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そうして世界を終末へと近付けるのだ

 さてと。ぼちぼち行きますか。


「こっちも一狩り行くところだ。またな」


「はーい。何かあったらまた連絡しますね」


 ゲイルとのお喋りも一旦終了。頑張って出口を探そう。


 大広間を壁に開けた穴から出ると、そこからは真っ直ぐの洞窟だ。上り坂になってて、先に光は見えない。魔力感覚が周辺の構造をエーテルの反応から教えてくれるのだけど、壁の向こうには何も無いようだ。


 範囲内には魔物らしき魔力反応も無い。今のところは安全だね。


『この魔力感覚というものは素晴らしいな。まさか周囲の構造を把握出来てしまうとは』


「便利ですよね。でも、ファリアがエーテルの事を教えてくれたからですよ?」


『役に立てたようで我も嬉しく思うぞ』


 さて、今は安全でもまた魔物が来るかもしれない。警戒はしつつ、速やかに進もう。


 ブーレイは油断して遊んでくれたから何とかなったけど、他の魔物もそうするとは限らない。真っ向から当たって来られたら、僕なんてとても生き残れない。だから遭遇する前にここから脱出してしまわないとね。


 魔力感覚のおかげで真っ暗なまま歩けるのがありがたい。エーテルの反応を持たないものが存在しないから、範囲内に限り見るよりも詳細に知覚する事が可能だ。この感覚に集中して、周りを照らさないよう刀身も消してる。下手に光らせておいて、わざわざ見つかる可能性を上げる意味なんて無いし。


 一本道だからはち合わせたら避けようが無いんだけど、こちらに来るとも限った話じゃないからね。それに道も分かれる可能性がある。


 色々考えると、明かりなんて無い方が良いって結論に落ち着くんだよね。


 というわけで、真っ暗闇の上り坂をてくてく歩いてる。微妙に凸凹してるのが歩き難いなあ。




 洞窟は途中から幾らか曲がったりしていたけれど、結局そのまま一本道だった。そして運も良かったのか魔物に遭遇する事も無かった。


 何故過去形なのかと言えば、無事に出られたから!


「ああ、空が青いですねえ……」


『久方ぶりのソールだのう。感慨深いわ……』


 洞窟から出てすぐのところに立ち尽くし、僕達はついつい空の青さとそこに浮かぶ光を眺めてしまった。


 太陽程眩しくはなく目に優しい程良い明るさで、光の領域であるソールは生命の領域である大地を照らしている。空の青は東京の空より遥かに深い。そしてさらさらと流れる風は心地良く、胸いっぱいに吸い込めば美味しいと感じてしまうくらいに綺麗だ。


 洞窟は高い山の中腹にあったようで、見上げれば山頂が聳え立っている。そして見下ろすと、さして広くはない森に囲まれている事がわかる。


 森は、何となくくすんだような緑に見えた。さらにその向こう側は荒れ地のようだ。


 そんな光景を目にすれば、山も荒れている事に気付ける。緑がほとんど見当たらず、雑草すらもちらほらという程度にしか生えていない。


 これがこの、アルスという世界の景色なのか。ちょっと寂しいね。


『我が封じられる以前は、これ程ではなかった。大地の荒れようを見るにこれは混沌の影響であろう』


 ファリアはこの状況を『混沌の領域』の仕業だと口にした。


「混沌の領域、ですか?」


『うむ。恐らくこの付近にあるのだろう』


 領域と言えば、ファリアや姉のフレーティア様の作ったと言う光の領域や生命の領域、闇と精神の領域を思い出すね。それと似たようなところなのかな?


『似たような、と言えなくはないだろうが。その役割は真逆のものよ。混沌が作り出したものであるからな。世界に破壊をもたらすための領域だ。混沌の領域は魔物を生み出す。そして大地に溢れて自然を壊し、生命を殺し、食らって魂を捕らえる』


「魂を!?」


『魔物は魂を捕らえ、その魔力を奪って自らの力とする。或いは混沌へ捧げ、取り込ませてその一部とする。そうして世界を終末へと近付けるのだ』


 何だか、怖ろしい仕組みだね……。


 そうやって全ての魂が混沌側の手に落ちると、世界が終わるってわけ?


『その通り。未だ存続しておるのだから、四神は上手くやっておるのであろうが……』


 大地の荒廃が進んでいる以上、万全とは言い難いわけか。


 ところでそれ、僕達は大丈夫なのかな。魔物にやられたら、魂取られちゃったり?


『ゲームとしてこちらに来ておるのだから、対策しているのではないか?』


「まあ、そうですよね」


 でもこちらの人達は、NPCは違うって事だ。


 この世界が本当にゲームなんだとしたら、あくまでも設定上の話というだけの事だから気にしても仕方ないんだけど……。


 ファリアはあちらに行けたからなあ。


 少なくとも、ファリアはゲーム上だけの存在じゃない。だとしたら他のNPCだって、アルス人だって同じなんじゃないかな。本当に存在してる人々なんじゃないかな。


『我にとっては、そうなのだがな。しかし、お主がその事に気を遣う必要は無いぞ』


「何故です?」


『混沌に魂を奪われている世界だとして、どうしようと言うのだ? あちらから来ているお主と、全ての権能を失って何をする事も出来ぬ元神の我とで、何が為せる? 四神が、あやつらの望むように世界を存続させておるのだ。我らが為さねばならぬ事など何一つ無かろうに。こちらの事はこちらの神に任せておけば良い。世界の理に従って滅びをも見守り受け入れようとした我ら姉妹を退け、世界の維持を望んだ四神にな』


 まあ、確かに僕達は弱いからね。出来る事なんて何も無いか。


 ……ファリアとフレーティア様にとって、姉妹神にとって世界の破壊は、避けるべきものじゃないんだね。創造と破壊を繰り返す世界の管理者である姉妹神は、終末を当然のものとして受け入れてるんだ。


 でも元々人だった四神は、今を生きてる四神にとっては、そんなもの到底受け入れられる事じゃなかった。だから権能を奪ってまで、姉妹神を退けたんだね。


『世界が破壊を迎えようと、その先にはまた創造がある。新たな世界、新たな生命、新たな人生が待っている。今に執着して戦うのも良いとは思う。しかし未来が無いわけではない。……それを知ったとて、生命は生きようと努めるものだがな』


 そりゃそうでしょ。


 ただまあ、神としてはそこに固執するべきじゃないって事なんだろうね。固執するあまり生命へ干渉し過ぎれば、生命は神を頼みにする。強くて何でも出来る神に依存する。神無しでは生きられなくなる。


 そうなれば生命達を守るために神が戦わなければならなくなってしまう。生命は次第に戦わなくなって、ただ生きるだけの存在になり果てて怠惰を貪り、やがて生きる意味すら見失う。


 ファリアはそれを危惧したんだよね? だから生命のためにならないって、四神と対立したんだろうし。


『だが、我も意固地ではあったのであろう。世界を存続させる必要は無い。しかし存続させてはならないわけでもない。四神に協力しても良かった。協力まではせずとも、フレーティアのようにただ見守っておっても良かった。選択肢は多く、許されぬ事など無かったのだ。今更ではあるが、あやつらに辛い選択をさせてしまったのやもしれん。本当に、今更だがの』


「後悔してるんですか?」


『少しな。しかし全てが無駄であったとは思わぬ。きっと我の選択も、何らかの形で影響を残しておるはずだ。世に無駄な事など無い。必ず何処かで、辻褄が合う』


 無駄な事は無い、か。


 何をもって無駄と言うかは人の価値観にもよるんだろうけど、思わぬものが思わぬところで役に立ったりするよね。風が吹けば桶屋が儲かるって、まさにそういう事だ。


『お主と出会えた事を思えば、我の処遇も無駄ではなかったの』


「またそんな事言って……」


 隙あらばそういう言葉を差し込むんだから。


 気持ちはそりゃ、嬉しいけどさ……。




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  名前 ラン

  種族 ハーフエルフ

  性別 男性

  階級  三


  筋力  六

  敏捷 一四

  魔力 一八


 魔導器 属性剣

  魔術 魔力操作   魔力感覚


  技術 看破     軽業

     跳躍


  恩寵 旧神ナルラファリア


  ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一

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