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クリソプレーズの瞳 ~ルービンシュタイン公爵夫人は懺悔して夫と娘を愛したい!  作者: 星野 満
第7章 エリザベスは緑の女神

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195. ロットバルトの過去(1)

※ ロットバルトが自分の出生を語る回です。

※ 2025/7/6 修正済

◇ ◇ ◇ ◇




リズ、僕の生い立ちの話を少し聞いて欲しい。


僕の母の名はカトリーヌ・クロームという。

ガーネット王国でも由緒ある名家の侯爵令嬢だった。

漆黒の髪と黒曜石の瞳。白磁の肌、そして赤い唇。

そう、アドリア姉さまがいうには母の顔立ちと僕はそっくり()()()()()()


らしいといったのは、僕は母の記憶が殆どないんだ。

なにせ母は、僕が3歳の時に病いで亡くなったからね。

僕の中で母親のことは全てアドリア姉さまや、今の父(義理の)ライアン・パイロープ公爵から聞いた話ばかりさ。


僕の母、カトリーヌはとても若くして王宮に入ったんだ。

主に王族たちのダンスの講師としてね。まだその時母は17歳になったばかりだって。


デビュタントしたばかりの令嬢が、ダンス講師とは驚きだろう?

そんな若い令嬢が、王族のダンスの講師って何故だろうと思ったよ。


確かに母のダンスは他の貴婦人より、飛び抜けて上手だったらしい。

だがそれだけではない。

彼女の父親、時の()()()()()()()()()()()()だったんだ。


クローム侯爵はとても狡猾(こうかつ)で野心のある人でね。

代々宰相や大臣のクローム家の栄華の為に、娘のカトリーヌを当時国王の王子たち3人兄弟の1人と結婚させたかったんだ。


特に次期国王になる確率の高い王子とね。


当時のガーネット王国は世襲君主制だけど、長男が次の国王という決まりではなかった。


現国王の独断で決めるやり方だった。


父王が息子たちを何年も見て、1番、王国の為になる王子を世継ぎにするという制度をとっていたんだ。


国王の息子たちは、長男のピエール、次男のベルモンド、三男のライアン(今の僕の義父)の3人の王子。王女は2人。長女のカルラ様と末娘のアドリア姉さまだ。


アドリア姉さまは、当時まだ7歳だった。

その時姉さまは、子供ながら僕の母親のカトリーヌに一瞬で『魅了』されたといったよ。


美しい容姿と透き通った美しい声。

教養ある話し方。

そしていつも真紅色のドレスを着て踊る姿は、真紅(クリムソン)の羽根を持つ、ガーネット王国伝説のアゲハ蝶のように美しかったそうだ。


そうそうアドリア姉さまが、赤のドレスを好んで着るのは母の影響なんだって。


僕にしてみれば、ガーネットの“赤いルビー”といわれたアドリア姉さま以上に美しい貴婦人は、母国にはいないと思ってるけど。


アドリア姉さまは僕によく言った。


「お前の母親は私よりも、ずっと美しかったわ。私なんて比ではなかった。カトリーヌに魅了された殿方は王宮には巨万(ごまん)といたの」って真顔(まがお)でいうから、母はよほど魅力があったのだろう。


そんなカトリーヌだから3人の王子もすぐに彼女の虜になった。

特に次男のベルモンド王子の、母への執着ぶりは凄かった。

父親の国王に積極的に懇願(こんがん)して、とんとん拍子に婚約に至ったんだ。


だが、長男のピエール(現国王)も、カトリーヌをどうしても諦めきれなかった。


3男のライアン(義理父)も彼女に夢中にはなったが、ライアン叔父は少し変わり者でね。

若い頃から物事を俯瞰的(ふかんてき)に見る人だったんだ。


彼がいうには、どうやら母は『魅了』という『魔力』があったのではないかと解釈しているんだ。


だってどんな美女だろうが、若い王宮の貴公子が全員たった1人の令嬢に“骨抜き”にされるのは、さすがにおかしいと思ったんだって。


もちろん、当時のライアン叔父も母に惹かれてぞっこんだったらしいが、クローム一族の家系は、たまに“魔力の強い子供”が生まれてくることを、ライアン叔父は知識として知っていたんだ。


だから「俺は上の兄たちの戦いに巻き込まれなくて済んだのさ」といっていた。


結局、カトリーヌを(めと)るのは、長男のピエール王子と、次男のベルモンド王子の争いになったんだ。


リズ、君を巡って、もしエドワード公と僕が『決闘』をするといったらどう思う?


現代では信じられない話だが、当時2人は正真正銘の剣で決闘をしたんだよ。


うひょ~、昔の貴公子は凄いというか恐ろしいよね。


1人の女性を巡って真剣勝負の決闘をしちゃうんだからさ。


結局、勝ったのはベルモンド王子だった。

ピエール王子は、劣勢でも最後まで「降参」しなかったそうだ。


このままでは死んでしまうから、父親の国王が無理やり止めたといってた。

ピエールはそうとうな致命傷で決闘後も生死の境を彷徨(さまよ)った。


彼はよほどカトリーヌを妻にしたかったんだろうね。


そして母のカトリーヌは、決闘勝者のベルモンドの妻になったんだ。

その後、直ぐに長男が生まれて2人は幸福に暮らしていた。



だが、ここから暗転の連続となっていく。


現国王が次の国王(王太子)に突然、ピエールを指名したんだ。


理由はベルモンドの獰猛(どうもう)さだった。

いくら好きな女を娶りたいといっても、兄を殺害しそうになったベルモンドの性格を、父王は危ぶんだそうだ。


それを知ったカトリーヌの父親のクローム侯は激怒したんだ。


クローム侯にしてみれば、娘を王妃にしたかったのにピエールを選んだのだからね。

決闘で勝ったベルモンドは、剣の腕前も知識も長男のピエールより上だから、クロームの計画通りだったらしい。


クローム侯は国王に断固抗議をした。

だが国王は譲らず、性格の穏やかなピエールを王太子に任命した。

結局、ベルモンドは王太子になれず王族のアルディン公爵家の領地の当主となった。


ベルモンドは怒り狂った。

自分がガーネット一の美女と結婚して、なおかつ王になる者と思い込んでいたからだ。

それが、カトリーヌを(めと)ったばかりに、国王になれなくて失望したんだ。


そしてベルモンドのやるせない矛先は、妻のカトリーヌに当たる。


毎日、酒を浴びるように飲み、あげくのはてにはカトリーヌに罵詈雑言を吐く。


しまいには「お前のせいで俺は国王になりそこなった、俺を惑わせた憎き魔女め、出ていけ!」

とあんなに溺愛していたカトリーヌを、貶める日々だったとか。


カトリーヌは毎晩、苦しみ哀しみに打ちひしがれたそうだ。

そしてある晩の王宮舞踏会で、王宮のバルコニーから思い余って、飛び降りて死のうとしたらしい。


それを偶然、王太子のピエールが助けたんだ。


わかるかい、リズ。

カトリーヌは初めて、ピエールの優しい愛情に惹かれたんだ。

今までは父親の操り人形だった母カトリーヌが、自分の意思で初めて愛に目覚めたんた。


2人はいつしか恋愛関係になった。


だが、王太子も既に別の令嬢と結婚していた。

世継ぎの御子も生まれていたんだ。


お互いの立場ではあってはならない関係だった。

暫くしてから、カトリーヌのお腹に新たな命が宿っていた。


リズ、もうわかったろう。その子供が、僕だったという訳さ。


ロットバルトの瞳は淋しげに呟いた。










※ ロットバルトの出生を書いていて、アドリア妃は現ピエール国王の末の妹に設定変えました。申し訳ありません

m(__)m

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