魔術あっての僕だ
ロランシルト北の荒れ地には、色んな魔物が生息してるらしい。
「俺は! 虫が! 駄目なんだよお!」
「仕方ない奴じゃのう! 犬の方へ行けい!」
「ランちゃん! ケンタウロスお願い!」
「はい!」
初めにはヒュージスパイダーと戦っていた。そこにブラッドハウンドと言う、血を好む犬型の魔物が三匹参戦。さらにケンタウロスが弓を持って現れて、大混戦の様相を呈してしまった。
魔物達も種族が違うと戦い合うらしいんだけど、今回は僕達と魔物とに真っ二つで分かれた。ブラッドハウンドはその嗜好的に人族を狙うし、ケンタウロスもこちらが厄介だと見たのか矢を集中させてる。ヒュージスパイダーだけはその区別をあまりしてないように見えた。でも目の前にいるのはゲンゾウさんだし、分かれて相手すれば結局人族対魔物の構図に収まる。
僕の相手はケンタウロス。奇しくもまた弓の使い手だ。散々撃ち込んでくれたホブゴブリン達を思い出すね。
ケンタウロスはアッシュさんを狙おうとしてた。その矢を上手く斬り落として、余所見出来ないよう距離を一気に詰める。
「何今の!? すっご……!」
慣れだよ、慣れ。
……いや、嘘。魔力感覚のおかげ。これが無きゃ無理だって。動きも魔力操作で補助してるし、魔術あっての僕だ。
眼球の形から見ている方向、矢の向きから軌道、顔や腕の筋肉から弦を離すタイミングが、指からはその瞬間がわかる。その全てが、この世界ではエーテルだ。全て魔力感覚で知る事が可能なんだ。この魔術も大概やばい。チートと言われても言い返せない。
けどこのパーティで動く間は、魔力操作を隠すつもりでいる。だから剣を投げる事は出来ても操作はしない。刀身も飛ばさない。
僕の魔術の一つは『身体強化』だと話しておいた。筋力と敏捷を強化する魔術で、それぞれを特化するよりは上昇幅が低いけれど、総合的には高いという効果。魔力操作で身体を動かすのに似てるから、お誂え向きだったんだ。
この魔術はキャラクターを作る時に見かけた中の一つ。だから詳細は知ってた。
もう一つの魔力感覚は隠す必要が無いから、聞かれたら話しても良いと思ってる。その時は三人のも聞かせてもらお。
ケンタウロスに接近すると、彼は剣を引き抜いた。片手で扱うにしては少し長い。それを盛り上がるような厚い筋肉に物言わせ、右手だけで扱っている。
接近戦だけで戦う事になるのは、一応初めてじゃない。ホブゴブリン戦の後こちらまで来る道中で、試すだけ試して何とか勝利してる。その時に、僕はスピードを活かせないと戦えないんだって判明した。
何せ筋力六だ。物理的な破壊力を求めるなら、速度を乗せて斬り付ける以外に無い。魔力属性が今一よくわかってない現状、駆けずり回って斬る事しか出来ないんだよね。
これについては、誰かに聞いてしまった方が早いかもしれない。既に何なのか明らかになっていてもおかしくないもの。
三人は何か知ってるかな? 後で聞いてみようか。
さて、剣の刃渡りは若干あちらが長い。筋力はもあちらに分があり、小回りはこちらが有利。
僕に出来る事は……剣で戦わない事。
『ふ、わかっておるようだの』
さすがにね、そこはもう理解したよ。
僕は剣術じゃなくて、身のこなしで戦うべきなんだ。剣はあくまでもダメージを与える道具。重要なのは、どう動くか。如何にして裏を取り、如何にして隙を突き、如何にして動きを封殺し、戦闘を支配するか。僕が集中するのはそういった、決定打じゃないところなんだ。
恵まれた体躯も磨き上げた腕も積み上げた経験も無い僕が持つ手札は、魔力操作と軽業と跳躍の恩恵による運動性能だけ。それしか無い。
とにかく動いて撹乱し、僅かでも相手を乱し、死角をこじ開けて貫く。それでも致命傷を与えるのは難しくて、何度も何度も繰り返さなきゃいけない。そんなのが、僕の戦い方だ。
魔力操作で魔導器に魔力を込めてしまえば早いんだけど、隠さないとゲイルが公開したはずの動画に繋がっちゃう。だから使えない。
幸いこの戦い方には特化出来てる。最初から想定していたわけじゃなくて完全に偶然なんだけど、上手く噛み合ってる。運は良かったね。
それにこのケンタウロスより強い魔物に勝ってここまで来てるんだ。何にしろ、斬ればダメージになるでしょ? ゴーレムやブーレイなんて、斬れない相手だったからなあ。弱点を突けたから勝てただけだ。数だってホブゴブリンの時みたいに十もいない。こんな状況で負けたら、僕はしばらく放心して戦えなくなっちゃうよ。
『そんなところも見てみたいがな』
勘弁して!
ともあれ、戦うよ。油断せず慎重に、且つ迅速に。
……ブラック企業じゃん。いやあ、お断りしたいなあ。
一番早く決着したのはゲンゾウさんだった。その様子は筆舌にし難く、端的に言えば斬り刻んだだけ。相手にならなかったみたい。魔術を使った反応も無く、本当に斬りまくって終わった。脚とか結構硬そうなのに関係無かったね。
ただ、体液を結構浴びてしまってた。気持ち悪そう。本人あんまり気にしてないんだけどさ。やっぱりすごい。
その次は僕。ケンタウロスの周りを縦横無尽に動き、斬って突いてと繰り返した。正直な性格なのか、攻撃を誘えば剣でも蹴りでもすぐに出してくれてやり易い相手だった。
返り血は浴びてない。買ったばかりの服を汚すなんて冗談じゃない。
カインさんとアッシュさんは二人でブラッドハウンド三匹だったから、僕達に比べれば不利だったかも? 僕から遅れる事少しの殲滅だった。
犬型の魔物は総じてすばしっこい。カインさんの大剣では相性も悪かった。主に前衛として引き留める役割に徹していて、倒すのはアッシュさんが担当した。
彼女の魔術は、熱線とでも言えば良いのかな。赤い線がワンドから迸ってブラッドハウンドを焼いた。これが結構細くて、当たればかなりの熱量らしいんだけどすばしっこい相手には厳しいようだった。
つまりブラッドハウンドは、二人とも相性の悪い相手だった。
「やっとかよ!」
「疲れたー!」
「お疲れ様です」
「もうちっと精進せねばのう」
「手厳しいな爺さん!」
「ランちゃんもっとねぎらって~」
頭を撫でてあげよう。
こんなんで良い? あらそう。
「さて、本命はまだまだじゃ。行くぞい」
「おう……」
カインさんてば露骨にテンション下がってるじゃん。オーガってもっと強いんだけど、大丈夫なのかな。力は強いしタフだしそこそこに動きも速い。結構高水準でまとまった強さなんだよね。
まあ、ブラッドハウンド程すばしっこくはないから、そこは安心か。カインさんの大剣は当たれば強そうだもの。
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名前 ラン
種族 ハーフエルフ
性別 男性
階級 三
筋力 六
敏捷 一四
魔力 一八
魔導器 属性剣
魔術 魔力操作 魔力感覚
技術 看破 軽業
跳躍
恩寵 旧神ナルラファリア
ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一
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