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41.開戦の合図と勝負の行方

 事件からひと月が経ちました。魔術師団にはようやく穏やかな日々が戻ってきています。



 今回の件で、プレヤさんは局内外での評価をグンと上げました。本人はあんまり仕事が好きじゃないし出世欲もないなんてことをおっしゃってますが、彼の人をたぶらかす才能は本物ですから。今後も有効活用をしてほしいところです。



 そしてそして、わたくしの愛しい婚約者様、ハルト様の昇進もめでたく決定いたしました!



 元々、わたくしとの婚約が彼の昇進の条件ということになっておりましたが、今回の人事は完全に実力。なるべくしてなったものですので! わたくしはとっても嬉しいです!



 辞令を受け取ったその夜、わたくしたちは屋敷でささやかなお祝いをしました。


 本当はプレヤさんやハルト様の部下になる魔術師たちを呼んで盛大にパーティーを、なんてことを企画していたんですが、二人きりのほうがいいというハルト様の希望を優先した形です。



「元々昇進にさして興味はなかったのだが」



 ハルト様はつぶやきつつ、わたくしの髪をそっと撫でます。



「これからはクラルテが一緒だから」



 穏やかな微笑み。おまけに最高の殺し文句までいただいてしまいました! 



(ああ、好きだなぁ)



 本当に、ハルト様のことが大好きだなぁ。

 わたくしは胸がじんわりと温かくなります。



「そうですよ。これから先なにがあろうと、わたくしはハルト様と一緒にいます。たとえばハルト様が無職無一文になったとしても、全力でハルト様を愛し続けますし、二人でいれば幸せです」



 ……あっ、これってなんだか結婚式の誓いの言葉みたいですね。ちらりとハルト様を見上げれば、照れくさそうに頬を染めつつ、わたくしの手をギュッと握りました。



「クラルテ」



 わたくしの名前を呼ぶ声が、穏やかに細められた瞳が、彼も同じ気持ちだって教えてくれます。



「ハルト様、好きです! 大好き!」



 本当に。好きすぎて怖いぐらい。


 こんなふうに愛を叫ぶのはもう何度目のことでしょう? 

 だけど、何度口にしても想いは色褪せないどころか、日に日に大きくなっていくわけで。これから先の人生、何百回、何千回と口にしていきたい所存なのです。だって、自分の中に留めておいたら爆発しちゃいそうなんですもの。


 それに、ハルト様はわたくしがどれだけ好きって伝えても、きちんと受け止めてくれますしね!



「……本当に、クラルテには敵わない。多分俺は、一生負け続けるんだろうな」


「ええ? 本当ですか? わたくしのほうこそ、いっつもハルト様に負けてばかりで悔しいなって思ってましたのに!」



 実際のところ、わたくしが勝っていたのは最初のほうだけ。以降はハルト様に押されっぱなしです。


 毎朝毎晩、彼の優しさに、甘い言葉に翻弄されて、どんどん『好き』が育っていく。それがあまりにも嬉しくて、幸せで。『あーー、今日も負けてしまったな』なんて笑いながら眠りにつく。そんな現在が、未来があるなんて、はじめてこの家に来たときのわたくしは想像も出来ませんでしたから。



「いや、俺の負けだよ。こんなに夢中に……好きにさせられて、自分じゃもうどうしようもない。……本当にどうしてくれるんだ?」



 ハルト様はそう言っていたずらっぽく笑います。

 ああ、ほら。やっぱり負けてるのはわたくしのほう。けれど、こんなふうに言っていただけるのがあまりにも嬉しいから。……今日だけは勝ちを譲ってもらおうかな。



「ではでは、責任をとって、ハルト様を一生幸せにさせていただきますね!」



 高らかにそう宣言をすれば、ハルト様はほんのりと目を見開き破顔しました。



「ハハッ……クラルテはカッコいいな」



 それは一方的にはじまったはずのわたくしの恋。

 押して、押して、押しまくって、いつか成就したらいいなぁなんて夢を見ていたわたくしの恋が、今こうして叶おうとしています。


 これから先もわたくしは全力でハルト様への愛を叫び続けますし、あわよくば彼に勝ちたいなぁなんて思います。だって、そしたらきっと、ハルト様は永遠にわたくしと一緒にいてくれるでしょう? ハルト様をもっともっと好きにさせたい。夢中にさせたい。……そう思うのが乙女心ってやつですから!



「なあ、クラルテ。やっぱり負けっぱなしじゃ悔しいから……俺がどれだけクラルテを愛しているか、今から伝えてもいい?」



 ハルト様がわたくしに口づけ、熱っぽく見下ろします。

 部屋にはわたくしたち二人だけ。



 見つめ合い、どちらともなく交わす口づけ――いつからか、それがわたくしたちの開戦の合図になっていたみたいです。


 身体がきしむほどに抱きしめられて、たくさん愛情を囁かれて……ダメです。すでにキャパオーバー。

 わたくしは思わず両手を上げます。



「やっぱり、ハルト様には敵いません!」



 開戦早々敗北宣言をするわたくしに、ハルト様は声を上げて笑うのでした。


 本作はこれにて完結しました。

 もしもこの作品を気に入っていただけた方は、ブクマやいいね!、広告下の評価【★★★★★】や感想をいただけると、今後の創作活動の励みになります。


 改めまして、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

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