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勝利のBGM

「くそ……、なんだというのだ……」


 第九王子は王子である。


 そのため、一人で略奪された花嫁を追跡なんてしたら、後続から援護の騎士なりなんなりがやってきて、救助支援をするのは当然のことだ。

 爆発攻撃をくらい墜落した第九王子であったが、幸いにして密閉された空間での爆発でないことや、H2(水素)の量がそれほど多くなかったこと、なにより死亡判定がHP制であったことから死を免れていた。


 そして死にさえしなければこの世界では回復魔法などという異世界チートなシステムがある。精神的にはともかく、体力的にはすぐに回復することができるのだ。


「あの女……。ふざけやがって……、俺を辱めるために、最初から狙っていたのか? ちきしょう!!」


 当然のことながら、第九王子は怒っている。


 この後、どう報復してやろうかと複数の案を練らないといけない。


 シーナは金づるだ。なんとかして引っ張り戻さなければ。


 そうなると、まずはアメジスト王国に圧力を掛けるところからだろうか。

 人でだめなら国から叩けばよいのだ。

 犯罪者の引き渡しであれば、嫌も応もないだろう。


 そんなとき、急に周囲が騒がしくなる。


 ここは砦だ。敵襲などには常に警戒している。


(ばかな――、シーナが報復に舞い戻ってきたのか?)


 あれだけ全力で逃げていたのにどうして舞い戻って――


 などと考えていると、その騒がしくなった理由を第九王子は察した。

 彼の≪危険感知≫スキルに反応があったからだ。


 第九王子はベランダにでて空を見上げる。


 そこには1柱の魔王の姿があった。


 世界を埋め尽くすかのような敵HP、そしてBOSSであることを示す、大きく赤いDENGERの文字。それが画面一杯に表示されている。


 ヤツはいったい何者なのか?


システム:『≪激情之魔王たる魔王≫ジャック・ザ・ハートが現れました(攻撃アクティブ表示)』


 そのウィンドウメッセージに第九王子は震えた。


「お前は――、なぜそんなところにいるのだ――」


「ふははは。我は激情之魔王たる魔王ジャック・ザ・ハートさまである!」


 言わなくてもウィンドウメッセージには表示されているが、魔王ジャックは中二として言わざるを得ないようである。


 なぜか、その声は砦にいる者のすべてが聞こえていた。


 ≪威圧≫スキル。そのスキル補助によりその声を砦のすみずみまで届かしているのだ。


「お前ら、俺の攻撃をシーナとかいうちんけな錬金術士(シレー)のせいにしようとか言っているんだとなぁ――」


「は? 違わないだろうが――」


 その通りである。

 だが、なぜか魔王ジャックは不貞腐れたように返す。


「あぁん? あの時、皆殺しにしたのが良くなかったのか、あぁん? ならば今度は威力だけ試してやろう、最大威力でな――」


 魔王ジャックはなにか魔法を唱えるようだ。


 ここで魔王に対して戦闘行為を行うこともできるだろうが、しかしその距離は5,000mは離れているだろうか。

 とても、魔法攻撃が届くような距離ではない。


「さあ逃げたければ逃げるが良い。憐れな子羊たち! 逃げたくないのであれば、その身に刻め! 我が最終奥義を――」



システム『スキル:熱核爆裂弾(ニュークリアバレット)が詠唱されています。』


 第九王子はそのメッセージに多く目を見開く。


システム『このスキルは空対地地域(マップ)破壊系強制イベント扱いです。』



システム『すみやかに対抗手段を講じてください』



「馬鹿なぁぁ! 熱核爆裂弾(ニュークリアバレット)だと――」


 それは、かつて魔王ジャックが勇者キリッカートを殺害したのに使用されたとされる、広域破壊呪文である。


「くそっ。俺様がどれだけのお金を掛けてこの砦を修復したと思っているんだ――」


「王子! すぐに退避を!」


「ちくしょー」


 退避しなければ死しか存在しない。


 なにしろあれは勇者すら殺したといわれる破壊魔術である。

 そのあの勇者ですら屠った技に、一体どう対抗すればよいというのだ。


 一介の闇炎士である第九王子には逃げるしか手段は存在しなかった。


システム『繰り返します。』


システム『速やかに退避してください』


システム『この地域の生きとし生けるものすべてが死滅します。』


 危険感知のスキルによって、その砦全周囲に▼のマークが広がっていくのが第九王子には見えた。


 その▼のマークは攻撃範囲を示すアイコンだ。


 ウィンドウシステムが使えるのはこの場所では第九王子だけであり、人的被害を出さないためには第九王子が率先してその▼マークの外に兵士たちを逃がす必要がある。


 魔王は目撃者を増やすために初めから逃がす気まんまんであったし、最終奥義(ラストワード)である熱核爆裂弾(ニュークリアバレット)の呪文の詠唱はそれなりに長い。


 第九王子たちが全員退避したあと、満足そうな顔で魔王ジャックは魔術を完成させた。




「いまここに我が正義(ジャスティス)を執行する!


 喰らえ、流派:闇炎系の最終奥義にして最凶の一撃!

 世界を破壊するチェレンコフの光!


 熱↑核↑Love(ラブ)Love(ラブ)爆裂弾!!」



システム『5秒前:イベントアニメーションが発動します。』


システム『4秒前:イベントアニメーションが発動します。』


システム『3秒前:イベントアニメーションが発動します。』




システム『2秒前:イベントアニメーションが発動します。』





システム『1秒前:イベントアニメーションが発動します。』



 砦に光が到達する。


システム『イベントが発動します。DESTROY!』



 その放たれる攻撃速度は秒速3.0x10^8メートル。いわゆる光速だ。



 砦は完全に更地になる。

 その様子に、魔王ジャックは満足そうなドヤ顔を浮かべた。




「(ふふふ。勝った。やはり俺こそが最強――)」


 魔王ジャックは、狂ったように笑い続けた――

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