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罪に願いを 新世界の先駆者  作者: 綾司木あや寧
三章 森奏世界編
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森奏世界編 エピローグ

「それはそれは……大変でしたね、アッくん」

「ああ。 あの勾玉が無かったら、神なのに世界の崩壊なんていう理由で死んでたな」

「ふふ……大丈夫ですよ〜。 そうなったら私が、アッくんを転生させてあげます。

 私から逃げられないよう、生まれつき四肢のない状態で……」

「……怖っ」


 赤陽世界、天照城のステラの寝室。

 ボク、アルハシャンは、ここでステラとそういう事をしてました(まる)


 あんな事を言わなければ……。


『一日、好きなだけ使って良い』


 あれを言った瞬間、その言葉に反応した勾玉によって、俺、由利、ファウヌスの三人は天照城へと転移していた。


「こんなに気持ちよくなったのはカグヤを身籠った時以来です……」

「…………」

「……アッくん?」

「ステラ、お前、わざと最初の呼びかけを無視しただろ」

「……はて?」

「……」


 わざとらしい反応からして、こいつやっぱり聞こえてたな……。


「まさかとは思うが、俺が何でもする的な事を言うのを期待してたんじゃないだろうな?」

「ナンノコトデショーワカリマセーン」

「下手くそだなっ! そんな理由で無視すんなよ!」

「だって、ギイムに現れた支配者を倒してから数日間は私の治療ばっかりして、エッチな事してくれなかったじゃないですか!」

「怪我人に淫らなことするとか異常だろ……。 欲求不満とかってレベルじゃねーぞ、おい」

「それは……そうかもですけど……」


 布団の中に顔の下半分を隠すステラ。


「怪我してる時にまでこんな事を期待してるとか……筋金入りの淫乱女神だな」

「淫乱じゃないです!」


 ガバッ、と起き上がると、掛け布団を壁へ放り投げる。


「淫乱じゃないって言うんならそれはそれで良いけどさ……」

「っ?」


 自分に指を差された事を不思議そうに反応するステラ。


「パジャマでもなんでもいいから服ぐらい着ろ」

「どやあ…!」


 寝そべる俺の前には全裸で仁王立ちをする女神がいる。

 誇らしげに「どやあ…!」を声に出しているこの女神様には羞恥心という概念は無いのだろうか。


「それにしても……」


 なんだかんだで近くに落ちていた衣服を着るステラ。

 ……あ、俺も着よっと。


「そのアスモデウスちゃんは、とても良い子ですね」

「良い子?」

「はい。 ファウさんから聞いたんですけど、再構築された森奏世界は前回と何ら変わりなかったそうですよ?」

「ふーん……」

「あ、何ら変わりないというのは、世界への被害や悪魔に殺されたから再構築後も生き返らないといった現象が起きなかったという意味ですからね?」

「知ってるよ。

 多分、アスモデウスはそういう性質もあったから……かもな」

「性質?」

「あの悪魔は、自らに敬意を払っている相手を邪険にはしないんだよ。

 もしかしたら、森奏世界の人間は、アスモデウスの事を神かそれに準ずる者としていたから、処分の対象外としていたんだろうよ」

「へぇ〜……そうなんですねぇ〜……」

「知らなかったのか?」

「はい。 私、日本神話の神なので〜」

「……それもそうか」

「ちなみに、その性質って、やっぱり造りだしたトキちゃん本人が付与したものなんですか?」

「ああ。 強さだけじゃなく、相手の思いを受け入れる心も持っていてほしいから……ってな」

「トキちゃんらしいですね〜」

「そうだなー」


 着替えを済ませた俺とステラは、他のみんなが集まっている客間へと向かった。


 コンコンッ……。


 客間の扉をノックする。


「山……」


 っ……! これは、アレか!?

 扉の向こうから、ルイが山と言った。 ならば、俺が言う言葉一つ!


「川……」

「…………」

「…………」


 何も反応がない。


「あのー……か、川って言ったんですけど……」

「………………」

「……………………ステラ、俺、嫌われてるのかな?ぴえん」

「嫌われてるとは思いますけど、今は森奏世界での話を聞きたいだろうから、そんな事で無視はしないんじゃないですか?」

「嫌われてるとこ否定しないのかよ!? あと、話聞きたいなら、合言葉を言わせようとするのおかしくね!?

 どう考えても山なら返しは川だろうが!!」

「………………あ! 分かっちゃいました」

「え、マジ!?」

「はい〜。 私がやっても良いですか?」

「ヨシッ、任せた」


 コンコンッ。


 ステラが扉をノックする。


「山……」

「寺……」

「……」


 やっぱり反応無s…


「よし、入れ」

「何でだよ!!」


 客間に入り、開口一番ルイに文句を言う。


「山といえば寺だろ、常識的に考えて」

「どんな常識だよ……」

「それより、アスモデウスを討伐したというのは本当か?」

「え? ああ……」


 言おうとした瞬間、部屋の角で項垂れるマノの姿が目に入り、言葉が詰まる。


「……ああ、倒したよ」

「っ…………」


 今、一瞬、マノの息が洩れた。


「……そうか、よくやった」

「まあ、倒したというか……」

「?」


 俺はアスモデウスを近代世界へ転生させた事とその理由を話した。


「はぁぁぁぁぁ!?!? 何やってるんだ!?」


 鬼の形相を怒号を上げるルイ。

 責められる中、チラッとマノの方へと視線を送ると、どことなく嬉しそうにしている……ように見えた。


「どこを見てるんだッ!!」

「しょ…しょんなに怒らなくてもぉ〜……」

「なにが、しょんなにだ! 貴様のやった事は天界規律違反なんだぞ!? クロノスが許しても、他の老いぼれが許すわけ……」

「だから、一回、天上世界に戻るって……。

 ってか、アスモデウスたち大罪の悪魔だって、元は天使なんだぞ? それを汚いモノみたいに言うのはなんかイヤだー」

「……愚か者め」

「クロノスにも言われた」

「だろうな。 たかが悪魔一匹のために自分が苦しむような事、普通はしないからな」

「サーセン」

「だが……」


 ルイが重い腰を上げ、俺に背中を向ける。


「そんな悪魔一匹を救っただけで因縁をつける私もどうかしている」

「っ…………」

「……? なんだ?」

「あ、いや……」


 驚いた。

 神としての正義を振りかざすタイプのルイが、こんなにも丸くなっていたなんて。


 横にいたステラがルイの方へと向かい、顔を覗き込む。


「あ、オーちゃん顔が膨らんでますよ〜」

「う、うるさいっ! こんな偽善者のような言葉は慣れてないんだ!!」

「ツンデレですか〜?うりうり〜」

「つんでれじゃない! ほっぺを突っつくな!」


 じゃれつく二人。 ……あれ?


「そういえば、由利とファウヌスはどこだ? 姿が見当たらないけど……」

「その二人なら隣の来客用の寝室で寝ている」

「あ、そっかぁ……え? まさか、NTR…」

「ちげーよ」

「あ、なーんだ、良かったぁ」

「それで……?」

「それでって?」

「……マノ、説明してやれ」

「あ……はい……」


 俺たちの話を黙って聞いていたマノ。

 さっきからやけに暗い雰囲気だったけど、、、


「あのですね……その……」

「……?」

「次は……水明世界に行きませんか?」

「……うん、それは、別に良いけどさ……。

 急にどうしたんだよ? お前、この件には関わりたくなさそうだったのに」

「実は……。

 アルハさんがいない時、次元の歪みから光と影が反転した月光世界に飛ばされちゃって……。

 そこで出会った大罪の悪魔が、水明世界を怠惰の悪魔が滅ぼしかけているって話を聞いたんです」


 怠惰の悪魔……ベルフェゴルか。


「分かった。 じゃあ、すぐに向かう準備をするからちょっと待っててくれ」

「!……。 はい!」

「その前に……」


 マノとの会話に割って入るルイ。


「マノ、君は身分証明証は持っているのか?」

「……え?」


 身分証明証……あ。


「そういやそうだな……。 あの世界って……」

「ああ。 月光、赤陽、森奏、紫闇と異なり、水明世界では身分を証明できる物が無いと、半年間は自警団に身柄を拘束されてしまう」

「俺は持ってるけど、立場的にマノは……」

「持って……ないです……」


 その場でへたり込み、意気消沈するマノ。


「なら、向かうとしてもアルハ一人だな」

「持ってる」

「え?」


 志遠の言葉で会話が止まる。


「…………」

「……持ってる」

「……え、来てくれんの?」

「ああ」

「あのー……マノとかは来れないの分かってる?」

「ああ」

「俺と二人っきりだよ?」

「ああ」

「……じゃあ、ルイ。 俺たち二人が転移できる魔法陣を作っといてくれるか?」

「あ、ああ……了解した。 完成したらテレパシーを送る」

「おう、よろしく〜」


 窓から天照城の外へと飛び出していくルイ。

 城外は平地が多いし、魔法陣を作るのに一時間もかからないだろう。

 てか、何故に窓から出ていく?


「…………」

「ん? うワァオ!?」


 ルイを見送り、部屋へと視線を向けるとスレスレの距離に志遠が立っていた。


「な、なんだよ……」

「…………いや、別に……」


 ……なんか苦手だな、アイツ。


「アドザム」

「はイ!?」

「なんて声出してるんだ」

「だって苦手なんだもん、お前」

「苦手? 何故?」

「ん〜……同属嫌悪?」

「容姿的な意味か」

「いや、容姿というか……(ここ)かにゃあ…?」

「……理解出来ないな。

 俺と君が似通った魂をしていると?」

「何となくだけどな陰と陽的な?」

「なるほど! じゃあ、未代さんは陽でアルハさんは陰ですね!」

「何でだよ! どっからどう見ても俺が陽で未代が陰だろ!」

「それ、性格的な意味でですよね?」

「そうだよ」

「アタシが言ってるのは人間性です」

「あ、そういうことか! ……って、ちょっと待て。 

 それ、俺が人間性で陰湿って言ってないか?」

「さっすがアルハさん! よく気づきましたね」

「急に俺としおんキュンの会話に混ざってきてdisってくるとか……何だコイツぅ〜!?」

「別にいいじゃないですか、アタシだって色々あったんですよ?」

「いろいろ?」

「そうですよ! ね、未代さん」


 マノからの問いに首を縦にコクンと振る未代。


「どーせ、ルイから貰った腕輪が爆発してアフロになったとか、そんなとこだろ?」

「ギャグマンガ時空じゃないですか!

 もっと大変だったんです! ね、未代さん!」


 マノからの問いに首を縦に振る未代。


「へぇー……どんなよ?」

「ふっふっふー! 長くなりますよー?」

「いるんだよ、こういうしょーもない話に限って溜めるやつ」

「ホント、大変だったんですって!! ね!未代さん!」


 マノからの問いに以下略。


「ではお聞きください!

 アタシが迷い込んでしまった影の月光世界での話を……」

森奏世界編はこれと6月26日に森奏世界編のおまけを投稿して終わりとなります。

7月2日からは魔剣使徒編を投稿する予定です。

魔剣使徒編ではマノの視点で物語が展開されます。

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