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クリソプレーズの瞳 ~ルービンシュタイン公爵夫人は懺悔して夫と娘を愛したい!  作者: 星野 満
第4章 エリザベスのライバル現る

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126. ロットバルトVSエドワード

※ ※ ※ ※




エドワードの表情は、エリザベスが今まで見たことがないくらい険しかった。


濃い蒼い瞳がギラギラと睨んでおり、サラサラの金髪が風に吹かれて乱れていた。


固い表情を見せると、ロバート王太子とよく似ている。改めて王族特有の顔付きになる。




──旦那様が怒っている。なのにどうしましょう、


怒った顔も惚れ惚れするくらい素敵だわ。


エリザベスは自分の知らない、エドワードの一面を知って胸のときめきを覚えた。



どうしよう、困ったわ。ロットバルトと一緒にいる理由も説明しないとならない。


エドワードに罪悪感を感じたが何よりも、公妾を断る件をマリーに伝えても、了承してくれなかったことを、旦那様にどう説明しようかと迷っていた。



妹のマーガレットとの確執は、根深すぎてエリザベスにはどうする事も出来ないからだ。



『エリザベス、帰宅が遅いから心配して探しにきたんだ。街へ寄るなら寄ると、きちんと屋敷に連絡をしない!──連絡なら王宮の従者にも、簡単に頼めたはずだろう。サマンサもとても心配しているぞ』


『すみません。仰る通りですわ』エリザベスはしゅんとなった。


エドワードのいう通りだ。


マーガレットのことで、それどころではなかったにせよ、屋敷に連絡しなかったのは浅はかだった。



『それにその姿はどうした。なぜ平民の恰好をして眼鏡までしている?』


『あ……いえ、これはですね、わたくしが、広場の屋台の串焼を食べたくて村の娘に変装したんです。ドレスでは街を歩くのは目立し、眼鏡も緑の眼を隠せるから……』



『──屋台の串焼き? 君はそんなに串焼きが食べたかったのか?』


エドワードは大真面目な顔をして尋ねる。



『ええ、まあ。とても美味しいと聞いたので……』


エリザベスは、いい年をして串焼きが食べたいから、変装までした自分が幼稚すぎて、恥ずかしくなってきた。



『わかった、だが連絡をしないのは解せない、本当に皆も私も心配したんだ。ネロとマルコもだ。お前たちが付いていながら、なぜ知らせなかった?』


『あ、旦那様……その……実は……』

ネロとマルコが、突然エドワードに振られて、おろおろしてどう説明していいか困ってしまう。



『待って旦那様、ネロとマルコは何も悪くないわ、わたくしが連絡を怠っただけ。今日は城でいろいろとショックなことがありすぎて忘れていたの。全部、わたくしが悪いの!』


『ショックなこと?──城で何があったんだ?』


『……ここでは言えないわ……』


『わかった、屋敷で聞こう。とにかくもう遅い。一緒に帰ろう──』



『あの~お話し中、大変失礼ですが、エドワード公爵様、少し宜しいでしょうか?』

と、ロットバルトが片手をあげて、エドワードに話しかけた。


『!? お前たちは誰だ!』


エドワードは、エリザベスのとなりにいるロットバルトとアンドレを見る。



──そうか、ロットは変装しているから旦那様は、ロットバルト伯爵だと気が付かないのね。


ならば、このまま大人しく旦那様と帰れば、ロットのことは事なきを得るかもしれない。

エリザベスは内心、ホッと胸を撫で下ろした。



だが次の瞬間──


『申し遅れました~私の名はロットバルト・パイロープです。ガーネット王国からきた留学生です。隣りは、僕の侍従のアンドレと申す者。公爵様とは去年、王様の50周年の生誕祭でお会いしましたね。これで二度目かと存じます』



──わあ、ロットの馬鹿!


何で、真っ正直に挨拶してるのよ!


エリザベスは“あちゃ~”という気持ちで、思わず目を(つぶ)った。



『ロットバルト伯爵だと、君が?』エドワードはビックリした。



『はい、左様です』といって、帽子を脱ぎ色眼鏡と付け髭を外した。


エドワードにお辞儀をして、ニヤリと口角をあげる笑い方をする。



『なるほど、あの時の君か。ふん、覚えてるよ、良~くね、君も変装してたんだな、これは気が付かず失敬した』


ロットバルトと分かった途端に、エドワードの蒼い瞳がバチバチと炎で燃え上がった。



ロットバルトも挨拶をした後に、紫水晶の美しい瞳がめらめらと燃えているように2人はバチバチとなった。


『とんでもないです。それよりもせっかくなので、どうですエドワード公。今夜は大変おめでたいお祭りですし、一緒にお酒でも飲みませんか。僕が(おご)りますよ!』


『ロット、何をいっているの!』


エリザベスは、思わず声をあげた。



『ほお、()()()って、2人はそんな風に呼び合う仲なのか?』


エドワードは、冷ややかにエリザベスを見つめた。



『あ、いえ違うんです……その……』



──しまったと、エリザベスは思った。


エリザベス自身、無意識にロットバルトを()()()と呼んでいたことに気が付いた。


以前、アドリア妃がロットと愛称で呼んでいたせいだろう。



ロットバルトは、エリザベスを見つめてにやっと、口角をあげてひねくれた笑いをした。



『ふうむ、ロットバルト公と酒を……私とがね?』


『ええ、もしよろしければですが、以前錬金術の話に興味あるとかおっしゃってましたしね』


『……良かろう。私も君に直接、訊ねたいことがあったんだ、酒を飲んだ方が話しやすい』


『そうこなくては……では私の行きつけのお店でも参りますか』


『留学生の君に、クィーンズ市街に行きつけの店なんてあるのか?』


『ええ、まあ……こちらに来て、まだ10日くらいですけどね~』

とべロッと舌をだすロットバルト。



『ほお……まあいいだろう。では、マルコとネロ!』


『『はいぃ、旦那様──!』』


突然呼ばれて、びっくとするマルコとネロ。


『お前たちは、来た馬車で先に屋敷へ戻ってよろしい。帰宅したら、エリザベスは、私と一緒に、この御仁たちと酒場に行くと執事のアレクに必ず伝えておけ!』


『はい、かしこまりました。それではエリザベス様失礼致します、今日は大変ご馳走様でした』

とネロ。


『奥様、大変ご馳走様でした、失礼します!』

とマルコもお辞儀をして、2人はそそくさと去って行った。



何やら変な事になってきた、と内心エリザベスは、動揺していた。


旦那様とロットバルトが一緒に酒を飲むなんて、どういう展開よ!



サマーフェスティバルの夜、クィーンズ市街の夜は、まだまだ長く続く。





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