行出来ませんわ。ですから、ラン。リーフ様をあなたが守りなさい」


「そうなんですか。わかりました」


 従士としての初仕事だね。報酬は発生しないけども。


 でも、ヒルダ様を連れて行けないなんてどんな人に会わされるんだろう? 貴族嫌いな人とか? 裏社会の人だったりして。あんまりそういうイメージ、リーフには無いか。


 楽しみなような、怖いような。領主様とはまた違った緊張感があるね。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  名前 ラン

  種族 ハーフエルフ

  性別 男性

  階級  三


  筋力  六

  敏捷 一四

  魔力 一八


 魔導器 属性剣

  魔術 魔力操作   魔力感覚


  技術 看破     軽業

     跳躍


  恩寵 旧神ナルラファリア


  ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一

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