18. 取り巻き令嬢のいじめ
2025/4/26 修正済
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エリザベスの暗雲は更に続く──。
彼女の取り巻きの高位貴族令嬢たちが、男爵令嬢1人を取り囲んだ光景に、たまたま王子とエドワードがでくわした。
『あなたね、確かこの前の茶会と同じドレスじゃなかったかしら』
『あの……』
『流石に男爵家でもそんな恥しらずではないわよねぇ』
『……もう一着あるのですが、今朝、弟がスープをこぼしてしまって着れなかったのですわ』
男爵令嬢はオドオドしながら声を震わせた。
『おっほほほほ!』
どっと大笑いする令嬢たち。
『あらまあ、おかわいそうに。2着しかドレスがないなんて、そんなお家で良く王室主催の茶会に来れますわね』
勝ち取ったような顔になる意地悪そうな令嬢。
他の取巻きたちも雀の様に連動していく。
『それにそのドレス流行遅れではなくて?』
『お母様のお古じゃないのかしら?』
『まさか〜ありえませんわ』
『お可哀そうに、おほほほ〜』
多勢に無勢で、身分の低い男爵令嬢をネチネチといじめているようだ。
『あ〜コホン!』
と、エドワードがわざとらしく大きく咳払いをした。
『ロバート殿下とエドワード様!』
さすがに彼女たちはロバート王子たちに気付いたのか、いじわる令嬢たちは、扇で顔を隠して『ごめんあそばせ』といってそそくさと退場した。
男爵令嬢は泣きはらした眼をしていた。
『お嬢様〜!』
すぐさま彼女の侍女だろうか、男爵令嬢に寄り添って慰めている……。
『またエリザベス嬢の取り巻き連中か……困ったものだ』
『ですが殿下、エリザベス嬢はあの輪の中には、いませんでしたよ』
エドワードがエリザベスを庇う。
『ふん、エドワード……お前は、エリザベス嬢には甘いからな、あいつらはいつも、エリザベスに群がっている取り巻き連中だよ、きっと裏で彼女らを操っているのさ!』
『お言葉ですが、エリザベス嬢はそんな陰湿ではないです。いじめるなら堂々と人前で派手にやるでしょう』
『あはは、エドワードそれは褒めてるとはいえん。そうだな、確かにエリザベス嬢はストレートにいじめるな。まあ俺にはどうでもいいことだが……』
──ふぅ、どうやらロバートは、何をしてもエリザベスがお嫌いなようだ。
エドワードは王子が彼女を毛嫌いしているのを内心、複雑だった。
『とにかく、俺はエリザベスを好かん、あいつが傲慢だから、取り巻き組も高慢女になるんだ。いくら地位が高くても、エリザベスは“緑の女神”とかちやほやされすぎだよ。美貌でも、もう少し謙虚な女でないとな。あれでは王妃はつとまらん!』
と苦々しげにいう。
『……しかしエリザベス嬢はたいそう聡明ですし、王女の風格は他のご令嬢と比較したらダントツですよ』
『エドワード、さっきからエリザベス嬢を庇ってばかりだな? なんだ、お前もエリザベスに惚れているのか?』
『え、何をおっしゃるのですか、殿下………エリザベス嬢は殿下に夢中ではないですか!』
エドワードは、王子の言葉に不意をつかれて真っ赤になって狼狽える。
『ははは、まあいい。俺は次期王太子になる身だ──美貌だけでは判断せんよ。妃選びは慎重にしないとな。まあ21歳の戴冠式までには、まだ時間はある。今すぐ慌てて探すこともあるまい──』
『それもそうですが、殿下。差し出がましいようですが、エリザベス嬢は、私にはいつも殿下の事ばかり聞いて来るのです。こちらが切なくなるほどに殿下をお慕いしているように思えます』
『へえ〜、お前にまで俺のことをあの令嬢が聞くとはな』
ロバートの蒼い瞳がギラリと妖しく光った。
『面白い、実に面白い。そこまで俺に惚れているとはな……わははは、そりゃあいい!』
突然大声で笑い出す。ロバートは何かを勝ち取ったように嘲笑した。
『ロバート殿下?』
エドワードはロバートの不遜な笑いに悪意を感じた。
『エドワード、俺は決してあの女には騙されんぞ!(小声になって)昔は見た目でコロッと騙されたがな……』
『え、今なんて?』
エドワードが聞き返した。
『いや、なんでもない。早く会議へ行こう。遅れてしまうではないか』
と、王子はそのまま早足に廊下を足早に歩いていく。
その後を遅れまいと、王子の後を追うエドワードだった。




