魔穴を閉じた者など、過去に一人もいませんわ
魔道具の作成に必要な物が揃った。力の込もった素材、属性の合う素材、魔力の通りの良い素材で作られた道具の三つだ。それぞれを主素材、副素材、本体とファリアは呼んでる。
場所については僕が魔力を出して留める事でエーテル濃度を高めれば、条件を満たせるという話だった。だから密室であれば何処でも構わない。密室である理由はファリアが外に出られないから。外から見られないようにする必要があるからだね。
砦で一室貸してもらってやろうかとも思ったけど、それはちょっと厚かましいかなと考えてやめた。急ぐ理由は無いし、また今度にしよう。
ヒルダ様とロビーに戻ったら、ゲイルとレジーナさんが来てた。
「よう! 動画見たぜ。何だよありゃ?」
「ヒルダ様、戻りました。報告してくれたのね、ラン。ありがとう」
「どう致しまして。何って言われても、よくわかんないんですよ」
「二人ももう見たのですわね? 詳細はともかく、ランが魔穴を消し去った事は事実ですわ。閣下にランとのお目通りを願います。そのつもりでいなさい」
「あー? 会わせんのかよ?」
「当然ですわ。ランはこのランドバロウにとっての偉業を成し遂げたのですもの。魔穴を閉じた者など、過去に一人もいませんわ」
……そっか。他にもあるんだよね。全部開いたまま、それっ放しなんだ。他も塞げ、なんて事になりそうじゃないの。いやまあ、良いんだけどさ。
報酬に期待しちゃおうかな!
四人でリーフを待つがてらに色々話をしていると、マグヌス様がやって来た。
「やあやあ、お揃いですな。っと、リーフ様はいらっしゃらないようで。残念」
「おう、おっさん。……少し痩せたか?」
「先日の戦争以来忙しくてねえ。堪らないよ全く。それはそうと、魔穴が消えたと聞いたんだが」
「このランのおかげですわ! 魔穴の奥底へ降りて、見事に消し去ってくれましたわ!」
「何と! 素晴らしい! そのような事が可能でしたか! あれは底など無いというのが通説ではありませんでしたかな!?」
「一時間くらい降りましたから、深さは七キロか八キロ……キロメートルって?」
「通じるぜ」
「七キロ! 何という深さ! それを君は一人で挑んだというのか!? 凄まじい胆力だな! 恐れ入るばかりだ!」
テンション高っ。
「カットしてあったけど、そんなに深かったの?」
「歩く速度より速いくらいで降りて一時間だったので、それくらいかなと」
「ああ、それなら大体合ってるだろ。深えな」
「探索もカットしてたわよね?」
「そちらも同じく一時間くらいですね。歩くのではなく、さすがに走りましたけど」
「それでようやくあれに着くのかよ」
「ランちゃんって、何キロで走るの?」
「風景の流れるスピードが飛ばして走る車から見た時に近いので、多分時速四十から五十キロだと思います」
「……それくらいの広さは最低でもあるわけね。無茶苦茶だわ……」
物凄くいい加減な目測。測れないって。
時速も通じるようで、ヒルダ様とマグヌス様は色々計算しながら聞いてる。
「ホークが馬で魔穴まで、駈歩で三時間でしたわよね?」
「ですな。距離はおよそ五十から六十キロと聞きましたぞ」
「時速としては二十キロ弱と考えてよろしいですわね」
「何という速さ。まさか馬の駈歩より速いとは」
「リーフ様に匹敵しますわ」
リーフもそれくらいで走るんだ、さすが。彼女はどういう魔術で走るのかな?
「襲歩って、何キロだったよ?」
「七十弱ね」
「一応お前の方が速いな」
「速さだけで言うなら、魔術馬はもっと出せるわ。騎手が持たないけど」
「そりゃそうだ」
魔術の馬は速いんだね。どのくらいか聞いてみると、馬単独の速度は何とも言えないみたい。ただ、プレイヤーの高速馬車が時速五十キロ以上で走るらしい。……それ馬車のスピード? 中の人達は大丈夫なんだよね? だから存在してるんだろうけどさ。
それからしばらくして、リーフが姿を表した。でも、何処となく様子が変な気がする。
「……遅くなった」
「よう、お疲れ。時間なんか気にすんな」
「そうですよ。さあ、こちらへどうぞ」
レジーナさんが席を一旦立って、ソファの中央にリーフを座らせる。少し離れたところに待機していた侍女さんが素早くお茶を用意し、彼女の前にそっと置いた。それを待ってから、レジーナさんは着席する。連携プレー?
一口飲むと少し落ち着いたのか、無表情な顔に少し普段の色が戻った。
……何かあったとは思うんだけど、聞かない方が良いよね。あちらの事だろうし。
「……ラン、約束通り来てくれてありがとう」
「リーフ様との約束です。必ず守りますよ」
「良い心がけですわ! ところで、約束をされてたんですの?」
「……うん。ランに会って欲しい人がいる」
「領主様ですか?」
「……父さんに会うの?」
あら、違った。じゃあ、別にいるんだ。誰?
「リーフ様。ランは魔穴を消し去ったのです!」
「……魔穴を? え、すごい」
リーフに言われると、何かこそばゆく感じちゃうのは何でだろ。ストレートに来たからかな。それともとんでもなく強い人に認められた気がするから?
何にしても、多分嬉しいんだ。でも、変なの。他の人に褒められたって嬉しいのに。
「その功績を閣下に報告するのですわ。その際のお目通りを願う予定ですの」
「……きっと褒めてくれる」
正直なところ、僕はそんなに会いたいと思わないんだよ? でもヒルダ様の立場のためだもの。我慢だ。
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名前 ラン
種族 ハーフエルフ
性別 男性
階級 三
筋力 六
敏捷 一四
魔力 一八
魔導器 属性剣
魔術 魔力操作 魔力感覚
技術 看破 軽業
跳躍
恩寵 旧神ナルラファリア
ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一
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