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そんなの絶対許せない

「……わたしは戦わないの?」


「リーフ様は本来、守られる立場のお方ですのよ。そして従士は守る事も勤め。彼らの仕事を奪ってはいけませんわ」


「……うん」


 そんな会話があったとか無かったとか。リーフも大概好戦的よね……。


 さて、一方守る事もお仕事の従士三人は次々賊を斬り倒し、撃ち抜いていた。ゲイルがツヴァイハンダーを一振りすれば一人や二人は薙ぎ払われて致命傷を負い、ホークさんのロングソードは目にも留まらない速さで斬り裂き貫き通す。そしてレジーナさんの撃った矢は魔力操作の補助を受けて潜む賊へと吸い込まれるように命中する。


 始まってしまっては葛藤する暇も無かった。伏兵は攻撃が自分達にも及ぶとわかった瞬間に射撃を始めて、その対処にはやっぱり仕留めてしまうのが一番早い。


 守るためと言い聞かせて、矢を誘導して刀身も放った。


『命は確かに失われよう。しかし魔物に殺されるわけではない。お主らに殺されるのなら魂はまた巡る。今の悪しき生命を続けるよりは、より良い人生となる可能性のある次へと送ってやるのも、また情けとは思えぬか?』


 何て神様らしい視点! そう割り切れたら苦労しないよ!?


 でも、理屈はわかるよ。賊なんて、誰しもわざわざなろうとするものじゃない。そりゃ一部ろくでもないのがいるのは確かだけど、ほとんどはやむにやまれない事情があってなるんだろうと思うよ。そんな人生は、良いものとは言えない。


 まあ、うじうじ考えていても仕方ない事もわかってるんだ。やるしかないし、やらないとやられる。そしてやられるのは、僕だけじゃないんだ。


 特にホークさんとヒルダ様はこちらの人。死んだら終わりだ。ヒルダ様は狙われてるから殺されないけど、捕まったらまず間違い無く生き地獄。そんなの絶対許せない。


『結論は出ておる。迷う前に手を動かし、守るべきものを守れ。頭を抱えるのは後でも出来るのだ。考えるならばヒルダの末路を思い描け。それはお主にとって受け入れられぬ未来であろう。そのような事を為そうとする奴らなどに遠慮など要らぬ』


 思い描けって言われると、そりゃまああんな事やこんな事が……うん。すごいむかついた。自分で考えておきながら、なんて残虐な絵面。


『おおう、さすがにこれは……。あちらでは、このような事が? 恐ろしいのう……』


 フィクションですから! もっとも、過去に無かった事なのかと聞かれても、即座に頷けないんだけどさ。


 現実は、フィクションよりも時に残酷だから……。


 さ、気を取り直してしっかり援護しよっか!




 僕が注意を促した連中は、やっぱり魔術を使った。南ではゲイルが火の球や土の投げ槍に襲われ、北ではホークさんが水の牢に捕らわれて風の矢に貫かれようとしている。


「はっ! 面白くなって来やがった!」


「この程度ではな……」


 余裕たっぷりですかあんたら。


 ゲイルは大剣の一振りで魔術を一掃、さらに大きく踏み込んで一振り薙ぎ払う。


 一度目では風の壁が生じていた。僕の盾程の強度は無いようで、敵の魔術を受け止めると同時に砕けてしまう。けれど規模は段違い。一斉に放たれた魔術の全てから守れる程に大きい。


 そして二度目。払われた大剣から溢れ出た風は、酷く薄かった。波のような広く扇状の範囲に拡散する魔術は、まるで刃のように鋭い。それが瞬きの時間で草原を駆け、そこに立っていた敵の身体をすり抜けて行く。


 断末魔の悲鳴が響き渡った。ずるりと上半身が滑り、ぼとりと落ちる。赤い断面を白日にさらし、恐怖に彩られた表情がそのまま彼らの死に顔となった。


 あの、盛大に赤いものが……。R十五だよね? これ大丈夫だっけ!?


 一方でホークさんは、迫り来る矢に対して馬を作り出して壁とした。言葉の後に水の中へ閉ざされた彼は馬の手綱を握り、強く引かせる事で脱出する。そしてそのまま跨がり、戦場を駆け回って長剣を振るった。


 ゲイルのような派手さは無い。けれど馬の扱いや剣の技の冴え、向けられる攻撃への対処など、あらゆる技術が高レベル。


 そして魔術の馬には当然魔力が込められていた。その身体能力は並みの馬なんて足元にも及ばない。打ち下ろされる前足は踏み潰し、蹴り飛ばす後ろ足は粉砕し、体当たりなどすれば吹き飛んで即死。人馬一体となってどちらでも敵を容易く葬った。


 二人に比べれば、僕やレジーナさんは地味なものだ。クロスボウから放たれる矢や剣から撃ち出される刃が確実に敵の急所を捉えて仕留めるくらいなんだから。


「上方六十度で!」


「上方……六十度!?」


 と驚きつつ矢を撃つレジーナさん。矢はゴルフのフェードやドローのような軌道を描いて木を避け命中。そんな感じで、ちょいちょい角度を変えてもらった。逆に草原へ撃つ刀身は適当だ。こっちは障害物が無いからね。


 馬車の上でわざと目立つように立ち上がり、刀身を放って見せて目を引き付ける。それで矢の多くは僕に向かう。その目的もあるから、森にも撃ってる。これは当てる目的じゃないから木に遮られても問題無し。油断してるようなら当ててあげたかったけど、そんな奴はいなかった。


 そうして僕を放っておく事への危機感を煽り、ゲイルやホークさんに矢が向かないようにした。


 結局、五分も戦っただろうか。敵は全滅し、辛うじてホークさんが生かしていた賊らしからぬ三人をゲイルがインベントリから出したロープで縛って目隠しまでする。それからホークさんとヒルダ様による尋問……バイオレンスな手段まで取り入れた高度な尋問が行われて、オーブルの名前が引き出された。


「まあ、最初からわかっていた事ですわね」


「証人となれば刑の軽減も認められる。大人しく協力する事だ。貴様らの家族のためにもな」


 そうまで言われて反抗する気力は既に無く、彼らは静かに従うのだった。


 それを余所にゲイルは死体の山を漁っていた。身元のわかる物を探してるらしい。よくそんな事出来るね……。


「俺達の感覚なら、普通は持ってねえって思うもんだがな……あったあった」


「あるんですか!?」


 つまみ上げるようにした指先には記章のような物がある。ゲイルの探し物はそれで、彼らの身元を証明する物なんだろう。


 本当に持っていた。こんな物を持ったままじゃ、家族だって巻き添えになってしまうのに。あまりにも愚かしく思えたけど、そこには彼らなりの理由があった。


「所属する団体に誇りがあったり自分の力に絶対の自信を持ってるような連中ってのは、自己の証明になる物を身体から離したがらねえんだよ。まあ、貴族に多いな。特に今回なんざ、これだけの戦力差だ。負ける可能性なんて毛先程も頭に無かったろうぜ」


 貴族は家や血を重んずるって言うもんね。それが誇りで拠り所だから、片時も手放したくないんだ。今回はその執着が仇になるわけか。


 この責任が問われるのは家族や所属する団体だ。何にしても、馬鹿な事をしたね……。


 領主様のご令嬢であるリーフの馬車を襲って、一族郎党が無事なわけない。財産やら何やらの没収だけで済めば良いんだけど。


「そんな顔すんな。お前が気にする事じゃねえだろ」


「それはそうですけど」


「ランちゃんは優しいのね」


 何か、すごい自然に頭撫でられてる……。


 気にしても仕方ない事は仕方ない。領主様が良いようにしてくれる事を願ってよう。そんな事しか出来ないもの。




 それからはバリケードの撤去作業。と言っても繋いだロープを馬に引かせただけだから大した事は無い。馬力がすごいからあっという間だった。


 やっぱり馬って便利だなあ。


「さ、行きますわよ。捕虜は馬に乗せて縛り付けなさい。ランは念のため警戒をお願いしますわ。魔術を使おうとしたら、遠慮無くその剣で斬り捨てなさい」


 うわお。捕虜の三人がびくんとした。


「はい。……何もしなければ斬りませんから、大丈夫ですよ」


 めっちゃ首を縦に振ってる。今は猿ぐつわも追加されてるから喋れないもんね。馬に縛り付けられ手は後ろ、目隠し猿ぐつわで上半身も武装解除のためにひん剥かれてる。


 この状態で、街道の先にある砦まで向かうらしい。何事かとは……思われないのか。賊かと思われるだけだね。


 僕は御者台にお邪魔して三人の見張り。手に柄を持って、いつでも攻撃可能だ。


 ……そんな事態にはしないでね?




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  名前 ラン

  種族 ハーフエルフ

  性別 男性

  階級  三


  筋力  六

  敏捷 一四

  魔力 一八


 魔導器 属性剣

  魔術 魔力操作   魔力感覚


  技術 看破     軽業

     跳躍


  恩寵 旧神ナルラファリア


  ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一

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