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クリソプレーズの瞳 ~ルービンシュタイン公爵夫人は懺悔して夫と娘を愛したい!  作者: 星野 満
第7章 エリザベスは緑の女神

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193. 驚愕するロットバルト(1)

※ 2025/7/5 修正済

◇ ◇ ◇ ◇



「リズ、なぜ僕が()()()()()()()()って分かったと思う?」

ロットバルトの紫の瞳が赤く怪しげに(きら)めいた。


「さあ、なぜかしら」

エリザベスはわざとしらばっくれた。


「さっき、エントランスで出会った時だよ。君はすっぴんでで小麦粉をつけた顔で、おまけに普段と違ってお洒落(おしゃれ)もしてなかったけど、不思議と君の回りの空気が()()()()()()見えたんだよ、とても美しかったな!」


「!?」


エリザベスは思わず、飲んでいた紫蘇(しそ)入りアイスミルクティーを吹きだしそうになった。

「ゴホッ」と咳き込みながら、ロットバルトをじっと見つめて考えた。


ロットバルトはサマンサが傍にいるのに、平然とにこやかな顔で紫蘇茶(しそちゃ)を上品に飲んでいる。


──この男、自分が「爆弾発言」してる自覚がないのかしら。

まあどうでしょう、平然と紫蘇(しそ)茶の味と香りに満足しちゃって!


エリザベスは、内心ムカついていた。



──いいロット、わたくしのオーラが見えるなら、貴方はわたくしを普通の人間じゃないと周りにあえて暴露してるのよ。貴方自覚してる?


エリザベスは、このままだとロットが何をいいだすやら気が気でなかった。



「サマンサ、悪いけど席を外してくれる? お茶のお代わりはわたくしがするから」


「承知致しました。それでは失礼致します」


「ああサマンサ、美味しいお茶淹れてくれてありがとう!」

と軽くウインクするロットバルト。


「は、はい恐れ入ります。パイロープ伯爵様。どうかごゆるりとなさいませ!」

とサマンサはときめいたのか顔を赤らめて、そこそこに出ていった。


ロットバルトと2人になった途端にエリザベスは──


「ちょっとロット、サマンサをからかうのよしてちょうだい、彼女はわたくしの大切な乳母よ!」


「あはは、良かった~いつものリズに戻った! やっぱり君はこうでなくっちゃね!」

ロットバルトが嬉しそうにケラケラ笑う。


エリザベスは、だんだん腹が立ってきた。



──やはり、この男はどうしようもない性悪(しょうわる)だわ。モック爺のいう通り、魔人の末裔に違いない!


「実は、以前の君にも(かす)かに光は視えたんだ。たま~にだけどね。だから僕は君が『緑の女神』だと見破ったのさ」

ロットバルトは、さも自分だけがエリザベスの魔力に、気付いたことを誇らしげに自慢する。


「なら聞くけどわたくしが『緑の女神様』だとすればあなたは何なのよ?」


「え、僕かい? 僕はそうだな。()()()()()()ってところかな?」


ロットバルトは時おり、彼が見せるニヤッと捻くれた笑顔を見せた。


「悪魔の忌み子? 違うでしょう。あなたは()()の末裔なんでしょう?」


「え?」


今度はロットバルトが少し動揺したが、すぐにいつもの冷静さを取り戻してニヤッと笑った。


「ふふん……僕が魔人とはね。まあ遠からず当たってるよ。でも残念ながら、僕は君のような魔力はほとんどない。実は()()()()を使って人の魔力がわかるだけさ」


「あるモノって?」


「ああ、君には見せてもいいな。ほらこれ……見てよ」

と自分の首のペンダントを白シャツから出して見せた。


それは、古びたブロンズ色の細かな鎖のペンダントで曼荼羅模様(まんだらもよう)の花形の中に小さな紫水晶(アメジスト)の宝石がはめ込まれていた。


光りの方角によって紫水晶の色が赤や紫や(あい)色に変化して、とても神秘的なペンダントだった。


「古そうだけど、綺麗なペンダントね。これで人の魔力(気力)の度合いが分かるの?」


「そう、これは僕の乳母が、先祖代々持ってたものを僕にくれたのさ」


「あなたの乳母ってたしか、薬草農園で会ったゲーテルっておばあ様?」


「そう、よく覚えてたね!」


「失礼だけどあの時、すごいお年に見えたから印象深かったわよ」

エリザエスはつい本音を漏らした。


「うん、ゲーテルは100歳近いんだ」


「えっ、100歳?」


「ああ、彼女は()()だからね、あれ? 200歳だったかな」

ロットバルトはおどけた顔をする。


「ロット、いい加減に茶化さないで!」


「ははは、リズはすぐに真に受けるからから、かいがいがあるよ!」


「ロット、ふざけた話は止めましょうよ。わたくしは、あなたに頼みたいことがあったから手紙を書いたのよ。見てこのポーションを!」

と魔力ポーションの小瓶を机に置いた。


「ああ、これか手紙でいってたのは」

ロットバルトは繁々と硝子の小瓶を見つめる。


「ちょっと匂いを嗅いでもいいかい?」


「どうぞ」

ロットバルトは小瓶を手に取って蓋を開けて匂いを嗅いだ。


「ふうん、匂いはジャスミンとミントの花の香りで少しツンとするね」


「そうね、花の生分も入ってるわ。わたくしの知り合いの薬剤師が作ったのよ、ぜひあなたが処方した薬にしてマーガレットに渡して欲しいのよ」


「別に僕はかまわないけど、このポーションが果たしてマーガレット様に効くかな?」


「大丈夫、滋養効果抜群だから、妹とお腹の赤ちゃんにも効くはずよ」


「そうだリズ、手紙にも書いてあったけどマーガレット様が懐妊したって本人から聞いたのかい?」

ロットバルトが驚いた顔でいった。


「ええ、知ってるわ。あなた達が懐妊するように仕向けたのもね」


「ん、なんだか酷い言われ様だな」


ロットバルトは心外だといわんばかりにむくれた表情になった。



「とにかくマリーに飲ませてあげて欲しいの。実際、夫にも飲ませたら効果抜群だったわ」


「へえ、それは凄いな。でもエドワード公爵は健康体だからね。マーガレット様は虚弱体質だ。彼女の出産はとても厳しいと思うよ。医師の僕がいうのもなんだけど、これまで彼女にあらゆる滋養の薬草を試したけど、いずれも効果がなかった。今も血流を良くする薬を与えてるが、一向に良くならない。とても残念だよ」


「ロット、申し訳ないけど、あなたとアドリア様は、マリーの妊娠に協力はしても、その後がお粗末すぎたわ」


エリザベスはバッサリと言った。


「君はそういうけど、そもそもマーガレット様がアドリア姉さまに『世継ぎの御子がどうしても欲しい』と相談しに来たんだ。マーガレット様も王太子妃として何年もできなかったから、いろいろと辛かったんだろう」


「それは、わかるわよ。王妃の圧力とあの浮気性のロバート殿下では、そうとう辛かったでしょう」


「そうだろう? それに僕は医者として最低限のことはしたよ。だが、彼女の体質が妊婦に適さない。それを承知でマーガレット嬢は産む決心をしたんだ。彼女の気持ちは誰にも止められないさ」


「そこまでしてもマリーは御子を産みたかったのね」


「そうだね、だがマーガレット様は死産する可能性はとても高いよ」


エリザベスはじっとロットバルトの顔を見つめた。

彼女の緑色の瞳が燃えるようにギラリと光った。


「どうしたんだリズ……」


「だからあなたは()()()をマリーに内緒で飲ませろとわたくしをそそのかしたのね」


「!?」


ロットバルトの顔色が一瞬曇った。


「どうロット、図星かしら?」


「い、いや、僕にはそんな気持ちはないよ……」


「いいえ、あなたになくても、アドリア様には有るんでしょう。わたくしを(おとし)める為にね」


「リズ、君は……どうして……」


内心、ロットバルトは驚きを隠せなかった。


なぜなら、これからロットバルトはエリザベスに堕胎薬の話をもちかける矢先だったからだ。




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