61. 娼婦館のロバートとエドワード(2)
※今回も性的なシーンが少しありますので、苦手な方は読み飛ばしてくださいませ。<(_ _)>
※ 2025/5/4修正済み
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王都の一夜が明けた──。
『チュルチュルチュルル………』と満開の桜の木に止まっているメジロが可愛い声でさえずっている。
甘い花の蜜が大好物のメジロには最高の季節だ。
娼婦館のスィート・ルームにも窓があり、朝日が射しこんでいる。
エバ嬢が窓際の赤いカーテンをシャッと開けると、室内の埃が太陽光線の中でキラキラと舞っている
夜は物憂げで気怠く退廃的な雰囲気を纏っていた寝屋も、窓を開けて朝日を浴びればで、普通の部屋となんら変わらない。
『ねえ、ねえったらフレディ様ったらもう起きて!』
『……んん、頭がガンガンする……なにか眩しいな、アレク、もう少しだけ寝かしてくれ……』
エドワードは家で寝てると勘違いしてるのか、二日酔いで頭がとても痛い。
『でも、もう10時過ぎたけど、帰らなくていいのですか?』
『え……10時?』
ようやく目をあけたエドワード。
目の前に突然、見知らぬ黒髪の美女が自分の顔を覗き込んでいる。
『!?』
ギョッとして起きだすエドワード。
そして辺りをきょろきょろと見回す。
──何だ、ここは何処だ?一体何があったんだ?
今いる状況が読めないエドワード。
『ねえ、大丈夫?』
と黒髪の美女は、心配そうな顔でカウチソファーに座っているエドワードに近付き、少し屈み込んで彼の額に手を当てた。
『!?』
美女のあらわな胸が、エドワードの顔にムギュッと押し付けられた。
なんと美女は、ガウンを羽織っているだけで丸裸であった。
『わあああ───!?』
ムギュッとした豊満な乳房の感触に、びっくりしてソファの上から立ち上がるエドワード。
『あ、あ~、あなたは誰ですか?』
『は? 何を言ってるのフレディ様?』
『わたしはフレディではない!エドワードというものだ!』
『え?嘘、ほほほほ、嫌ねぇフレディ様ったら。何を寝ぼけてるの?』
エドワードに近づこうとする。
『わあああ、来ないでくれ!』
『?』
『わ、私は寝ぼけてなぞいない! そもそも君はその⋯⋯誰だ! と、とにかく何でもいいから早く胸を隠してくれ!』
目のやり場に困って後ろを向くエドワード。
娼婦のエバは戸惑っていた。
『なによ、昨日の夜はさんざん私の胸を揉んでたのに……変なの?』
といって、そのままガウンをはらりと脱ぎ着替え始める。
──落ち着け、落ち着くんだエドワード、この状況を整理するんだ。
確か昨日、街へ出て酔いつぶれてその後、どうした?
昨日の記憶を必死で思い出そうとするエドワード。
突然、娼婦館の前で呼び止められたロバート王子の顔を思い出した!!
『ああ! ロバートか!!』
ようやく状況が理解できた!
ロバートはフレディという名で娼婦館に出入りしてるんだな。
『⋯⋯き、君、その着替え終わったかい?』
とロバートは後ろ向きのままエバに声かける
『ええ、もういいわよ』
『!?』
エバは裸ではないが、相変わらず胸元があらわなネグリジェドレスのような姿であった。
エドワードはドギマギしながら
『あの(コホンと咳払いして)君は誤解している。さっきから私を誰かと間違えてるようだ。私はフレディではない、その~、フレディはどこにいったか知ってるかな?』
『は? 何寝ぼけてるの? あなたフレディ様でしょう?』
『いや、だから私はエドワードといって、フレディ様の知り合いに過ぎない』
『うそ、ちょっと待って』
『おいおい!!』
エバは両手でエドワードの顔をつかみ、まじまじと見つめた。
『あら、本当だ、良く似てるけど少しだけ目の形と鼻と口元が違うわ、いつの間にすり替わったの?』
『すり替わったって……?』
──弱ったなあ、私だって、どうしてこうなったのか見当がつかん。
エバは『あなた、一体誰? 私のフレディ様は何処へいったのよ!』
と急にキツイ態度に豹変した。
凄いエキゾチックな美女ではあるが、怒ると物凄く怖い表情だ。
狐目が更に釣り上がり、金色の瞳がギラギラと光る。
ちょっとエドワードは苦手なタイプだった。
『わ、私にもよく分からない、昨日泥酔してて⋯⋯多分フレディ様にこの部屋に一緒に連れられて来たのだと思う』
『あ、そういえば……』
エバはようやく思い当たるような顔をした。
その時、部屋の続きドアがバーンと勢いよく開いた!
『あははは、あ~面白かったぞ、エバ、ようやく俺がわかったか!!』
と本物のフレディ(ロバート)が出てきた。
『フレディ様!』
『ロバート殿……あ、いやフレディ様……』
別室から入ってきたロバート殿下の無言の、王子とバラすな! という怖い顔を見て言い直した。
どうやら、ロバート殿下のいたずらに、まんまと一杯食わされたエドワードとエバであった。




