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早くも挫けそうだ

 さてさて、思考が筒抜けなんて事にもめげず探索を始めようか。


『うむ、良い心がけよ』


 はい、どーも。


 とりあえず看破! 意識してないと機能してくれないらしく、慣れるまで苦労しそうだよこれ。


 特に見え方が変わるわけじゃないけど、ふらふら探っていれば気が引かれるところに自然と意識が向く。そこは壁の一角。方角としては大広間の北側だ。


 念のために一周しておく。でも他の場所には看破が反応しなかった。一ヶ所だけだね。


 北の壁に戻って眺める。特別何か見えるわけじゃないから、入念な調査を施すくらいしか出来ないな。気になる辺りをべたべた触り、目を皿にしてじっくり調べる。触れた感じは特に異常無しで、目にも気になるところは無い。臭いも同じくだ。


 こつこつ叩いてみてもやっぱり変化無しで、看破が意識を向けさせるんだけど理由が全くわからない。


「何でしょうね、これ」


『ふむ。我にもさっぱりだのう』


 隠し扉なら、何らかの開ける仕掛けがありそうなものなんだけどね。


 …………でもここ、閉じ込めるための場所なんだっけ。だったら逆だ。仮にここが通路だったのだとしても、開かないようにしてるはずなんだ。


 んー……埋めたにしては、こちら側が綺麗過ぎるんだよな。ゴーレムにやらせた? 土のゴーレムっぽいし、あり得なくはないのか。


『確かにそうだがの。土はハールの領分。石などもその範疇に含まれておるから、あやつ自身の仕業であろうよ』


 ハールって、もしかして四神の一柱?


『うむ。大地に関わる権能を得た神だ。他には炎のスマレア、水のイント、風のオルトマがおるな』


 ほー。まあ、わりとどうでもいいんだけど。


 ファリアをあんな目に遭わせた奴らなんて


『ほう! ほほう! 我の事をそうまで想うてくれるか!』


「いや! これは! ち、違いますって! あんな酷い事をするような相手なんですから嫌って当然じゃないですか!」


『くっくっく。そういう事にしておいてやるわ』


 ああもう! 恥ずかしい!


『嬉しく思うぞ。だがな、あやつらとて必死であったのだ。心から生命を守りたいと思うたからこそ、その心が行き過ぎた。そのため我が自分の権能を取り返さんと行動する可能性に思い至り、封印する事を選択したのであろう。そのような事に煩わされては、救えるものも救えなくなるからの。我はその心を嬉しく思いこそすれど、憎む気持ちなど持ち合わせておらぬ。だからお主も、な?』


「理解はしますけど……」


『ふ、今はそれで良い。むくれた顔も愛らしいわ』


 ぐっ……。


 でも、本人が許すのと僕が許すのとは別だからね! こんなところにあんな状態で閉じ込めるなんて酷過ぎるもの! そこは絶対許せない!


 せめて拳骨の一発や二発……!


『お主の拳骨では堪えんであろうな』


「痛い痛くないはどうでもいいんです! 拳骨を落とされるような事をしたんだと自覚させる事が重要なんですから!」


『ほう、なるほど』


 くつくつ笑ってるし。


『まあ、お主はお主のしたいようにするが良い。我は四神がどうであろうと何でも構わぬのだ。お主とともに行くと、ともに在ると決めたからのう。我を封じてより世界は悠久の時をこうして……外をまだ見ておらぬから程度はわからぬが、今尚存在し続けておる。これはあやつらが自らに望んだ神としての勤めを果たせておるという証。ならばこの世界の神は既にあやつらよ。我は無数にある存在の一つに過ぎなくなったのだ。心置きなく、お主に付いて行けるというものよ』


 よくそんな事、臆面も無く言えるね? 聞いてるこちらの顔が熱いよ。


 さ、脱線してるからね! さっさと出る方法を探すよ! いつまで笑ってんのさ!?




 埋められたのだとしたら、仕掛けなんてあるわけない。単純に壊して道を作るしか手は無い。この剣でそんな事出来るかな。やるしかないんだけどさ。


 ともかく作業開始。手と腕で振るのと同時に魔力操作でも力を込めて、がつんと剣を叩き付ける。


 がつんと。


「痛たたた!」


 手があああ! ちょっと大袈裟だった。そこまで痛くはない。


 ……でも、早くも挫けそうだ。







 それから三十分。手や腕を痛めないよう気をつけながら剣を振り続けた。この際だからと剣の練習のつもりで意識してやってる。でも硬い石材らしくて、作業の進捗は芳しくない。


 何か良い方法は無いかな? 休憩がてらに、端末でも調べてみようか。


 インベントリには服しか無いね。ステータスは特に変わったところが無い。他には地図とかカメラとかレコーダーとか。後はSNSに時計、ヘルプもあるね。


 ヘルプはチュートリアルで見た情報以外だと、基本的な事ばかりだ。でもそんな事すら僕は知らないから、後で確認した方が良さそう。ざっと見たところ、今役に立ちそうな新しい情報は無い。


 やっぱり魔導器と魔術で何とかしないと。


 …………ふうむ。魔術は魔力を込める事で、より強力に扱う事も可能。階級二になった今の僕なら二点の魔力を込められる。だけどこれ、魔術限定なの? 魔導器は? ちょっと試してみようか。


 魔力操作は既に二点で発動させてる。残り十三点。ここから二点を魔導器に込めるつもりで………………音沙汰無しか。


 だったら魔力操作を使ってみよう。まずは魔力操作で魔力を集める。場所は左手で。これは上手く出来た。左手がぼんやりと光ってる。


 次はこの魔力を外に出す。すると左手の平の上にイメージ通り光の球体が現れた。瑠璃色に光る小さな球体がふわりと浮いてる感じ。これを動かして、剣の柄に入れた。


「うわっ!」


 直後、刀身が変化する。膨張して倍程度に長くなり、より幅広にその形を変え、輝きも圧倒的に強くなって眩しいくらいだ。


 ちょっとびっくり。座ってた腰がぴょんと浮いた。……そんなに爆笑する? まあいいや。これなら大きく削れるかもしれない。


 早速剣を壁へと叩き付けてみた。


「よいしょお!」


 激しい音と同時に、強い手応えと刃の食い込む感触が伝わる。


 剣は、確かに強化されていた。壁に深く切っ先を沈め、その威力の大きさをまざまざと見せつけてくれる。けど、そこまでだった。一振りだけで剣は元に戻り、壁はまだまだ健在。たったの一振りでは到底向こう側へ貫通出来ず、覗き込んでも何も見えない。


 これだけじゃ足りないらしい。一工夫が必要だね。


 もう一度、今度は柄を握ったままの右手から魔力を移す。一度目を段階的にやってるからか簡単に出来た。また二点分の魔力を込めて、刀身を膨張させる。このままぶつけたのでは一度目と同じ。何か手を加えなきゃね。


 それじゃ今度は……集束、と言うか圧縮出来ないかな? 魔力が固体化してるようだけど、別にこれ明確に物質なわけじゃないはずなんだよね、『属性』剣なんだから。


 そんなイメージで魔力操作を使い、ぎゅっと押し固めるように働きかける。


『ほう……! 見事に縮んだではないか!』


 結構集中力が要求される。風船を押し潰そうとして、外に逃がさないよう表面全体に力をかけてるような……。上手くやらないと、風船の中の空気みたいに魔力が逃げようとするんだ。考え方が悪いのかな? それなら押し固めるのではなく、集めて留める?


 そうすると難度が上がった。けどこれだと逃げないね。表面どころじゃなく、内側まで全体に干渉しなきゃならない。代わりに逃げようとせずに留まってくれる。少しずつでも進めていれば必ず完成する、パズルみたいな感じだ。こっちの方が今は向いてるね。のんびり進められる。このまま続けよっと。




 そしてしばらくの時が流れてようやく完成した剣は、短剣程の刃渡りになっていた。圧縮に圧縮を重ねられた刀身は閃光のように輝いて網膜を焼きそうな程だ。


 これをさっき斬り裂いた傷の奥に突き刺そう。


 しっかり柄を握って狙いを定める。そして一息に突き立てた。その瞬間、嫌な予感がして思い切り横へ飛び退く。背中側から光を感じると思ったのも束の間、轟音が響き渡って衝撃が僕の身体を貫いた。吹き飛んで床に叩き付けられる。転がる事で何とか力を逃がして身を守った。


 一瞬気を失いかけながらも何とか持ち堪え、朦朧とする中で煙に隠れた向こう側へと目を凝らす。


 僕の手から離れて転がる剣の光が照らしたものは、抉られ砕けた壁の姿。思わず立ち上がり、駆け寄って結果を確認する。


 完全に破壊して道を作るには至らなかった。けれど大きく削る事は出来た。このやり方なら掘り進める。


 通路を埋めたというのは仮定の域を出ていない。でも看破は今も僕の意識をここに向けさせている。ここには何かがある。その何かには、このやり方を続けていれば必ず辿り着けるはずだ。







 そうして幾度かの爆破を経て大きな穴が開くまでには、然程の時を要しなかった。


 大剣状態での突き、短剣状態での爆破。その繰り返しで、大広間から外に出る事が叶った。生命力と魔力量の残りは少ない。自動回復を待ちながら、ゆっくり進んで行こう。


 外に出る事を、青空の下に出る事を願って、一歩を踏み出す。


 目指すは西。トリシアと言う土地だ。




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  名前 ラン

  種族 ハーフエルフ

  性別 男性

  階級  二


  筋力  六

  敏捷 一三

  魔力 一五


 魔導器 属性剣

  魔術 魔力操作


  技術 看破     軽業


  恩寵 旧神ナルラファリア


  ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一

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