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あいつは従士だったんだよ

 リーフさんとはあの後別れた。彼女はそのまま東へ、魔峰の方へ向かった。僕は逆に西へ向かう。


 ちょうど良いからゲイルと連絡取ってみようか。


「ゲイルー」


「おう、どうした?」


「リーフさんに会いましたよ」


「マジか。……あ? それじゃ無事に出られたんだな」


「はい。今はひたすら西に向かってますよ。途中でホブゴブリンの群れに襲われて、リーフさんに助けてもらいました」


「出鱈目に強かったろ」


「ええ、出鱈目でしたね」


 ゲイルはリーフさんについて問題にならない程度に話してくれた。


 まず、彼女は高校三年生だそうな。彼女自身が話していた通り、僕とゲイルの会話を聞いてASについて知って興味を持った。そして両親の許可を得て始めたのが今年の頭らしい。よくswivel買えたね。


「それから二ヶ月で階級五になっちまってな」


「え? ……早くないですか?」


「お前も大概だぜ。リーフも階級の高え魔物を狩りまくったんだとよ。どうもリアルで腕に覚えがあるらしくてな。普通は階級五なんて一年かかるんだが」


 圧倒的に早いね。やっぱりあちらで強い人はこちらでも強いわけだ。それもこのゲームの売りの一つだし、運営としては狙い通り?


「でだ。あいつは従士だったんだよ」


「従士、ですか?」


「あーまあ、領主の私兵みてえなもんだ。それの上等な奴だな。騎士の一歩手前だと思えば大体合ってるぜ。俺もそうなんだが」


「ゲイルが騎士の一歩手前!? その言葉遣いで!?」


「許可は取ってるぜ」


「嘘でしょ? 領主様器大き過ぎません?」


「うっせえ! そんでリーフとたまたま会ってな。知り合いの紹介だったんだが、俺達の話を聞いてたなんて言われてよ。詳しく話を聞けば納得だったわけだ。その時従士に誘ってな」


 ほうほう。彼女の強さならわかるかな。従士は私兵みたいなものだって言うし、ぴったりだね。


「そしたら活躍してよ。あっという間に騎士になっちまった。しかもその地位にも留まらねえで、果ては領主の養子よ。今の名前はリーフ・セルティウスだぜ」


 ……は? え? プレイヤーが領主様の養子?


「マジですか」


「マジだぜ」


 騎士から養子というのもおかしな話だけど、プレイヤーがそこまで上り詰められるってのはすごいね。


「でも、何でそんな事に?」


「ここだけの話だがな。あれだけ腕利きだとよ、貴族が黙ってねえんだ。どんな悪どい手を使ってでも手駒にしようと画策するだろうからってな。養子の話は領主が直接リーフに持って行ったそうだ」


 あー、貴族絡みか。腑に落ちたよ。つまりリーフさんを守るための措置なんだね。領主様、好感度上がるなあ。


 器が大きい上にこうして守ろうとまで動いてくれる。良い領主様じゃないの。


「ところで、トリシアって町なんですよね?」


「今更だな。そうだぜ。ついでに教えとくが、トリシアがある一帯はランドバロウ伯爵領だ。領主はランドバロウ伯爵だな。国はさらに西、海の向こうの大陸にある。マルカナス大陸のイルハナ王国だ」


「何だか色々疑問が……」


「わかるぜ。イルハナ王国は、こっちのメリアー大陸を開拓するために伯爵を派遣したんだとさ。はっきり言やあ体の良い左遷だわな。だが伯爵はそれを成し遂げた。ランドバロウ伯爵領として土地の開拓に成功したわけだ。この伯爵領の中心都市が、領都トリシアなんだよ」


 リーフさんの話から領主様の話になって、さらに大陸と領地の話にまで発展しちゃったぞ。気になるから聞くけどね。


 ランドバロウ伯爵領は、大陸西端に作られたトリシアからおよそ五百キロ程の範囲を領地としてるらしい。こう言うと他にも領地があるようだけど、メリアー大陸には今のところ他に人の住む土地は無いそうだ。ランドバロウ伯爵領以外は全部魔物の土地。


 伯爵は、魔物の大陸に入植しようだなんて無茶苦茶な計画を押し付けられたわけだ。何て無謀な事を。


「他の国も入植を試みたらしいが、成功例は無しだとよ。このままなら、上手くすりゃメリアー大陸全土を伯爵の領地に出来ちまうな」


「そうなる前に新しい国家の樹立ですね」


 順調に領地が大きくなるなら、その内には一領地じゃ治まらなくなる。と言うかトリシアから半径五百キロって、既にそうして良いくらいの広さじゃないの? 領地運営に影響出てないのかな。細かく分けて各地に領主を配置して、それを統括管理するやり方じゃないともう厳しくない?


 忠誠なのかなあ。


 ヨーロッパの古い時代にあった辺境伯という爵位の貴族はそういう権限を持ってたように思ったけど、ランドバロウ伯爵も実はそういう伯爵? それなら納得なんだけどね。


 ……はっ! 国家樹立となれば、リーフさんも王族に!? プレイヤーが王族になるとか面白過ぎるね! 是非とも目指してみてもらいたい!


 うん、他人事だったね。




「それでお前、今どの辺よ?」


「どの辺と言われましてもね。脱出からまだそんなに経ってませんし」


「まあそりゃそうか」


「とりあえず一割くらいは進めましたかね」


「あー、何だ……。またわけわかんねー事言ってやがるな」


 そっか、それをまだ報告してなかった。


「ふっふっふ。今の僕は、車並みの速さで走りますよ!」


「そーかい。で、動画はあんのか」


「用意してますとも!」


 早速アップロード。


「ついでに理屈も聞いて良いか? 前の奴もあんま理解されなかったらしくてな」


「前のと言うと、魔導器への魔力の込め方と込めた魔力の圧縮ですか。と言っても、そう大した事はしてないんですけどね。魔力操作で自分の中から魔力を取り出して魔導器に移せば込めるのは完了です。圧縮するのは魔力全体に働きかけて、集束させて留まるよう動かす感じですね。この結び付きを解放すると、元に戻ろうとして爆発が引き起こされるわけです」


「……まあ、そのまま書き込んでみっか。動画を見たぜ。確かに車みてえなスピードが出てんな。これはどうなってんだよ?」


 こちらは説明に前提の知識が要るね。


「エーテルって、わかります?」


「よく聞く単語ではあるよな。MP回復の薬だったりよ」


「まあ、そうですね。このゲームにもあるんですよ、エーテル」


「そうなのか。それが関わってんだな?」


「もちろんです。エーテルというのは、このゲームでは魔力とほぼ同じものです。エーテルに個々の権限を付与したものが魔力なんです。それだけの違いしか無いために、魔力操作ではエーテルをも扱えてしまうんですよ」


「なるほどなあ」


「そしてエーテルの本質は、創造のエネルギーです。ありとあらゆる存在が、このエーテルから作られてます。ここまで話せば理解してもらえると思いますけど」


「身体もエーテルから作られてるってわけか。だから魔力操作で動かせちまうんだな?」


「そうです。基本的に魔力操作は自分の魔力限定で操作しますけど、これにはもちろん自分のエーテルが含まれます。であれば自分の身体を構成するエーテルに働きかけられないはずがないんですよね」


「お前はその知識があったから、そうして色々出来てやがるわけか。納得したぜ。もしかしてよ、ナルラファリアか?」


「ですよ。気に入っていただけたので、色々教わりました」


「しかしこいつはなあ……どうしたもんか」


 ん? 何か不都合でもあったのかな?


 聞いてみると、エーテルの事は秘密にした方が良いかもしれないという話になった。


「お前は何が原因かわからねーが、ナルラファリアって別の神に会ったわけだ。で、普通は得られねえ情報を得た。それが仕様通りの挙動なら構わねえさ。だが違ったらどうなるよ? 運営の予定が狂いやしねえか?」


「あー……なるほど。この話は今後何らかの展開があって、そこで明らかになるかもしれないんですね」


「そういうこった。現状何とも言えねえだろ、お前の状況はよ。これがバグの類いなら、ここから情報が広まっちまうのは良くねえ」


「ですね。そういう事なら、エーテルの話は伏せておきましょう」


「それが良いな。だいぶ世界設定の核心に触れる内容だからよ、今後そんな話が何処かで出て来るんだろうぜ」


 結構思慮深いんだよなあ、ゲイルは。こういう良いところも相変わらず。嬉しいなあ。


「ゲイルに話して良かったです! 今度お礼しますね!」


「おう、期待はしねえどくぜ」


「そう言われると張り切りたくなりますね。キスでもしましょうか」


「ケツから爆発させんぞコラ」


「それ僕の必殺技じゃないですか! と言うか忘れて下さいよ!」


 ケツから爆発。


 男同士で言うととんでもないパワーワードになるね……。ブーレイは成仏して。




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  名前 ラン

  種族 ハーフエルフ

  性別 男性

  階級  三


  筋力  六

  敏捷 一四

  魔力 一八


 魔導器 属性剣

  魔術 魔力操作   魔力感覚


  技術 看破     軽業

     跳躍


  恩寵 旧神ナルラファリア


  ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一

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