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クリソプレーズの瞳 ~ルービンシュタイン公爵夫人は懺悔して夫と娘を愛したい!  作者: 星野 満
第5章 エリザベス罠にはまる

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154. 豹変するロットバルト(1)

※ 2025/6/18 修正済み

※ ※ ※ ※


ロットバルトが訊問室に自ら証人としてやってきた。


入ってきたロットバルトとエリザベスの眼があった。



『ロット、あなた……なぜここへ?』


『ルービンシュタイン公爵夫人、こんにちは』

と黒のシルクハットの帽子を取って一礼するロットバルト。


今までとは全く違う、随分と仰々(ぎょうぎょう)しい対応だった。

彼の着ている服も、茶のジャケットに白いブラウスといつもと違う地味な格好であった。


『ご足労かけますな、パイロープ伯爵。どうかこちらに座ってください』

とマンディ侯爵が自分の隣に席を案内する。


『失礼致します──』

といって、ハンガーに帽子をかけて、椅子に腰かける。


『本日、パイロープ伯爵に同席してもらったのは、本件の証人で来てもらったのです。彼がいうには、貴方が王太子妃の懐妊の際に『妹を堕胎させる場合にはどうすればいいのか』と相談を持ちかけられたと情報提供があったのでお呼びしました、そうでしたよね、パイロープ伯爵』


『はい、そうです。ルービンシュタイン夫人は、医師の僕に王太子妃マーガレット様の身体を案じて堕胎に対する薬草はないのか?と先日、確かに相談を受けました』


『何ですって──?』


突然の、ロットバルトの信じられない言葉を聞いて、エリザベスの表情は固まった。

更にロットバルトは平然とした顔で続ける。


『ルービンシュタイン夫人がいうには、王太子妃様から懐妊を告げられたが、いたくやせ細っていて出産できるお姿には見えなかった。姉としてはとても心配だ、万一の時の為に、堕胎させる薬はないか?と。それで僕は貧しい平民や、娼婦が使う薬草を煎じたものなら知っていると伝えたのです。ですが、まさかその薬を実際に使うとは思いませんでした。彼女は参考がてら知りたいと仰られてたので……その薬は副作用として母子共に、死ぬ場合もある薬です』


『嘘よ、ロット!』

突然、その場から立ち上がるエリザベス。


『あなたよくもそんな嘘をいけしゃあしゃあと平気で言えるわね。つまり何、わたくしがあなたの教えた薬を煎じて作って、マリーに飲ませようとしたっていうの?』


『いえ、僕はそうはいっておりません。ここへ来た理由はマンディ侯爵から()()()()の容疑を尋ねられて、以前、あなた様からマーガレット王太子妃様の為の、堕胎薬について相談されたことはあると申しただけです』


『ロットあなた……信じられないわ……』




──おまけに()()()()ですって? 何て他人行儀ないい方しているのよ!

いつもの様な、捻くれてニヤけながら()()ってわたくしを呼びなさいよ!


エリザベスは、喉元からそれらの言葉が出かかりそうになる、身体が全身からわなわなと震えるほど怒り心頭になった。


『ルービンシュタインン公爵夫人着席しなさい!──まずは冷静に、落ち着くことだ!』

とマンディ侯爵が手をあげて、語尾を強めた。


エリザベスは渋々と着席する。


『いいですか、貴方は容疑者として訊問されているのですぞ。もう少し冷静に受け答えしたほうが身の為ですぞ』


『…………』


『それでですな、先ほどの堕胎薬の件ですが、城の監視役員からあなたと王太子妃の茶会の不信な行動に疑問を持って、我々に調査依頼が来たのです。そして、その茶会時に王太子妃が来ていたドレスのシミと、床のシミの成分を検証したんですよ。そこから『毒』の成分が検出された訳です。正直、『毒』といっても猛毒ではなく健康体の常人なら腹痛くらいで済む軽いものでした──だが妊婦や幼い子供の場合は死に至る可能性の高いものだったのです』

と、眼光するどくマンディ公爵が説明した。


エリザベスは再度、立ち上がった。

『酷いわ、ロット。何にもそんなこと一言だっていわなかったじゃないの、わたくしは、ロットからは母体に支障はないといったから薬を貰って、ティーカップに垂らしたのよ。もし母子共に死ぬ危険性があると知っていたら、最初から飲まそうとはしないわ、あなたは知っててわたくしに毒薬を渡したのね』


『ルービンシュタイン夫人、悪いが僕の名前はロットバルトです。あなたから愛称で呼ばれる筋合いはない』


ぴくりとも表情変えずに、冷静沈着な応対をするロットバルト。


『ロット、いいかげんにして!』


半ば、ヒステリーな程、声を荒げたエリザベス。


『ルービンシュタイン夫人、どうか落ち着きなさい、これ以上騒ぐと、あなたの心証が更に悪くなりますぞ!』


『マンディ侯爵、本当なんです。どうか信じて、彼が嘘をついているんですわ』


『僕はエリザベス夫人には堕胎薬をあげた記憶はありません』

ロットバルトは、相も変わらずに静かに眼を閉じて冷静な返事をした。


『おお、ロット、あなた、どうしちゃったの?──なぜ、そんな嘘をつくの?』


『ルービンシュタイン夫人、いい加減になさい!』


副長官までが、エリザベスを制した。





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