表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クリソプレーズの瞳 ~ルービンシュタイン公爵夫人は懺悔して夫と娘を愛したい!  作者: 星野 満


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/241

69. 仮面舞踏会と突然の大嵐

2025/5/8

※ ※ ※ ※



3人が楽しんだ秋の仮面舞踏会の幕が閉じた。


時計の針は既に深夜0時を過ぎている。

エリザベスたちも2部が終わって、直ぐに自家用馬車で帰る予定だったがアクシデントが起こった。



悪天候である──。

夜の深夜近く、王都周辺に大きな雨雲が立ち込めたと思った途端、突然の大粒の雨が降り出し、ピカッと鋭い閃光が炸裂した雷が落ちた。


それ以来ずっと止むこともなく、暴風雨となっている状態だ。



王都の中心部に位置するパール宮殿周辺も、いやおうなく横殴りの雨と強い風で、まさに荒れ狂った狂気のような有り様であった。



ちょうど、仮面舞踏会から帰宅する招待客たちの時間帯と重なって、彼等に大きな影響を及ぼした。

王都の歓楽街の酒場や宿屋もこの雨では、客足が遠のくだろうと早々に看板を閉じた。


既に街道には人っ子一人見当たらなかった。


もう人や馬が立っていられる状態ではないのだ。



それでも、無理やり帰宅しようとした何人かの招待客の馬車が、強風にあおられて横転してしまった。



中に乗っていた従者や招待客たち、そして馬までも大怪我したと通報があり、警察や消防署からパール宮殿の仮面舞踏会の主催者に、強制的に客を宿泊させるよう運びとなった。



9月の王都ならば、台風の季節だとわかるが、10月半ば過ぎの台風は季節はずれであった。




幸い宮殿にはオペラやバレエを地方から見に来る来客や、王侯貴族の為の宿泊部屋がたくさんあった。


エリザベスたちも、3人だけのバストイレ付の個室を依頼した。


彼女等の依頼はすぐに通った。

招待客のステータスで、主催者は部屋のグレードを割り振っていったからだ。

グレースとエリザベスは公爵夫人なので、最上階の王族が泊まる部屋を宛がわれた。



幸運なことに、道化師の仮装をしたライナス王は嵐が来る寸前に、無事に王宮へたどり着く事が出来た。




※ ※


パール宮殿5階の大きな外付けのバルコニーがある豪奢な部屋。


王族用の特注の天蓋ベッドがある。

悠々4人が一緒に寝れる余裕があるくらい、大きいベッドだ。

壁には有名な音楽家の彫刻や、踊り子の絵画が飾られており、全ての調度品が一級品であった。




窓から浮かない顔のエリザベスが、どしゃぶりの景色を眺めていた。


『外は野獣のように荒れ狂ってて怖いくらい、来た時はまだうっすらと夕焼けも見えたのに、おかしな天候だわね』


真っ白い長袖のパジャマ姿のエリザベスが呟いた。


着ている者は全てパール宮殿の宿泊部屋のものである。



──きっとサマンサはおろおろと心配しているだろう。



『まったくたね、ほんの2,3時間前までは、星と月が見え隠れしてた空が暗雲になるとは予想もしなかった。あ、また雷の音が聞こえた、おお恐っ!』


グレースが雷の音で両耳を両手でふさいだ。

男っぽくても雷は苦手らしい。



『でもお2人のおかげで、こんなに素敵な部屋に泊まることができて、とても幸福ですわ、私一人だったらきっと2階の狭い部屋だったにちがいませんもの』


ティンカ嬢が、大きな光沢が美しい枕を抱えながら、夢見心地でいった。



ティンカ―ベル嬢こと、本名はテレサ・リーズン 18歳。


一応男爵令嬢だが、家系は領地がないため、家族はそれぞれ王都の高位貴族の屋敷で従者として働いている。


テレサ嬢も、王都にある伯爵貴族の屋敷に従事しているという。

父親がお金にだらしのない人で、家族は苦労しているとのことだった。


そのせいなのか結婚願望はないそうだ。



今回、仮面舞踏会の為に貯金して、わざわざ休みもとって参加したそうな。



なので2人が公爵夫人と知り、すっかり仰天してしまった。


『それはないよ。だって曲がりなりにもテレサ嬢は貴族関係の招待客だし、パール宮殿に残念な部屋はないはずだよ──まあ平民たちはスタンダードの大部屋に通されたけどね、これだけの人数で泊めてくれるだけありがたいよ』


と、グレースは仮面舞踏会の常連らしく詳しかった。



『テレサ嬢なんておこがましいです。どうかテレサと呼んでください。ローズ夫人』


『ちょっと、ローズ夫人なんて虫唾(むしず)が走るからやめてよ、気色悪いよ、シンドバットかグレースでいいからね』


『ええ、さすがにシンドバットは本名を知ったら、言いづらいかも……』


『もう、テレサったら急にかしこまらないでくれよ!』


枕を投げつけるグレース。


『キャッハ、痛いですう!』


なんのかんのと、2人は更に仲良くなっているようだ。



──でも、テレサはシンドバットがローズ公爵夫人(=女)と知って失恋したかもね。


エリザベスは風呂上がりの銀髪を、タオルで乾かしながら思った。


『ねえ、みてくださいよ。このフカフカのベッド!』


テレサはポンポンと跳ねながら、ベッドにダイブする。


よほど美しいゴージャスな部屋に泊まれて嬉しいようだ。


『ねえ、せっかくだからこの際、夜のパール宮殿を探索してみない?』


グレースが七色の瞳を煌めかせながらいう。



『ええ〜、真夜中の廊下とか怖いですよ! それに私は踊り疲れたしもう寝たいですう』


テレサは口を尖らせて断った。



エリザベスも『わたくしも疲れたから、すぐに休むわ』


『なあんだ、つまんないの』


『グレースって本当にタフね、おやすみ』

と云ってるうちに、エリザベスはベッドに入りそのまま眠りに落ちていった。



『早! リズったらもう寝息たててる。雨音や雷が気にならないのかな?』


グレースはテレサに聞いたが、エリザベスの隣のベッドに潜りこんだテレサも、すぐに寝息を立て始めた。



『はぁ、やれやれ、わかったよお2人さん、お休み』

といってグレースもベッドの脇のスタンドの灯りだけを残してベッドに入った。



※ ※



ピカッ、ゴロゴロ──。


ふとエリザベスは大きな雷の音が(うるさ)くて目が覚めた。


ベッドから上体だけ起きて窓を見上げると、まだどしゃぶりの雨がザーザーと、唸りをたてて降っている。


隣りで寝ているテレサとグレースはすやすやと寝息を立てていた。



エリザベスは起こさないように、そおっとベッドから起き上がる。

テーブルにある水差しの水をグラスについで、口をゆすいだ。



その時、ドアの扉が少しだけ開いていることに気が付つく。




──あれ、何かしら? 

グレースがドアを閉め忘れたのか不用心ねぇ。



エリザベスは入口のドアまで歩いていき、閉めようとドアノブに手をかけた



その瞬間だった!


突然得体の知れない大きな黒い手が、エリザベスの口をぐっとふさいで、身体ごと部屋の外へ無理やり押し出された。


エリザベスは咄嗟のことで抵抗できなかった。


『!?』


『しっ、黙って!』



エリザベスを後ろから羽交い締めのように、抱きしめたのは真っ黒いマントを着た大男だった。


上から見下ろす男は黒い仮面をつけて、落雷の闇夜に光るその紫の瞳は、まるで毒々しい悪魔のように煌めいていた。


()()()()()()()()()()()()()()()()()


男は微笑んで、そのままエリザベスを強く抱きしめた。





※ 謎めいた黒マントの男が動き出しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
えっ、えっ!こんなところで急に! リズちゃんどうなっちゃうの??(ToT)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ