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ランちゃんって呼んでも良いかしら?

「それでは、後はお願いしますわね」


「お任せ下され。ここは元々私の管轄。問題を全て解決していただいたのです。これ以上は頼れませんからな」


 マグヌス様や兵士達に見送られ、僕達の乗った馬車はロランシルト砦を後にした。馬車内にはリーフ、ヒルダ様、レジーナさんに僕。御者台にゲイルとホークさんという六人でトリシア目指して出発だ。


 ……男一人で中に入れられても困るって。


 女性という人々は、喋り始めると止まらないもので。主にヒルダ様とレジーナさんが話し、リーフは相槌を打ちながら時々混ざる。僕は愛想笑いで聞き役だ。何か聞かれれば話すけど、混ざって行こうとは到底思えなかった。話の展開早過ぎなんだよなあ。


 幸い前の御者台と小窓で繋がってて、そこから前の二人と話す事が出来た。ホークさんはずっと忙しかったようでほとんどお話出来てなかったから嬉しい。


 ホークさんは僕の後を追ってというわけじゃないけど、戦争の翌朝魔穴を見に行っていたそうだ。綺麗さっぱり無くなっていて、しばらく探し回ってしまったと言うから申し訳なかったね。報告を先にしておけば良かった。


 だから、魔穴が無くなった事自体は僕の報告前に判明してたんだ。


 でも誰がやったのかは全くわからなかった。候補に僕の名前はあったそうだけど、人の手では不可能だと思われていたから確信には至らなかった。それが、僕の持ち帰った動画で確定した。


 ホークさんからも感謝されて、照れ臭くて仕方なかった。




 魔術の馬は休まず馬車を引き続ける。今日は二つ隣の町で一旦泊まるそうだ。そこは大きな城郭都市で、治める貴族のところに顔を出しておく必要があるのだとか。


 ロランシルトから西へ街道を走る事六時間と少し。見えて来た都市の名はマリシエントと言った。高い城壁に囲まれた、東側に大きな城のような砦を持つ都市だ。


 ヒルダ様が少し嫌そうな顔で、その城壁と砦を眺めている。不思議そうに見ると、くすりと笑顔になった。


「マリシエントを治めるのはシルエレート家。子爵位を持つ、わたくしの家ですわ」


 あー、実家なのか。あまり帰りたくない感じ? お家事情は貴族だと色々あるだろうからなあ。


 ヒルダ様のお年だと、やっぱり他家との結婚の話とか? 本人にその気が無いなら、嫌な思いするだけだよね。でも貴族だとそんなの二の次だろうし。


 あれでも、前に結婚はしないって……いや違った。子供を作るつもりは無い、だった。


 それじゃ結婚自体は認めてる? 相手的にそれはどうなのよ。まあ、お父様には宣言したって言うし、それ込みで納得出来る相手との縁談しか持って来ないか。


 何にしても、僕の出る幕は無いからね。


『ほう、良いのか?』


 無いからね!







 馬車は東門を通り抜け、砦の中へ入った。砦……と言うかこれは城だね? 思わず窓から見上げて呆ける。すんごい。幾つかある尖塔は立派、聳える城館も堂々とした構え、城壁は厚かったし、門も頑強そうだった。兵士達は規律正しく、皆屈強に見える。


 ここがマリシエントの防衛と政治の要なんだね。


「気に入ったようですわね」


「圧倒されました……」


「ランさん、可愛い……。もう、ランちゃんって呼んでも良いかしら?」


「え!? まあ、構いませんけど……」


「……ランちゃん」


 リーフもそう呼ぶの!? いや、良いけどさ!


 ……ああでも、何か響きが良いかも。


「満更でもなさそうですわね」


「嬉しそうに見えますよね」


 うぐっ……。何故ばれた。


「……可愛い」


 寄ってたかってからかって来る、酷い。




 馬車は城館前に一旦停まる。そこで全員が降りて、兵士が引き継いで厩舎の方へと引いて行った。あれ、魔術の馬だよね? 大丈夫なの? 大丈夫だから連れて行ったんだとは思うけどさ。


 僕は服をヒルダ様から受け取ったシルクのワンピースに変えている。もちろん靴も白い物だ。パンプスっぽい。


「いつの間にそんな服手に入れてたんだよ? また女装だが」


「ヒルダ様からいただきました。似合います?」


「似合って良いのかよ、お前は」


「似合わないよりは似合う方が良いと思いますけど?」


「あー、何だこのすれ違いっぷりは」


 あれ、違った?


 ……また脳内で爆笑された。解せん。


「ラン。少し頼まれて下さるかしら」


「はい、どうぞ」


 ヒルダ様が何やら改まって、小声で話しかけて来た。余程の事でない限り聞くよー。


「ここにいる間だけで構いません。わたくしの従者になってもらいたいのですけれど」


「それくらいなら大丈夫ですよ。承りました」


「感謝しますわ」


 微笑んだ顔には安堵が見えた。


 何か、色々ありそうね。しっかりお守り致しましょう。


「……ラン。わたしからも、ありがとう。……ヒルダをお願い」


 頭を撫で撫でとされた。何この複雑な気持ち……。


 リーフには従士としてゲイル達三人が付き従う。一方ヒルダ様は僕だけだ。


 リーフは伯爵家の名を持ってる。従士は伯爵家との主従関係だから、当然三人ともあちらに従う形なんだね。でもヒルダ様は違う。この一行に従者は一人もいなかったんだ。だからって僕を従者とするのも奇妙な話ではある。実家に帰って来たんだから、一人や二人は付き添いがいるもんじゃないのかな?


 そこも複雑なお家事情って奴? 難儀だね。


 僕達は召使いらしき女性の先導で謁見の間らしき部屋に通された。奥に立派な椅子があって、そこに向けて列が幾つか出来ている。


 椅子には誰も座ってなくて、その少し手前の離れた位置に立派な体格の男性が一人立って、待っていた。


「お待ちしておりましたぞ、リーフ様。さあ、こちらへどうぞ」


 なるほど、椅子はリーフのために空けてたんだ。彼女は伯爵令嬢。この場にいる誰よりも上の地位の扱いなんだ。その彼女を座って迎えようものなら、伯爵家に対しての不敬となるわけだね。面倒臭っ。


 リーフは無表情のまま真っ直ぐ進み、促されるまま椅子にちょこんと座る。可愛い。


 ヒルダ様はリーフのすぐ脇に立つ。そしてさっと手で僕の位置を示してくれた。横の方に少し離れたところだ。そちらに行って、静かに佇む。


 従士三人はヒルダ様の反対側にホークさん、レジーナさん、ゲイルの順で並んだ。リーフを中心に弓なりの形。


 ……僕、こんなところにいて良いのかな。何の立場も無い、言葉通りの放浪者だけど。




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  名前 ラン

  種族 ハーフエルフ

  性別 男性

  階級  三


  筋力  六

  敏捷 一四

  魔力 一八


 魔導器 属性剣

  魔術 魔力操作   魔力感覚


  技術 看破     軽業

     跳躍


  恩寵 旧神ナルラファリア


  ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一

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