表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/430

あんな大きな魚、見た事が無いそうです

 砦に捕虜とした三人を預けたら、ここには滞在せずに先を急いだ。砦の西には結構な広さの川が流れていて、大きな橋を渡って行く。馬車の中に戻った僕は、窓からそれを眺めて……目を輝かせてたらしい。


「ランは見ていて飽きませんわ」


「いっそうちの子に……ううん、何でもないわ」


 待てい。完全に子供扱いじゃないですか。


 川では魚が穫れるのか、小舟の姿もある。のんびり釣ってる姿は穏やかそのもので、流れる時間がゆったりに感じられ……お、かかったみたい。


 え? 何か、引きが強過ぎない? あ、転覆した!


「ちょ、ちょっと行ってきます!」


 何この川……。







 釣り人を助けて戻った僕はレジーナさんの大きなタオルに迎えられた。びしょ濡れの服はインベントリで解除、下着姿で包まれる。そのまま馬車に回収され、中で寄ってたかって拭かれた。酷い。


「ど、何処触ってんですか!? と言うか誰!?」


「今の、わたくしではありませんわよ?」


「嘘お」


「……ごめん、うっかり」


 あんたかい。何だか許せてしまう不思議。うっかりなら仕方ないね。


 ……女子高生に触られたって字面の犯罪臭すごい。


 リーフが混ざってるのは、何か嬉しいね。打ち解けてる感じがしてさ。でも何か一気に来てない? 嬉しいけど、僕何かしたっけ?




 馬車は動き出していて、橋を渡った先にある町へと入って行く。今日はここに泊まるそうだ。砦でも良かったらしいんだけど、戦闘や防衛する事に特化した砦のために客を泊めるような施設が設けられてないのだとか。その代わり町が栄えていて、貴族御用達な宿も幾つかある。そんなわけで泊まるなら町の宿を利用するのが、このアーシルトの昔からの流儀だそうな。


 お金を落として欲しいという思惑も、あるとか無いとか。そっちが主だったりして。


 ハルバル橋と名付けられたこの橋は結構長い。川幅は三百メートルあり、アーチを連続させる事で支えているこのハルバル橋は質実剛健という言葉のよく似合うがっしりした造り。


 観光に来たプレイヤーっぽい姿もちらほら見られる。そのそばをこの馬車で通ると驚かれるね。朱色の鷲の描かれた、セルティウス家の旗印を掲げてるから。


 川の名前は単純にアーシルト川。南にある山岳地帯から流れて来てる。アーシルトではこの水をあらゆる事に利用してるため、生命線とも言えるそうだ。飲用や料理へ使う水には濾過や煮沸処理を挟んでるから安全との話。


 そんな話をヒルダ様から聞いた。タオルで髪を拭かれながら。


「何でお世話されてるんでしょう?」


「それよりも、自然に胸までタオルを巻いてる方が私は気になったわ……」


 し、習慣だよ! これで習慣付いちゃったからだよ!


「……ヒルダは結構、世話好き」


「ですわね。リーフ様はあまりさせて下さらないので寂しいですわ」


「……自分で出来るし、手付きがやらしい」


 うん、それはわかる。こうして髪を拭かれてる今も、肩とか首筋とか撫でられるし。ぞわっとするよ、ぞわっと。


 僕も自分で出来るから、自分でやりたいな。……駄目? あらそう。




 僕からは釣り人さんから聞いた事を話す。


「あんな大きな魚、見た事が無いそうです」


 彼を水の中へと引っ張り込んだのは、かなり大きな魚だったらしい。僕が行った時にはもう魔力感覚の範囲からすら出ちゃっててわからなかったんだけど、人と同じかそれ以上のサイズだと言うからびっくりだ。


 彼はその大口を見たらしく、あんなのがいたんじゃのんびり釣りも出来ないと戻した小舟で慌てて帰った。


「危険であれば討伐しなければなりませんわ。けれど水の中というのは厄介ですわね」


「探すのも難儀しそうじゃねえか。衛兵に任せとけば良いだろ」


「従士と言えど何もかもに対処しなければならないわけではない。この町にはこの町を守る者達がいるのだ。我々が手を出せば不興を買う事になるだろう。ゲイルの意見通り、任せておくべきだ」


 調べる事には皆否定的だね。管轄ってものがあるわけだし、嫌がられるだけか。


 でも、このままにして行くのも何かな……。


「そんなランに、面白い物がありますわ」


 そう言うとヒルダ様は胸の谷間から……あんた何てところから出すんだ。ともかく、ペンダントを一つ引っ張り出した。


 あれ、これ見覚えあるよ?


「ふふ、見せた事はありましたわね。水中での呼吸を可能とする魔道具ですわ」


 あー。報奨を選ぶ時に見たんだ。あったあった。


「でもそれ、ロランシルト砦の物ですよね」


「あそこでは使う事が無いからと、買い取って来ましたの」


「ちなみにお幾らで?」


「腿の一撫でですわ」


 マグヌスさん……。私物じゃないよね? 良いのそれ? こちらの法律は、そこまで定められてないのかな。


「ぶははは! おっさんらしい話じゃねえか!」


「全くもう……」


 高いのか安いのかわかんないよ……。


 それはもういいや。これがあれば、確かに水の中を泳げる。探せるね。半径四十メートルの魔力感覚を使えば、そう難しくないかもしれない。


「幸い今は地馬の月の四週に入ったところ。暖かくなっていますし、寒くはないはずですわ。ランは従士ではないのですから、あくまでも善意の協力者。とやかく言われる事も無いでしょう。望むのなら、お貸ししますわ。日頃色々してもらってるお礼ですわね」


「地馬の月? 何ですそれ?」


 レジーナさんが説明してくれた、と言うか端末にあった。カレンダーの機能が入っていて、そこを見ればこちらの暦の事だとわかるようになってた。


 こちらの一年は四ヶ月で、年の頭から地馬、炎狼、風鳳、水龍と言うそうだ。それぞれが春夏秋冬に対応していて、一ヶ月は九週間。一週は十日なので、一年は三百六十日となる。


「あれ? ちょっと少ないんですね」


「そこはメンテナンスの日に割り当てられてるの。メンテナンスは丸一日で、その間二つの世界の繋がりは一旦途絶えるわ。通常ならこちらの時間が四倍の早さで流れているけれど、その時だけは私達の世界が早くなる。具体的には一日が過ぎるの」


 えーと、つまりメンテの間だけこちらの時間経過は無しって事か。


「前回は二月の二十九日、次回は五月の三十一日よ。基本的には三十一日の日にメンテナンスする予定ね。だから一年の後半は多いの。今年は閏年だから二月に入ってるけれど、去年は無かったわ」


「それはまた、変わってますね」


「細かいメンテはバックでやってるって噂だな。去年はそれで問題無く終わったぜ。臨時メンテも無しだ」


「何気にすごくないですか、それ?」


 オンラインゲームには臨時メンテなんて付き物なんだけどなあ。それにメンテだって、週に一回はゲームを数時間止めて行うものだ。


 運営が優秀なのか、それとも秘密があるからか。その一端を垣間見てるけど、仮にこちらが異世界だとしてもあちらとこちらを繋ぐ機器のメンテは必要だろうし、やっぱり優秀なのかな。


 まあ、凄まじいゲームだよね。


 ちなみに暦で使ってる地馬とか炎狼と言うのは、精霊なのだそうな。四精霊と呼ぶそうで、四神に仕えているらしい。


『ふむ、やはり伝承というものは事実と少々違ってしまうものだの』


 え、違うの?


『少々な。四神は元々人族であったわけだが、あやつらはこの四精霊に認められる事で力を得て、それをより鍛え上げ、研鑽を積み重ね、そうして神へと至ったのだ。四神と四精霊は友と言える間柄で、主従ではない』


 確かにそれだと違ってしまってるね。


 四精霊も生命と同じく姉妹神によって創られた存在だそうで、その役目は世界の管理の補助。世界を守り、存続させ、永く維持するための存在。だから姉妹神と四神が意見を違えた際には、四神側に属した。


 そのように創られたんだから、これはまあ仕方ないのかな。




 ホークさんが苦笑いしながら話を戻す。


「ラン。行くつもりなら、三日後の出発には間に合わせてくれ。その次となってしまうとさすがに遅れが大きい」


 プレイヤーの僕達に合わせたスケジュールだと、どうしても四日ごとの移動になるからね。こればっかりは受け入れるしかない。


 頷いて、ペンダントをお借りした。首から下げて……あ、服どうしようか。どっちもずぶ濡れにしちゃうのはちょっと、ねえ。下着だけで行く?




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  名前 ラン

  種族 ハーフエルフ

  性別 男性

  階級  三


  筋力  六

  敏捷 一四

  魔力 一八


 魔導器 属性剣

  魔術 魔力操作   魔力感覚


  技術 看破     軽業

     跳躍


  恩寵 旧神ナルラファリア


  ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ