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50話

「いらっしゃいませ」


「如月飛鳥と申します。先ほどダンジョン発生に巻き込まれた方々がホテルに来ていると思うのですが、その中の如月夏希さんの部屋に案内していただけますか?」


「はい、ではお連れの方のお名前を教えていただけますでしょうか?」


「卯月杏奈です」


「承りました。それでは右手のエレベーターから7階の703号室に向かってください。7階が丸々被害に遭われた方々が泊まるフロアとなっております」


「ありがとうございます」


ホテルの受付の人に話をすると、そのまま皆が居る場所を案内してくれた。


恐らく事前に夏希が伝えてくれていたのだと思う。



「インタビューは終わったみたいだね」


受付の人に案内された部屋をノックして出てきた夏希は俺たちの事を見て真っ先にそういった。


「見てたの?」


「直接見ては無いんだけど、記者だなって感じの人が大量に待ち構えていたからね。ホテルに連れていかれないであろう探索者を待っているんじゃないかなって思って」


「そういうこと」


「で、上手く宣伝は出来たのかな?」


「勿論です。これで私たちは一躍時の人になるでしょうね」


「それは凄いね」


「まだまだ上には上が居ますけれど、私たちは強いですからね。時間の問題だったとは思います。それよりも、今後の孤児院はどうしましょうか」


「そうだよねえ。次の家が決まるまでは滞在しても良いってルールらしいけれど、なかなか難しいよね……」


次の家をどうするか問題。ダンジョン発生で家を失った人はしばらくホテル暮らしをした後、補助金を元に新しい家を入手するという流れだ。


前住んでいた家のグレードまでという前提条件はあるものの、全ての費用を補助金によって支給される為、お金のことは一切気にせずすぐに家に移り住むことが可能となっており、基本的には一月以内に移り住める。


だがそれは一般的な家庭が住むための家の場合。孤児院のように巨大な建物や、お金持ちが住んでいるような超巨大な豪邸とかは例外となる。


すぐに移り住めるような中古は当然存在しない上、新築を建てようにも1年くらいの歳月が余裕でかかる。加えてそんな土地が存在するのかという問題すらあるため、長い人だと3年くらい家を用意できなかったなんて話もある。


別にホテル暮らしが悪いわけでは無いので、別に夏希や子供たちが生活に滅茶苦茶困るということは無いのだが、孤児院として大問題なのだ。


その問題とは孤児を受け入れ、育てるために動いている孤児院なのに、新規の子供を受け入れられないこと。ホテルの無料貸し出しはあくまでダンジョン発生の被害者だけであり、新しくやってきた孤児には適用されるわけが無いのである。


だから早急に次の孤児院となる建物を用意しなければならなかった。


「お金に関してはいくらでも用意しますし、国からも相当出るはずでしょうから、この地域で存続することは可能です。ただ、土地の購入からとなると最低でも1年はかかるかと」


しかし、それには時間がかかる。


「最近孤児が増えているから私たちのような孤児院が子供を受け入れられないとなるとかなり大変な状況になるんだよね……」


「近隣の孤児院とかに一時的にでも受け入れを任せたら?」


俺の記憶が確かであれば、ここから少し離れたところに別の孤児院があったはず。


「そうしたいのは山々なんだけど、あそこは私たちの孤児院程広くなかったから。任せられても一年で一人が関の山じゃないかな」


「そっか……」


お金が足りない、人手が足りないという問題であれば俺たちの力でも解決できそうだけれど、場所が足りていないという問題はどうしようもなかった。


「そうですね。後2か月待っていただけるのであれば一時的に場所をお貸しすることは可能です」


何かないかと考えていると、唐突に杏奈さんがそんなことを言った。


「2か月?」


「そう、2か月よ。後2か月で正式なギルドハウスが手に入るのよ」


「ギルドハウス?聞いてないんだけど」


「当然よ。何も話していないもの」


「ええ……」


一応ギルドメンバーだよ?事前に教えてくれないですかね?


「そのギルドハウスが今後のメンバー増員を視野に入れていたのでかなり広いものになっていて、配分をしっかりすれば恐らく30人程度であれば余裕で暮らしていけるかと思われます」


「滅茶苦茶広いね……そんな凄いギルドハウスなんだ」


「将来的に日本、いや世界で最も強い探索者が在籍することになるギルドですから。これでも狭いくらいです」


「言っちゃったよこの人」


確かに杏奈さんの姉である麗奈さんを超えるってことは日本一強い探索者になることだけどさ。


「何を他人事みたいに言っているの。あなたの話よ?」


「杏奈さんじゃないの!?」


話の流れ的に絶対杏奈さんが世界一の探索者になるって話だったでしょ。


「私が目指すのは姉よりも強い探索者であり、姉よりも大きなギルドのマスターになること。世界最強の探索者になることではないわ」


「確かにそうだけどさ……」


姉を超えるってことはほぼほぼ世界一の探索者なんだからそれで良いじゃん。


「まあ、麗奈姉を超える強さに加えて、世界一のギルドのマスターという称号も加味すると世界一の探索者は私になるのだけれど」


「そこは一番なんだ」


「ええ。将来有望な探索者をあなた以外にも見つけてしまったのだから」


「俺以外……?」


「そうよ」


「誰……?」


「すっとぼけなくても分かっているでしょう?隣の部屋だから交渉に行くわよ」


「あまり無茶な交渉はしないでね?二人だから信頼はしているけれど、まだ探索者ですらないんだから」


「分かっています。まっとうで平和的な交渉をしますから」


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