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見えまくってたけど良いの?

 どうしてこんな事になったのか。


 今更考えても仕方ない言葉が脳裏によぎる。


 構えた剣の先には真っ赤なオーガ。以前戦って倒した事のあるレッドオーガとは桁の違う体格のそれが、大き過ぎる手に握った白髪を握り潰した。


 息を呑む音が背中側から聞こえる。


 にやりと口を歪めた悪鬼は壮絶な笑みで、雄叫び染みた笑い声を上げた。お腹の底に響く音が怖気を呼び起こし、総毛立つ感覚が身体の内側にざわめくような音を鳴らした。


 誰かが誰かを呼んでいる。呼ばれた彼は返事の出来る状態にない。


 やがてその姿は光の弾けるように消え去り、その光景を見てようやくプレイヤーだから大丈夫なんだと思い出す。それくらいに我を忘れていて、目の前も頭の中も真っ白になってた。けど、それでも奥底に湧き出した気持ちは静まらない。


 誰かが僕の名前を呼んでいる。でも振り返れない。一歩を退く事も出来ず……そんな気にもなれなかった。


 どうしてこんな事になったのか。それは僕達の誰にも、わからない。


 ただ、空を埋め尽くすような巨大な目が……今は閉じられ消えて行くその黒い目の一睨みが、この状況を生み出した。それだけが唯一わかっている事。


 僕達は三人で、この窮地を乗り越えなければならない。







 狩りは、ある意味では順調だった。遭遇する魔物を危なげなく、とは言い切れないものの手酷く傷付けられる事無く、漏らす事も無く倒せてた。素材は集まったし、稼ぎとしては充分だった。そういう意味では順調で、三人も不満は無いようだった。


 ただ一点、オーガに遭遇する事が一切出来てなかった事を除いて。


 このままじゃ依頼を果たせないわけで、僕達はさらに狩りを続ける事を選んだ。そうして少しずつ、少しずつ北へと足を運ぶ。


 これが、失敗だった。




「なあ、あれオーガじゃないか?」


 カインさんが遠くを見やりながらそう言って指を差した。視線を辿れば確かに大柄な人型が見えて、それは紛う事無いオーガの姿だった。四匹と標準的な一団でブラッドハウンドを狩っているところのようだ。


 あれ、食べるのかな。なんて思ってたら噛み付いた。そして食い千切った。やっぱり食べるんだ。


「うへえ。嫌なとこ見ちまったなあ」


「弱肉強食は世の常じゃて」


「倒すと消えちゃうから、生きてる内に食べてるのかな?」


 そう言えばそうだった。でもそれだと結局消えちゃいそうだけど。まあ、魔物には魔物の理屈があると思うし、気にしても仕方ない気はする。


 僕達と同じように胃で消化してるとは限らないからね。


「だけどチャンスだよな。やっちまおうぜ」


「うむ。行くぞい」


 走り出した二人に僕とアッシュさんも続く。


 いち早く襲いかかったのはカインさんだ。大剣を肩に乗せるような形で振りかぶり、大雑把に振り下ろす。その瞬間に大剣は紅蓮の炎を巻き上げた。叩き付けられた切っ先は爆炎を撒き散らし、オーガを吹き飛ばして焼く。


 範囲攻撃に見えるけど、爆発したタイミングは切っ先が触れた瞬間だった。斬る事が発動のトリガーになってるように見えた。


 だとすると、さっきブラッドハウンドに使わなかったのもわかる話かな。地面に触れさせて発動しても良さそうに思えるけど、ブラッドハウンドは駆けずり回ってたから基本的に範囲外。使ったとしても届かないか逃げられるかで、効果的とは言えない。魔力の回復だって結構かかるし、それなら温存するのが正解だ。


 ゲンゾウさんも続いて、重鎧を着込んでいるわりには軽快な動きで斬り込む。太刀を一振り二振りと繰り出して、オーガの強靭な身体に次々傷を刻んだ。反撃の爪や拳、蹴りなどは受け流したり弾いたりして筋力の高さも見せ付けてる。


 お爺様は基本魔術を使わないスタイルみたい。技術で挑発を取ってるそうで、今もオーガを煽ったり罵ったりしてる。意味が理解出来てるか難しいところだけど、声の響きで何となくわかるのか効果は表れてるね。言葉巧みとは言えないけど、ボキャブラリーはお年を召してる分多い。聞いてると気の毒になって来ちゃうくらいだ。


 挑発で引き付ける関係で彼が二匹を担当してる。武道の心得があるのか動きは良く、二匹を相手にしても余裕すら感じられる。強い人は本当に強いね、このゲーム。


 アッシュさんは今回温存だ。杖型の魔導器は魔力の消費量を抑えてくれるらしいんだけど、それでもこれまでに何回か使ってる。魔力量は残り半分だそうだから、必要な時のみ使うスタンスに切り替えてるんだ。なので今は声援を送ってる。


 指揮はあんまり得意じゃないとかで、後ろから指示を出したりは全くしない。基本各自判断で、必要に応じてゲンゾウさんが指揮してくれる。


 後衛だし、本当はアッシュさんが出来ると良いんだろうね。でも人には向き不向きがあるから。その辺りこのパーティは寛容だ。お爺様も口では厳しい事言ったりするけど、根は優しいから。カインさんは細かい事気にしない、と言うより考えられないタイプ。


 僕はブラッドハウンドの生き残りを始末に向かう。手早く素早く片付けたら、焼かれてのた打ち回ってるオーガを仕留めた。


 カインさんの追撃を防いでたオーガには悪いけど、こういう遊撃が得意分野だからね。


 その後はゲンゾウさんと戦ってる二匹を背後から奇襲して、二人で挟み撃ち。こちらもあっという間に終わって、カインさんに加勢すれば戦闘終了だ。


「三人ともお疲れ!」


「大した事無かったな!」


「お前さんが言う事かのう?」


「あ、足留めも重要だろ!?」


 大剣持ちで足留めとは。本来火力担当、アタッカーなんだよなあ。足留めはゲンゾウさん、敵を引き付けるタンクの役割でしょ。盾無しのタンクも怖くはあるけど、彼は太刀とか篭手で巧みに防いじゃうからね。


 役割分担考えると、タンク一人にアタッカー三人な現状はバランスどうなんだろ。回復役のヒーラーとか支援系魔術を使うバッファーとか欲しいね。特にヒーラー。既にカインさんとゲンゾウさんは生命力削れてるし、半分以上あるからまだ大丈夫だろうけど限界は近そう。


 と思ってたら、ゲンゾウさんが瓶を一つインベントリから出した。その蓋をぽんと開けてごくごくと飲む。もしやと端末のホームに置いたウィジェットを見る。これはパーティの生命力や持久力、魔力量をゲージで表示してくれるんだけど、そこにある彼の生命力が回復してる。


 そっか、薬くらいあるわけか。これは僕も持っておくべきじゃない? 帰ったら買わないと。お金はあるんだし。


「ところでランちゃん。見えまくってたけど良いの?」


「何がですか?」


「下着」


「あ」


 こんなミニで動き回れば、そりゃ見えるよね……。


 ま、まあいいや! これしか持ってないんだし!


 ……やっぱりズボンが欲しい。


「儂も見えたぞい。まさか紐とはのう」


「マジ!? 俺見れてないんだけど!」


「カインキモい」


 撃沈した。


 でも今の発言は無いよね。致し方なし。顔は良いのに、こういうところだよなあ。本当残念な子だ。


「お、またオーガが見えるぜ」


 立ち直り早いな! 秒で復活したよ! 打たれ強いね!


「ならば行くしかないじゃろ」


 スルーですか。日常茶飯事?


 ともあれ気力は充分、日曜だから時間も充分。


 そんなわけで、目標物のためにオーガを狩りに駆け出した。




 この時、晴れている空が雲無く暗くなりつつある事に誰も気付いていなかった。




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  名前 ラン

  種族 ハーフエルフ

  性別 男性

  階級  三


  筋力  六

  敏捷 一四

  魔力 一八


 魔導器 属性剣

  魔術 魔力操作   魔力感覚


  技術 看破     軽業

     跳躍


  恩寵 旧神ナルラファリア


  ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一

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