べた過ぎ、二十点!
女性兵士さんにお礼を言って別れた後、僕は町の通りを西に向かった。砦の兵士さんにしても今さっきの兵士さんにしても、親切な人が多くて嬉しくなるね。
てくてくと、通りを眺めつつ歩く。色んな商店が並び、たくさんの人達が賑やかに行き交う。右を見ても左を見ても、そんな光景が広がっていた。人の暮らす町に来たんだって思いが今更ながらに込み上げて、ちょっと落ち着かない。
見るもの全てが新鮮なのはこれまでもそうだった。でもここには人の営みがある。
眺めれば中世のヨーロッパに似た町並みが視界をいっぱいに埋め尽くし、耳を澄ませば話したり笑ったり騒いだりする声に包まれてる事がわかる。色んな匂いが漂ってるし、飲食店に入れば美味しい物が食べられるはず。さっき着せ替え人形にされたけど、触れて来る手は温かかった。
そして魔力感覚はたくさんの反応を、存在を伝えてくれる。ここにはたくさんの人々が暮らしてる。
僕の持つ六つの感覚の内の五つでもって、人里に辿り着いた事実を実感した。ファリアと二人きりで走り続けて、ようやくここまで来た。
目指すトリシアまで後僅か……は言い過ぎかもしれないけど、もうすぐだ。嬉しくてスキップしてしまいそう。って言うかしてた。恥ずかしっ。
そんな事を考えて歩いてたんだけども。視線がすごいの。脚見過ぎじゃない? 気持ちはわかる。わかるけどさあ。やっぱり少し、恥ずかしいかな。
まあいいや。存分に見たら良いよ。自慢に思ってないわけじゃないからね。
…………何回か口説かれた。適当にあしらって退散!
プレイヤー相手だと話合わせて遊んだり出来るから気楽だね。
「へい彼女! ちょっと遊びに」
「べた過ぎ、二十点!」
「辛っ!」
点数付けただけ温情だと思うの。これじゃ赤点間違い無しだけど。
……逆にネタとしてはあり? でもそれならツッコミの二十点までがセットだから、結局変わらないね。残念ながら当然の結果って事で。
二十点さんはナンパじゃなくて、パーティへのお誘いに声をかけて来たそうだ。トリシアまでもそんなに距離があるわけじゃないし、せっかくなので少しだけ参加してみる事にした。
「二十点て呼ばないでくれよお!」
「ぷくく……! あんたなんて二十点で充分でしょ!」
「諦めい。阿呆な誘い方するからそうなるんじゃ」
二十点さん改め、カインさんは二十歳前後くらいの人間男性。ナンパに及んだ事からわかる通り軽い感じの人柄で、その分絡み易い。ツンツンに逆立てた金髪が目を引く残念イケメンだ。武装は肉厚で幅広の大剣型魔導器に軽装の部分的に守る防具。少し背が低いのを気にしてるらしい。
笑顔が素敵な女性エルフはアッシュさん。年は二十代前半かな? 濃い灰色の髪を腰に届くくらいに伸ばした、少し大人っぽい美人さん。服は黒のビスチェワンピースで、裾は膝が隠れるくらいと僕のよりずっと長い。やっぱりこれくらいは欲しいよなあ。
ワンドの魔導器を選んだようで、接近戦の能力は推して知るべし。でも、そんな魔導器をわざわざ持ったんだから、魔術は結構なものかもしれない。ちょっと期待しちゃうね。
最後は白髪ドワーフのお爺さん。お名前はゲンゾウさん。本当にお爺さんらしくて、御年七十五歳との事。こういうゲームやっちゃうんだ。若い。
選んだ魔導器はドワーフらしからぬ刀と和装の重鎧。リーフ様が持ってた緩い反りの打刀ではなく、強い反りのある太刀を選んでいた。その見た目は完全に武士。滅茶苦茶格好良い。
「お爺様、素敵です……」
「ふぉっふぉっふぉっ。儂に惚れても報われんぞ?」
「それは大丈夫ですよ。僕は男なので」
「何じゃと……?」
「…………は?」
「ぶっ」
まあ、ね。そうなるよね。
何度も経験して来た事さ……。
「え、マジ? 本当に男?」
「こりゃまた面妖な……」
「このゲーム、容姿も性別も変えられないんだよね。それじゃもしかして、リアルに男の娘? ふふ、ふふふあはははははは!」
アッシュさん笑い過ぎ。お腹抱える程?
一方でカインさんは唖然としてる。君、ナンパしたもんね? 二十点の。
「まあ、あれじゃ。お前さん、色々苦労しておるじゃろ。儂にはそれをどうこうとしてやれんが、愚痴くらいは聞くからのう」
さすがの年の功、色々察するところがあるみたいね。
確かに色々あったけど、受け入れて乗り越えてるから愚痴も無いかな。でも気持ちは正直に嬉しい。抱き付いて良いかな。ぎゅっと。
「ゲンゾウさん、やっぱり素敵です」
「……男じゃと言われとるが、女にしか見えんからのう。何とも複雑な心地じゃわい」
でしょーね。
ちなみにゲンゾウさん。ドワーフだけど僕より背が高い。普通に百六十以上はある。種族的にはもっと低いイメージだけど、そこまでじゃないんだね。ゲームの補正?
三人の目的は、町の北での狩りらしい。ターゲットはオーガ。理由は戦士ギルドで受けた依頼だ。
「依頼人が角を集めてるの。幾らあっても良いとかで……ふふっ」
まだ笑ってるし。僕を正視出来ないみたいね。
「一本の相場が五十イルのところを百出すと言っておるんじゃ。豪儀な事にのう」
「それはすごいですね」
「つまり稼ぎ時って事。良い話だろ?」
カインさんがどや顔決めてる。一周回って可愛いかも?
良い話なのには間違い無い。結構稼いだけど、お金は幾らあっても良いものだし。僕も一緒に稼がせてもらおう。
「分配は各自ドロップ分で良いよな?」
「はい、構いませんよ」
よくわかってないけどね。このゲームは自動でインベントリに入るから、取り分は特別均等にしたりしないって事だと思う。いわゆる運任せ。一番面倒が無いし、後腐れも無いから無難だ。インベントリ見せなきゃわかんないんだもの。
それを見せろ、なんて言うのは普通明らかにマナー違反だ。だから応じる必要も無い。
このパーティではそんな心配も要らないね。ありがたい事だよ。
「じゃ、行こっか」
「お前待ちみたいなところがあったんだけどな」
アッシュさんの笑いのハードルが、今物凄い下がってるらしいんだよね。笑顔が可愛いから良いんだけどさ。何かの拍子に笑ってしまう。そんな状態だ。
行けるか、と思ったらまた笑い出しちゃった。
「仕方ないのう。抱き上げて行くぞい」
そう言うなり、ゲンゾウさんはアッシュさんを抱き上げてしまった。
お姫様だっこ……と見せかけて。
「ちょっと、俵様抱っこ!?」
「ほう、上手い事を言うのう」
「担いだだけじゃんか!」
フェイント入れてから担ぎ上げる辺り、なかなか良い性格してらっしゃるようで。
賑やかで退屈しないパーティだね。既に楽しい。
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名前 ラン
種族 ハーフエルフ
性別 男性
階級 三
筋力 六
敏捷 一四
魔力 一八
魔導器 属性剣
魔術 魔力操作 魔力感覚
技術 看破 軽業
跳躍
恩寵 旧神ナルラファリア
ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一
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