『見逃した悪意は、必ず戻ってくる』(ブラック・まなパ)
みなさま、こんばんは……ブラック・まなパです。
(★ω★)<仕事で削られた今日に、”とある方ヘのテーマで”優しい物語は浮かびませんでした。
なので、優しくない話(若いときの実体験をちょっと交えて)を書いてみます。
誰かを救う物語ではありません。
おそらく読後感もよくないでしょう。
救済も、光もなく──真っ黒です。
ただひとつ、私が信じていることは、『見逃した悪意は、消えたりしない』のです。
──この物語は、”その帰り道”を書いたものです。
──四月の朝、電車はすでに混んでいた。
私は吊り革を握りながら、スマートフォンの画面を眺めていた。
目の端で、女子高生がひとり、男に囲まれているのが見えた。
囲む、というほどでもない。
ただ──距離が近い。
揺れる電車の中、肩が触れても、男は退かない。
少女は小さく身を引いた。
気のせいかもしれない。
私はそう思った。
──いや、そう思うことにした。
電車は揺れる。
誰も何も言わない。
男は笑っている。
少女は俯いたまま。
──次の駅で私は降りた。
背中に、何かが刺さるような感覚があったが、振り返らなかった。
その日の夜。
会社のグループチャットに動画が流れてきた。
『これやばくない?』
そんな言葉が付いた動画。
開いた瞬間、心臓が止まった。
朝の電車。
あの少女。
あの男。
盗撮のような角度で、少女の身体をなぞる視線。
周囲の沈黙。
そして――私が映っていた。
真正面に。
はっきりと。
無表情でスマホを見ている自分の顔が。
「周りの大人もグルなんじゃね?」
「これだから日本は」
「助けないとか終わってる」
コメント欄は炎上していた。
動画は拡散され、切り抜かれ、私の顔だけが拡大された。
まとめサイトに転載され、SNSで晒され──翌朝には会社にも連絡が入った。
「これは、──君だよね?」
上司が私に問う。
否定はできなかった。
私は何もしていない。
──あの日、少女は駅員に保護されたらしい。
男は警察に連れていかれた。
けれど私は。
私はただ、見ていただけだ。
見て、判断しなかった。
動かなかった。
声をかけなかった。
(関わりたくなかった)
それだけだ。
上司は言った。
「会社としては、倫理的に問題視せざるを得ない」
──私は異動になった。
事実上の左遷。
事態を知った母から電話が来た。
『あんた、どうして助けなかったの?』
答えられなかった。
震える手で携帯の電源を切った。
夜、布団の中で思う。
あの時、ほんの一言。
「大丈夫ですか?」
それだけで、未来は変わったのだろうか。
──いや、変わったはずだ。
少女の人生も。
男の運命も。
そして、私の今日も。
見逃した悪意は、誰かの人生を壊すだけではない。
巡り巡って、自分のもとへ戻ってくる。
それは罰というより、”因果の回収”だ。
──電車の揺れが、今も体に残っている。
(次に同じ光景を見たら、私は――)
その問いだけが、眠れない夜に何度も襲ってくる。
……時に人は、悪人よりも傍観者に厳しい。
声を上げなかった日。
笑って流した瞬間。
関わりたくないと思った一秒。
それらは小さく見えて、消して消え去ったりしない。
この話に救いが無いのは、現実にも起こり得ることだと想うから──?
ひとつの悪意は、毒のように、広がっていくのかも知れません。
疲れた日に、ブラック・まなパが書いた、ひどい物語でした。
読んでくださって、ありがとうございました。m(__)m<今日は早く寝ますw




