あるんだね、そういう展開……
魔力の爆発は、シュテンに思うようなダメージを与えられなかった。やっぱり体内から爆発させないと駄目っぽい。でもそんな隙は見せてくれない。僕の剣は爆発するって事ももう知られた。警戒はより強まってる。
でも僕に出来る事なんてこれくらいのものだ。後二回やったら魔力は三点。使い切ると昏倒しちゃうから、最後は二点の爆発になる。
とりあえずそこまで当てるのを目標に戦ってみよう。ダメージが重なれば隙も生まれるかもしれない。
『となれば、集中攻撃かの?』
それが一番有効だよね。右の二の腕を徹底的に壊そう! 酷い響きだ。
再び魔力を三点込めて、短剣状態まで圧縮。シュテンの周りに纏わり付いて、フェイントを織り交ぜながら狙う。あからさまに嫌な顔をすると、シュテンは軽い拳打を軽快に放つ。おかげで近付き難い。
右腕のパンチは相変わらず鋭い。やっぱり効いてないのかな。なら、効くまで攻めるのみだね。
今度はちょっと変則的な攻撃に出よう。両手を後ろに回して、剣を背中に隠した。シュテンは怪訝そうに僕を見てる。この状態のまま接近して、右手と左手とでフェイントを入れた。警戒するあまりにシュテンは動きを鈍らせている。
この時点で仕込みは完了。再び後方へ大きく跳んで、直後シュテンの二の腕で爆発が起きた。想定外だったようで叫び声が聞けた。
その爆発の最中に柄は僕のところに戻った。
何をしたかと言えば僕自身が囮になって目を引き付けておいて、柄をシュテンの背中側へ移動させただけの話だ。大した事はしてない。
全く同じ場所にまた爆発を受けて、シュテンはさすがに顔を歪めた。今度はしっかり痛かったかな?
それでも右腕はまだ普通に動いてる。やっぱりタフだ。とても倒し切れないって。
怒った様子のシュテンは、どすどすと大股にこちらへと接近して来る。すぐにまた魔力の圧縮は済ませておくけど、また同じ手が使えるかどうか。この使い方にも弱点はあるんだ。光が強過ぎて、気にしていれば後ろにあっても気付ける。だから多分、もう通じないね。
接近距離に自ら踏み込んだシュテンは、軽い攻撃を減らした。牽制程度には使うけど、本命は狙い澄ましたストレートやフック、アッパーなどなど。別にボクサースタイルなわけじゃないんだけど、拳の使い方は似てる。
その全ては僕の生命力を一発で奪い尽くす威力。当然全部避けなければならない。牽制は短く速いジャブ、時々フックやアッパーを混ぜて変調させ、こちらのタイミングをずらす。でも魔力感覚があるから、微妙な動きの違いや筋肉のうねりでお見通しだ。
ただ、ストレートはわかっててもひやっとする。本気を出したのかどうなのかわかんないけど、おっそろしく速い。溜めがあるから事前に来るのが予測出来て、それで何とかかわせてる。
ボクサーの技術を身に着けてたら、とんでもない強さになってしまいそうだ。そうでなくて本当良かった……。
こちらからは、試しにまた後ろへ剣を送ってみた。そしたらやっぱり離れられた。気付かれてるね。この手は通用しないっと。
外したら大損だし、また別の手段を考えないとなあ。
そうして接近戦を繰り広げたり、離れてインターバルを入れたりする事しばらく。お互いに決め手を欠いて、膠着状態に突入していた。階級七のレイドボス相手に、頑張ってる方じゃない? 魔術と技術のおかげだね。
ちらっと端末で魔力量を確認したところ、一点回復して残り四点になってた。それだけ時間が経ってるって事だ。一騎討ちに入って、多分三十分以上戦ってる。そりゃ魔力も回復するよね。
……って、それでも一点だけ!? 遅っ!
魔力の回復って、こんなにゆっくりなんだ。ここまで時間かかるんじゃ、戦闘中の回復なんて望めないな。薬が要るよ、薬が。
四点に回復した事で最後の一発も三点で撃ち込めるから、素直にそこだけ喜んでおこうか。今圧縮してある分含めて二回最大で爆発させられる。それで何とか右腕を壊してやりたい。
どうやって当てるかが問題なんだけどさ。普通に撃って当たるなら話は早い。けど僕程度の付け焼き刃なフェイントなんて、もう通用しなくなってた。短剣の小ささまで圧縮させた魔力は光が強過ぎる。隠しようが無くって厳しいよ。
もう一つ剣があれば、もっと狙い易かったかな。せめて似たようなものがあれば、それを囮にする事も出来るのに。
『似たようなもの、か。お主以前、魔力を外に出す事が出来ておったろう。あれを使えぬかの?』
あー、初めて剣に魔力を込めようとした時の事かな? あれを使えば、確かに似たような事にはなるか。よし、それで行ってみよう。
左手から魔力操作で体内から体外へ魔力を引っ張り出す。そうすれば光の塊が現れるけど……比較するとだいぶ光が弱い。全然強そうに見えないよ。駄目だ、これじゃ囮にはならない。
そしたら、これに魔力を圧縮出来ないかな?
……おっとと。放っといてはくれないか。とりあえずこれは左手に握り込んでおいて、動きながら圧縮しよう。
繰り出される拳打を避けて避けて、飛び退いて離れる。追い縋って迫る拳を掻いくぐって回り込み、右手の剣を刺そうとすれば今度はシュテンが退く。その隙に魔力三点を左手の光に圧縮。握った手の中から瑠璃色の閃光が溢れた。
ふっふっふ、これならやれる。充分囮に使えるぞ。何せ向こうはこれがどういう状態なのか知らない。物理的な影響力なんて一切無いけど、一見したら剣と同じように爆発するものだと思うはず。そう勘違いするはずだ。これを剣と一緒に扱って、翻弄すれば。
そうと決まれば実行だ。二つを放り投げて、シュテンの回りを旋回させる。
強い光を放つ二つが目眩ましにもなり、鬱陶しがって手を振ろうとしたけどその手を止めた。当たったら爆発すると思ったんだろうね。
逃れようとしても二つの方が速い。付き纏うようにシュテンの回りを飛び回らせて、僕はシュテンの隙を窺った。
そしてその瞬間は思いの外早く訪れる。一瞬意識が剣から逸れて、見失わせる事に成功した。直ぐ様剣を操作し、右腕へと突き立てる。巻き起こった爆発と轟音の向こうから、雄叫びに似た悲鳴が聞こえた。
次いで、閃いて魔力の塊を剣に投入。再び生成された刀身をそのまま突き刺す。連続で爆発に飲み込まれたシュテンは、砂煙の中から吹き飛ぶようにして転がりながら姿を現した。乾いた大地に倒れ込み、忌々しげに僕を睨む。
すぐに起き上がりはしたけれど、右腕はぴくりとも動かなくなっていた。
『くっくっく。目論見は成功したの。しかし魔力は枯渇寸前よ。これから何とする?』
後はこの剣が通じる事を祈りながら、じり貧の長期戦に突入するだけかな。勝ち目は薄いままだ。でも右腕を潰せたんだから戦えない事は無いはず。ダメージだってそれなりには入ってるんだ。動きもきっと悪くなってる。もしかしたら勝てちゃうかもしれないよ。
……火事場の馬鹿力を発揮して来なければ。
よくあるじゃん。HPが少なくなると強くなったり大技使って来たりする展開が。前にやってたMMORPGでも、攻撃性が強まったりターゲットが他に飛んだり色々あったんだよ。強力になった攻撃でタンクの回復が追い付かなくなったり、範囲攻撃の連発で周りが先に全滅したり。
前半戦と後半戦で戦術を変えないといけなくて、主催者も指示が大変そうだったっけ。
そういう事をやって来なければ、万に一つくらいで勝てるかもね。
シュテンは立ち上がった。僕も深呼吸して気持ちを切り替える。ここからは本格的に持久戦だ。集中力が切れた瞬間僕の敗北が決まる。
何とかかんとかここまでダメージを負わせたんだ。もうしばらく頑張ってみようか。
……なんて気合いを入れ直したんだけど。
シュテンは思わず耳を覆ってしまう程の大音声で咆哮した。そして、身体に赤い光を纏わせる。強い魔力反応があり、ただならない気配を撒き散らし始めた。憤怒に満ちた鋭い眼光は僕を捉えて離れず、怖気を誘われ萎縮してしまいそうな程の威圧を感じる。
あるんだね、そういう展開……。
絶対絶命じゃない? どうしろってのさ。
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名前 ラン
種族 ハーフエルフ
性別 男性
階級 三
筋力 六
敏捷 一四
魔力 一八
魔導器 属性剣
魔術 魔力操作 魔力感覚
技術 看破 軽業
跳躍
恩寵 旧神ナルラファリア
ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一
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