23. エドワード・サイドの結婚式
※ エドワードから見た結婚式の風景です。
※ 2025/4/28 追加修正済
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風色が秋めいてきた9月の晴れた朝──。
『カーンコーン カーンコーン!』
王都のクリソプレーズ大聖堂教会。
パイプオルガンの重厚な音色が大聖堂内に響き渡る。
エドワード公とエリザベス嬢との婚礼が、今厳かに行われていた。
婚礼には親族並びに王侯貴族の他、両家所有領地の名士等も大勢招待されている。
色とりどりの正装した人々の中で、王室からはメルフィーナ王妃とロバート王太子、その婚約者となった妹のマーガレットも出席している。
結婚式は滞りなく速やかに進行していく。
祭壇向かって中央に司祭、左に新婦のエリザベス、右に新郎のエドワードが佇んでおり、結婚指輪の交換の儀式となった。
クリソプレーズ王国の結婚指輪は、新郎が指輪を用意するしきたりである。
エリザベスのグローブはフィンガーレスタイプなので、エドワードはそのままエリザベスの美しい左手薬指に指輪を着けてあげた。
次にエリザベスがエドワードの指に指輪を着けた。
この結婚指輪はエドワードが自分でデザイン画を描いて、二人の瞳に併せてモチーフにしたものだ。
金リングにエメラルドとサファイアを、小さく菱形にカットして散りばめられてある。
エドワードは宝石商と練りに練って作らせた特注品だった。
新郎エドワードの出で立ちは、白い光沢が見事なシルクのモーニングである。
金髪は普段の髪型である前髪を斜めにおろさずに、オールバックにしていた。
額がすっきりしていると、エドワードの端正な目鼻立ちが更に際立って見える。
ウイングカラーの襟元にはクリソプレーズ王国旗のシンボル、赤と緑と黄金色の縦縞模様のアスコットタイを結んでいる。
上着の袖にも王国旗の縦縞を縁取り、カフスボタンは翠の宝石が眩く輝いている。
新婦のエリザベスは純白色のシルクのウエディングドレス姿だ。
エンパイアラインスタイルで胸下から切替えがあり、ストンとしたシルエットなので、背の高いエリザベスにとても良く似合っていた。
袖が短いパフスリープに白いロングのグローブは、エリザベスの肩や長い腕をきゃしゃに見せていた。
髪は金銀細工の髪飾りで上に結って纏めており、白いロングヴェールは銀糸刺繍をふんだんに施して床まで達していた。
見事な花嫁衣裳を身に着けたエリザベスは、まるで“雪の女王”のように輝いていた。
ブライズメイドの少公女がウットリして、思わず持っていた花束を落としてしまう。
無理もない──。
聖堂内の参列者たちも少女と同じ気持ちで、新郎新婦の一挙手一投足に魅せられていた。
──ああ、この麗しい2人の婚礼姿をそのまま絵画にして飾って置きたいものだ。
と参列者たちは後々まで今日の結婚式を語るくらいであった。
それほど婚礼衣装を身に着けた2人はお似合いだったのだ。
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エドワードはエリザベスの顔にかかるヴェールをゆっくりと持ち上げて誓いの接吻をした。
彼女の柔らかな唇にそっと触れたエドワードは嬉しさにぞくぞくした。
──麗しのリズ! 僕はとうとう君を手に入れたんだね!
ああ、君はなんて美しいんだろう。
雪のベールを被った君は、まるで白雪の女王のようだよ。
きっと雪の女王は、目の前にいるエリザベスのような人だったに違いない。
僕の心持ちは⋯⋯こう何と言えばいいのか、ああ、思いつかん!
分かっている、どだい無理なのだ──。
とうていこの世の限られた言葉などで、この薔薇色に満ちた己の歓喜を、簡単に伝えられやしない。
さっきから恐ろしいくらい、僕の心臓は高鳴り続けているのだから⋯⋯。
ああ、それでも僕は──リズ、君に何かを伝えなければならない!
そうでないと僕の心臓は君への愛で潰されてしまうから──。
※
エドワードは上気した表情で、エリザベスの真珠のイアリングの耳元で熱く囁いた。
『エリザベス、このまま僕は死んでもいい⋯⋯』
『⋯⋯⋯⋯』
エリザベスはエドワードの言葉に満足したのか、緑の瞳を少しだけ細めた。
そのまま口角を高くあげて、令息殺しと言われているリズ・スマイルを見せた。
『あら、花嫁になったばかりだというのに、貴方様がお亡くなりになったら困りますわ、だって黒服ばかり着なければならない寡婦なんてわたくしゴメンですもの……』
エドワードは顔中、如何ともし難い満面の笑みになった。




