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まさかと思うけど、赤壁ってこれの事?

 シュテンの動きは明らかに良くなってた。右腕が使えない事が相当戦力を落としてるのに、それでも僕は圧倒された。そして蹴りも織り交ぜ始めた。これはあまり得意じゃないのか、注意していれば当たる事は無いように思える。でもそちらに注意しなければならない事が充分な役割を果たしてる。


 左の拳を警戒するだけじゃ駄目なんだよね。残念。


 こちらの剣は、ダメージになってないように見えた。斬っても僅かにすら傷付いてくれない。どうも赤い光が皮膚表面を守ってるらしい。


 まさかと思うけど、赤壁ってこれの事? 嘘お。


 それはともかく。これじゃ僕には打つ手が無い。悲し過ぎる。


 そんな時、端末の振動を感じた。攻撃を避けて距離を取り、左手に出してちらっと視線をやる。パーティのメッセージが来たみたいだ。


「まだやっておるんじゃな? 今しばらく持ち堪えるんじゃ。そっちに向かっておるからのう」


「町に帰っても死に戻ってないからびっくりしたぜ。他のプレイヤーも引き連れてるからもうちょっとだけ頑張ってくれ」


「魔力無くなってるけど大丈夫? 逃げられそうなら、こっちに来ても多分大丈夫だよ」


 救援のお知らせだった。すんごいほっとしたよ。音声入力でメッセージを返す。


「シュテンが赤い光の膜を纏って、剣が効かなくなっちゃいました。救援助かります」


「何だそれ!? もしかして結構追い詰めてんのか!?」


「ランちゃん、やるう!」


「剣が効かんのか。これは人を集めて正解じゃったのう。袋にしてやるわい!」


 そうと決まれば、もう少しだけ踏ん張ろう。ひたすら避けて、隙あらば一応突いて、ここに引き留めて到着を待つ。そしたらきっと倒せる。


 最後は他力本願になっちゃうけど、僕に出来る事はやり尽くした。自力で倒せないのは悔しくもあるけど、このタイミングで救援が来るって展開は熱いね。


『一人は殺されて戻る事となってしまったが、三人が町へ帰ったのは良い結果をもたらしたようだの。お主がここでこやつの足を止めたおかげであろうよ』


 こうなるなんて、全く考えてなかったけどね。




 それからは接近戦を続けた。迫る拳と蹴りを凌いで、こちらからも剣を振るう。無駄とわかっていても、手は休めない。シュテンの攻勢は衰える事を知らず、僕の持久力だけがじりじりとすり減ってゆく。


 時折離れて回復を試みるけど、シュテンもそう甘くはない。大股で駆けて足を振りかぶり、蹴りを入れて邪魔をする。もちろん避けるけど、当然これでは休めたもんじゃない。


 それでも消費を抑えて時間稼ぎ出来るから、大して休めなくたってやる。少しでも長く戦闘を維持して、救援を待つ。それが今僕のやるべき事だ。


 持久力の消費を抑えるか、回復力を上げる手段が欲しい。それもやっぱり薬? 探してみようかな。







「はあ……はあ……まだかな……」


 思わずそう口に出してしまうくらいに、疲労が溜まっていた。持久力の残りは二点。引き延ばして戦っても、後五分が多分限界だ。


 爆発を警戒しなくなったからか、シュテンはガンガン攻めて来る。おかげで持久力の減りが思ったより早い。


 攻撃もかすめる事が多くなった。服のところどころが切れて破れてしまってる。主に袖とスカート。さすがに胴体はまだかわせてるから、損傷の規模も大きくない。補修は難しくなさそうだ。帰ったら頼も。


 不意に、シュテンが視線を明後日に向けた。僕も注意しながらそちらに視線を投げる。


 土煙のようなものが見えた。何かがこちらに向かって来ている。この方角は南だ。という事は、あれは救援か。


「やった……!」


 思わず声に喜びが表れた。もう見えるところまで来ている。もう少し粘れば、きっと倒せる。


 沸々と気力が湧いて来た。自分で自分の目に力が蘇るのを感じた。我ながら現金な事だけど、嬉しくて仕方ない。


 でも、土煙が何なのか理解したシュテンは再び憤怒を咆哮に乗せた。そしてより攻撃性を増して、僕へ攻撃の数々を殺到させた。それをよく見て、魔力感覚で捉えて、一つ一つ丁寧に避ける。攻撃に集中するあまり手薄になった防御の隙を突いて顔に切っ先を当て、効かないまでも視界を遮ってやる。


 そうして苛立たせれば、攻撃にも粗が目立つようになる。少しずつ手を加えて焦りと苛立ちを誘い、戦闘を物理的でない方向から支配する。


 考えてみれば、これが僕の戦い方だったっけ。剣は効かないし魔力も無くなった。今はもうダメージを与えられる手段なんて持ち合わせてない。でも救援の存在によって、精神的な方向から影響を及ぼす事が出来てる。


 彼らが到着したら、レイドボスのシュテンだって無事でいられない。赤い光の膜はあるけど、無敵ってわけじゃないはずだ。事実シュテン自身が焦りを見せてるんだから。


 だったら僕の仕事は、到着まで引き留めておく事だ。これ程憤怒を露わにしたシュテンが逃げるとは思わないけど、慎重になる事もあったからね。逃げ出す可能性はゼロじゃない。


 上手く神経を逆撫でし続けよう。でも僕、そういうのあんまり好かないんだよなあ。


 魔力回復の手段が欲しい。そしたらこういう、いやらしい戦い方をしないで済む。やっぱり薬かな?




 端末の振動を感じ、戦いながら視界に入れてファリアに読んでもらう。


『ふむ。初めに遠距離攻撃を叩き込む算段らしい。その際には連絡すると言うておるが』


 どもども。


 連絡かー。別に要らないかな? 魔力感覚で来るのはわかるし。


「連絡は要りません。いつでもどうぞ」


『驚いておるな。だが了承したそうだ』


 いや、ちょっと今忙しくてさ。滅多矢鱈に打ち込んで来てるんだもの。凌ぐので手一杯なんだよ。視線を端末に向けられない。


 魔力感覚が救援の接近を捕捉した。四十メートル以内に入ったらしい。どうも馬車を何台も出したみたいだ。そのまま戦場には乗り付けられないから、離れたところで降りてるね。走って近付いて来てるよ。


 それから声が聞こえた。


「本当に撃って良いのか!?」


「おい、話しかけんな! 邪魔になるだろ!」


「何あの動き……」


 どん引かないでいただきたい。


 ちょっとアレだったかな。ジャンプした後とか、全く気にしてなかった。早送りしたみたいになってるかも。失敗したけど、もう手遅れだね。


「では、わたくしが指揮を執りますわ! 整列なさい! 遠距離担当は準備よろしいですわね!? 近距離担当は攻撃開始を合図に向かう事! さあ皆の者、構えなさい! 行きますわよ!」


 あら、艶っぽいお声。見てる暇が無い。誰? どんな人?


『ちらと見えたが、あの時の貴族よ。ヒルダと言うたか』


 あー、あの赤紫の。


『色で覚えておるのか……』


 いや、あははは。印象的だったからさあ。


 それはともかく、そろそろ遠距離攻撃が来るね。それなら足止めに……目潰し!


 上手く身を翻して跳び、横薙ぎに剣を叩き付ける。そうしておいて、僕はシュテンの右肩を蹴って大きく離れた。そこへ遠距離攻撃が降り注ぐ。何本もの矢、何発もの魔術が襲いかかり、シュテンの纏った赤い光を連続して叩く。同時に地響きすら伴いながら接近戦を挑むプレイヤー達が左右に分かれ、射線を確保するようにして押し寄せた。彼らが到達するまで遠距離攻撃は続けられて、ヒルダ様の号令をもってぴたりと止む。


 そうなれば今度は袋叩きの時間だ。左右から挟んで近距離の魔術が代わるがわるに叩き付けられる。炎を吹く剣、大鎚の強烈な一撃、雷光纏う槍の一突き。どれもこれもが赤い光に阻まれるけれど、僕は魔力感覚を通して感じていた。膜にひびのような綻びが生じた事を。


 シュテンは反撃する。左の拳を打ち付ければ重武装の者すら吹き飛んで転がり、蹴り付ければ盾すらひん曲げて宙を舞わせた。当たると、あんな事になるのね……。


「高い高い高い他界!」


「最後」


「わざわざアクセント変えてるし。余裕あんね」


「お、死に戻ったか。一撃ってやべえな」


 ま、まあ楽しそうで良かったよ。


 僕はもう疲れたー。




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  名前 ラン

  種族 ハーフエルフ

  性別 男性

  階級  三


  筋力  六

  敏捷 一四

  魔力 一八


 魔導器 属性剣

  魔術 魔力操作   魔力感覚


  技術 看破     軽業

     跳躍


  恩寵 旧神ナルラファリア


  ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一

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