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すげえAIだよな。本物みてえだぜ

「……恥ずかしかったし、別に良い」


 聞いてなかったわけじゃないんだけど、ゲイルと二人で平謝りした。


 その後リーフとヒルダ様は馬を引く二人を伴って各部隊を回り、最終的な打ち合わせを行うために離れた。四人の背中を見送ると、ゲイルは魔導器二種を出現させて戦支度を整える。


 大剣はツヴァイハンダーと呼ばれる形の、刀身下部に手で掴むリカッソと言う部位がある両手剣だった。長大な剣は僕の身長より二十センチ程も長く、預かってみるととても扱えるとは思えない重量だった。


 もう一つの魔導器である重鎧はフルプレートと呼ばれる類いの板金鎧。飛び道具の類いも逸らせるような傾斜の多い作りになっている。頭部は顎当てとでも呼ぶのか口元から頬から首までも守るパーツと上からかぶる兜で守る。


 その兜を一旦脱ぎ、広く脇まで包む肩当てに背負うような持ち方で引っかけた。


「いよいよだな。待ちくたびれたぜ」


「でもまだ、もう少しありますよ?」


「つっても身構えておかねえわけにもな」


「まあ、そうなんですけど」


 立ちっ放しも辛いんで、しゃがみ込んで待つ。地平の彼方にはまだ魔物の姿は無く、眺めてもエーテルの先に大地は霞んで消えてる。


 ソールは少しずつ色を変え始めているところ。魔物達との接触は夕方、十八時前後の予定だ。それまでまだ小一時間はある。


 兵士達は気分を昂らせるために声をかけ合ったり、戦の歌を口ずさんだりしてる。音を立て、足を踏み鳴らして戦意を高めている。多分そうしてないと、いられないんだ。戦いの恐怖は誰しも抱くもので、それを打ち消したり誤魔化したりするにはどうしても必要な行為なんだ。


「すげえAIだよな。本物みてえだぜ」


 本物、かもしれないよ? 少なくとも、ファリアは本物だもの。彼らだって本物の可能性が高い。


 そんな事、話せないけどさ。


「……ですね」


「映画でしか見た事が無えようなシーンがよ、あっちこっちで繰り広げられてやがる。俺はこういうのをこの目で見て参加出来るってだけで、このASを始めて良かったと思ってるぜ」


 気持ちはよくわかる。僕だってこんな技術が開発されて、それが一般に普及して、こうして体験出来るようになるなんて思いもしなかった。こんなの、早くたってまだ十年も二十年も先の話だと思ってた。それが今だよ。この年で体験出来てる。


 正直それだけでもあり得ない事なんだけどさ。


 まさかファリアと出会う事になるなんてね。


『驚きの連続だな』


 本当にその通りで。


「俺はよ。お前にゲームって物を教えられたろ? 今はすげえ感謝してるぜ。それが無けりゃ、幾らswivelだのASだのがとんでもねえゲームだって聞いたところで興味も持たなかっただろうからよ」


「そう言えばそうでしたね」


「何つーか、行き着くところまで行き着いたよな」


 種類は多いけど、ゲームって究極的には現実で体験出来ない事が体験出来るものだ。古いものだと卓球を模したものだったり、簡素なシューティングゲームだったりしたと聞いた事がある。僕が気に入って遊んでた地下迷宮に潜るものなんて、まさにその最たる例だと思う。


 これまで幾つも作り上げられて来たもの、僕達が遊んで来たものの行き着く先に、このゲームがあった。swivelとASが。


 そんな風に思ってしまうのも、僕には充分理解出来る。アルスと言う世界があって、そこに存在するメリアー大陸に姿形がそのままのキャラクターで降り立ち、五感の全てを伴いながら自由に過ごせる。とんでもない事だ。


 二人で周りを眺める。荒れ地が広がってるだけだけど、それはゲーム内の光景だ。実際にここへ訪れている感覚で、この世界を体験してる。


「オープンベータ初日に受けた衝撃は、あんまりにも強過ぎてな……。ちっとも色褪せねえぜ」


 僕の場合は初日からいきなり色々あり過ぎて、衝撃受けてる暇も無かったなあ。ゴーレムは大迫力で迫るからいっぱいいっぱいだったし、ファリアがあちらに付いて来れたりしたから面食らったし。それから壁壊してブーレイの惨劇があって、ようやく外に出られたんだ。


 あ、でも外に出た時はちょっと感動したかな。


『惨劇とはのう。他人事のように言いおって』


 張本人ですけど何か?


「ま、お前はお前で色々あったみてーだが、概ね楽しんでんだろ?」


「そりゃもちろんですよ。ゲームだと思えないくらいの世界ですからね」


「そうなんだよな。マジでゲームだって事、時々忘れんだよ。そん時には、ちっと背筋が寒くなるんだが。考えられねえよなあ。いきなり進歩し過ぎだろ」


 常々思う事だよね。swivelってどうなってんのかな。昨今のゲーム機としてはやや高めの四万円弱というお値段だけど、正直安い。高機能なのにこの値段は大丈夫なのかと不安になる。でも件の会社、大幅黒字だって話なんだよね。それがまた怖い。


 でも今のところswivelで問題が起きたって報道も無くって順調そのもの。色々新作ゲームは出てるけど、ASだけ強過ぎる事が問題と言えば問題かな。他のはまだこの域に達して来てないんだ。前時代的と言うか。僕の感覚では逆だけど。ASが時代の先を行き過ぎてる。


 まあただ、ASにも弱点はあるからね。容姿や性別を変えられないから、そこで差別化を図ったタイトルは出てる。自由なキャラクター作成を売りにしてて、そこはまあかつて無い出来だって好評みたい。


 でもゲームを始めると、やっぱりASが抜きん出てるって感じちゃうみたいで。一度触れるとこれが基準になっちゃうってところも考えものかもね。仕方ない事だとは思うけどさ。


「ベータテストまで含めたこの一年半は、俺はこれしかやってねえぜ。コスパがすげえ趣味で、嫁さん喜んじまってな」


「良い事じゃないですか」


「まあな。俺も小遣いが貯まる一方だしよ」


 ゲイルはお小遣い制か。お財布は奥さんが握ってるのね。お金の使い方は荒い方じゃなかったと思ったけど。でも細かい事は面倒臭がってたっけ。


 ゲーム機本体は四万円だけど、その後はASだけなら年間一万円だからね。二年目にはいって計六万。平均したら一年三万円の趣味だ。一ヶ月三千円にも届かない。そりゃ安いよ。来年になったらもっと減るね。


 これは確かにコスパがすごい。奥さんも大喜びするよそりゃ。


 そう言えばswivelって、電池持ちもすごいんだよ。一時間で残量ゼロから完了まで充電出来るのに、十時間もAS出来るって話だ。省電力過ぎるにも程がある。大きくて重い電池使ってるわけでもないから本体軽いし、本当どうなってんのか。


 詳しくは追ってないから知らないけど、何処かの誰かが分解して調べたりしてると思うんだよね。その内類似品が出回ったりするのかな。


「あー、つい現実的な話になっちまった。そうじゃなくてだな。ここまでAIが自然だとよ、本当に生きてるみてえでお前が死なせたくねえって考えちまうのもわかるっつーか。まあだからよ……俺達で何とかしてやろうぜって話だ」


 兵士達を見るともなく見るようにしながら、ゲイルはそんな言葉を口にした。そして少し照れたように頬を掻く。


 昔から斜に構えた風でいて理不尽な事は見過ごせない性質だった彼だ。その気持ちがこの世界の人達に向くのも当然の成り行きだとは思った。でも、本当にそうなった事がこの上無く嬉しかった。ゲイルにとって彼らは、ただのNPCでしかないはずなのに。


「そうですね!」


 つい腰に手を回して、鎧の上から抱き付く。硬っ。


「何やってんだよ、ったく……」


 気持ちを表現しただけだよ。


 ……鎧の上からじゃ、筋肉がわかんないな。残念。




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  名前 ラン

  種族 ハーフエルフ

  性別 男性

  階級  三


  筋力  六

  敏捷 一四

  魔力 一八


 魔導器 属性剣

  魔術 魔力操作   魔力感覚


  技術 看破     軽業

     跳躍


  恩寵 旧神ナルラファリア


  ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一

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