月光世界(影) 2
前回のあらすじ!
アタシ、影の月光世界に迷い込む!
そこでレヴィさんというものすんごい美人さんと出会う!
いつの間にか魔獣に囲まれて大ピンチ!死にたくないよぉ!
どどどどどどどどどどどどどどーしよぉぉぉぉぉ!?!?!?
何故か本来の姿に戻れないし、ルイさんから貰った腕輪も未だ使いこなせてないのにぃぃィ!!
「あああああああののののの………レレレレレレヴィしゃん……おちおちおおおおおちちちち落ち着いててててててて…!!!!」
「……私よりもあなたの方が落ち着いてない気がするよ?」
「はい!それはもうッ!!ムッチャ怖いですッッッ!!! ていうか、なんで叫んじゃったんですか!? もう終わりですって!詰みました!お疲れ様でした!!はいッッッ!!!」
「あちゃー……青黒髪ちゃんは怖がりさんなのかぁ……ウ~ン……。
……うん、自分で蒔いた種だし、このぐらいなら……」
「?」
ガタガタと震えるアタシの前に、盾になるようにして立つレヴィさん。
…まあ、全方位から囲まれているので、何処にいようが同じかもですが、それでもその時は彼女がとても頼もしく思えた。
「青黒髪ちゃん」
私の方へ少し気をそらしながら変な名前を……って、これもしかしてアタシの事でしょうか?
「あの…その呼び方って…」
「うん? ああ…さっき聞きそびれちゃったから、髪色的にそう呼んじゃったっ♪」
少し申し訳無さそうにハニかむレヴィさん。…可愛い。
じゃなかった!
「あっ!えっと、アタシ、マノって言います!」
「マノちゃん! カワイイ名前だねっ!」
「え、いや、そんな……デヘヘ…」
「マノちゃん、一回しか言わないから聞いて。
私がこの世界にいるのは、とある封印の管理をニルプスの王から任されているから」
「封印?」
そんな事、ルイさんは一度も……。
「あ、あの……」
「あの魔獣たちはね、この世界に封印されている悪魔の最後の足掻きみたいなものなの」
「最後の足掻き……?」
「うん。
その悪魔から指示された魔獣達は、この世界から脱出するために出口を探していて、その脱出するカギが、この世界で封印の管理を任されている私の命だって事に気づいちゃったみたいなの」
「レヴィさんの命が……カギ?」
「うん。
分かりやすく言うと、私の心音が鳴り続ける限りはこの世界から自由に出入りできないって事なんだけど……」
知らなかった……月光世界の裏側でそんな出来事が起きていたなんて……。
「もしかして……信じてもらえない……?」
「えっ!? あ、えっと……」
「これでも私、今までに嘘ついた事なんて二回しか無いんだけど……」
「あ、いえ、信じます!」
「うん。 なら、今から、私のとっておきを見せちゃうね」
「……とっておき?」
レヴィさんが前方に向け、手を重ねる。
「聖奥解放」
瞬間、彼女が宿していた魔力が可視化され、体全体から掌へと集中する。
「……!」
「驚いた?」
「……あ、はい……」
唖然とするアタシを尻目に、レヴィさんは集めた魔力を水と光に変換させていく。
「マノちゃん、目を閉じて!」
「っ! ッ〜〜!!」
その言葉で即座に目を閉じる。
「オーシャイン・シュトローム!」
放たれる激しい水流。
それは光の魔力と交差し、螺旋を描きながら魔獣達へと着弾する。
「がギャガァァァァ!?」
聖奥を放った方向にいた魔獣は、光で浄化された魔獣もいれば、水の圧力で吹き飛ばされる魔獣もいた。
それ以外の魔獣達も光の魔力で目が眩み、アタシ達の事を認識していない。
「さ、逃げよ!」
「へ? あ、はい!」
聖奥により開かれた逃げ道から駆け出していく。
「すごい技ですね! さっきの」
「ふふっ。でしょ?」
「でも、なんで浄化されて消える魔物とそうじゃないのがいたんでしょう……」
「光で浄化されたのは下位の魔獣、浄化されずに水圧で吹き飛ばされたのは上位の魔獣。
光だけの聖奥で上位の魔獣を追い払えなくて、結局逃げ道が作れなかったじゃ、笑えないからね」
「なるほど……だから、二種類の魔力を合わせたんですね!」
「そういうことっ! さ、もう少しで聖域に着くよ」
「聖域……?
…………あ」
レヴィさんの後を追った先に、虹色の光に包まれる建物を発見する。
「もしかして、あれが…?」
「うん。 ニルプスの王様が作り出した聖域。
あそこなら魔獣が入ってくることは無いだろうし、寝床や食べ物も表側の月光世界から転送されてくるんだ」
「みたらし団子はありますかね!?」
「う〜ん……どうだろう……。
みたらし団子って日本の食べ物だし、中世ヨーロッパの時代で止まっている月光世界にあるかなぁ…」
「あぅ……残念です……」




