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……わかった、これシミュレーションゲームだ

 魔力の流れを追って、剣の光頼りに暗闇を進む。なるべくは浮いて、時々高度を上げるために踏ませてもらう。その際はあまり痛くならないよう気をつけて跳んだ。基本的に魔力操作で上への力をかけっ放しだから、そんなに負担は無いはず。


 底を満たす人達は全身が余すところ無く黒一色で、見た目はやっぱり怖い。でもとにかく覇気が無くて、疲れ切ってる感じ。


 眺めてみると老若男女問わずに折り重なっていて、しかも魔力感覚によればずっと下までこの状態のようだ。あまりの酷い扱いに目眩がする。何とかしてあげたいとは思うものの、僕に出来る事が無い。


 そう言えばと思い付いて端末の地図から現在地を見ると、表示されなかった。大陸地図を開いても僕を示す光点が何処にも見当たらない。


 どういう事だろ? 混沌の領域は地図のサポート外?それならそれで仕方ないけども。


 そうしてまた一時間程が過ぎた。







 魔力の流れは、光を照り返さない黒の球体に流れ込んでいた。強力な魔力を有する球体は魔力を吸い上げているように見え、また同時に放ってもいた。空中に浮いて佇むそれを見上げ、どうしたものかと考える。


 そもそもこれは何なんだろ? 放つ魔力の行き先は全くわからない。放ってるんだけど何処かへ消えてしまってるんだ。周り一帯から集め、周り一帯へ放ち、でもその魔力は何処かに消える。そんな不可思議な現象が目の前で起きてる。何が何やら。


 とりあえずこの球体をどうにか出来れば、きっと苦しいのからは解放されるよね。まずはそれだけでも目指そう。


 普通に攻撃して大丈夫かな? 一回斬ってみようか?


『ふうむ。我からは何とも言えんな。このような物は初めて見るのだ。混沌の領域自体入るのが初めてでのう。四神は我ら姉妹より幾分馴染みがあったようだが』


 人だった時に通って、魔物を狩ってたんだったりして。


『あり得る話だ。そうして強くもなったのであろうからな』


 まあいいや。やるだけやってみようか。


 足下の人に謝っておいて思い切り跳ばせてもらい、球体の近くまで行く。そしてその勢いを乗せて剣を振りかぶり、斬り付けた。すると刀身が球体の中程まで入り込み、そこで止まる。


 何か変だ。抜けないし、びくともしない。剣から瑠璃色の光が球体に流れるようにして色を移し始めてる。何これ。


『ラン、魔力が減っているぞ!』


 げ、もしかして僕の魔力を吸い取ってる!? 魔力感覚で調べてみると、どうもただ吸い取ってるわけではなさそう。何と言うか、せめぎ合ってる?


 これ、放っとくと飲み込まれて駆逐されそうだ。魔力操作で動かせないかな? なんて試してみると、行けそうだった。ならこっちからも攻撃だ。逆に駆逐してやれ。


 ……わかった、これシミュレーションゲームだ。戦争物のシミュレーションゲームに似てる。でも相手が慣れてない感じ? レベルの低いAIと戦ってるようで、戦力は圧倒的に負けてるんだけど戦術の面で翻弄出来る。ただ前に進むだけのユニットなんて、カモでしかないよ。個別に包囲してしまえば楽勝だ。


 おっと、倒すとこっちの戦力が増えるじゃない。勝てば勝つ程楽になるぞ。よーし、そういう仕組みならさくさく行くよー。




 というわけで、完勝。シミュレーションゲームもかじってて良かったあ。球体は完全に僕の色、瑠璃色に染まった。輝いてて滅茶苦茶綺麗。


 ……と思ったら、球体から光が溢れて拡散して行く。暗闇だったこの魔穴の底が淡い瑠璃色に変わり始め、暗い色合いが明るく、さらに鮮やかな色彩へとその色を強くした。


 何これ、何が起きてるの?


 底を埋め尽くしていた人達の黒い身体が光を帯びて、輝くような瑠璃色を纏って浮き上がる。その光る身体はやがて薄くなって、次々に消えた。けれど彼らの表情はそれまでと打って変わって明るく、喜びに満ちたような様子だ。


 見下ろした先からは誰もいなくなって、何も無くなった。重力を感じなくなって、浮いたままで人々の消えて行く様を見続けた。


 何を見せられてるんだろう? まるで昇天しているような彼らは手を振っていたり、頭を下げていたりと僕に挨拶しているようだ。わけがわからないまま呆けて眺める。


 やがて何もかもが鮮烈な瑠璃色に包まれて、目も開けていられない程明るくなって、僕は目を瞑った。魔力感覚で周辺の把握には努めるけど、膨大な魔力の中にあってそれも難しい。


 その中で僕の剣だけが、魔導器だけが強く存在を主張している。球体は刀身に同化して一部となり、刀身は強烈な魔力を宿し、周りから全てを集め束ねて恐ろしく長い刀身を形成する。


 次の瞬間、それは天高くに射出された。青空の彼方、光り輝くソールに向かって真っ直ぐ飛んで行く。あっという間に飛び去ってしまって、何が何やら、全く理解出来ない。


 ソールの中心へ向かった刀身は、既に目で確認出来る距離に無い。長く巨大な刀身の姿は影も形も無くなっている。それをただ見上げていた僕は、首の疲れを感じて視線をようやく落とした。


 そして気付く。いつの間にか荒れ地の上に立っていた。周りには何も無く、一面の枯れた大地の光景が広がる。


 端末を見れば現在地は魔穴のあった場所で、およそその中央付近。けれど見た通りに穴は無くなってしまった。何もかもが無かった事のように、跡形も無く消えていた。


 まるで狐につままれたようで、しばし呆然と立ち尽くす。


 本当に、何だったんだ……?


『ラン、喜べ。お主は魂を救ったのだ』


 えーと、本当に?


『お主の魔導器の力を借りて魂達はソールへ、四神の下へ向かったのだ。後はあやつらが転生させるであろう。……黒い球体は核とでも呼ぶべき物であったようだな。あれをお主がお主のものとし、混沌から領域を切り離した。核は主をお主へと変え、お主が望む通りに魂達を来世へ運んだ。つまり、お主は混沌より魂を奪い返したのだ。お主ならばこの世界を、魂を真に救い、長らえさせられる。……まさに、救世主よ』


 えええ……。


『さて、あまりのんびりしておると面倒な事になるやもしれんぞ。今は四神も慌てていようが、お主を探しにこちらへ降りて来る可能性がある。そうなれば……』


「すぐに帰りましょう!」


 端末で方角を確認。直ぐ様南へと走った。


『くくく……。お主ならば、そうするであろうと思うておったぞ』


 面倒事なんて冗談じゃないよ! 成り行きで何とか助けられたけど、それを強いられるなんて勘弁!


 急いで逃げるよ!







 大急ぎでロランシルトへ戻った僕は宿を当たったけど、何処も開いてなくて結局その辺でログアウト。悲しい。


 人通りの無いところを選んで隠れたから大丈夫だと思う。


 さあ、さっさとお風呂入って寝ないとね。色々あったから疲れちゃったよ。




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  名前 ラン

  種族 ハーフエルフ

  性別 男性

  階級  三


  筋力  六

  敏捷 一四

  魔力 一八


 魔導器 属性剣

  魔術 魔力操作   魔力感覚


  技術 看破     軽業

     跳躍


  恩寵 旧神ナルラファリア


  ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一

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