色欲の悪魔 13
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……ッ―――!」
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…ッ―――!」
コ゛ゥ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛!!!
武器が衝突する。
互いに息を切らしながらも、相手に思考する時間を与えないよう攻撃に徹し続ける。
呼吸を整える時間も無いせいで、若干の目眩もするが、そこに関してはアスモデウスの方が深刻だろう。
だというのに、、、
「はぁ…はぁ…はぁ…フフッ……」
「はぁ……はぁ……なんか、楽しそうだな」
「ええ……。 こんなに楽しい戦いは生まれてはじめて……。
天使だった頃は、天上の神に言われるがまま戦って、悪魔になってからは邪神解放のために力を振るっていた……。
でも、今は違う。
今のワタシは、ワタシがそうしたいという願いから戦っている。
ワタシの願いを快く受け入れてくれた、優しいカミサマと……」
「優しい神様? それって今、戦っているイイ男の事かな?」
「……前言撤回よ、自惚れたカミサマ」
「うぬぼれた……うん!まさしく俺の事だな!」
「そうね、正解ッ――!!」
鍔迫り合いを制し、こちらを押し飛ばすアスモデウス。
「邪奥解放……」
「っ…! 聖奥かい…」
いや、待て。
彼女を打倒するには、一撃必殺としての力を秘めた最奥の技じゃないと決定打にはならないが残りの魔力は少ない……。使えるとしてもあと一回。
それに、俺が使える聖奥の中で最高威力だったナイト・オブ・セイバーは、彼女が放った邪奥、アクスリウルペネトレイルにはまるで歯が立たなかった。
もっと別の…より強い聖奥じゃないと倒せない!だが、、、
ナイト・オブ・セイバー以上に魔力を必要とする聖奥は使えない。
現段階で最高威力を誇る俺の技と同燃費のより強い技。
どうする……。
ヤツの闇よりも広範囲で使える技なんて………。
……いや。
わざわざ範囲を広げて闇を払おうとする必要は無い。 要はあの暗闇に対抗できる技さえあれば……。
「邪奥解放……」
「……!」
空気が張りつめる。
この感じ……使う技はやっぱりアレか!
跳躍するアスモデウス。
彼女が構えた槍には螺旋状に黒い魔力が集まっていく。
「アクスリウル…」
集まっていった黒い魔力が周囲に拡散され、俺と彼女を包み込む。 …退路を断たせたか。
とにかく、さっきの思いついた技なら闇を払えなくとも、闇を切り開く事は出来る…!はず……。
「聖奥解放…」
騎士の化身を召喚する。
(っ! また、ナイトオブセイバーを使うつもりなの?
でも、残念。
その技じゃ、ワタシの技には……)
「ペネトレイルッッ!!!」
穿たれる漆黒の邪奥。
真っ黒な闇を再び俺を飲み込み、体を蝕んでいく。
(これで……)
瞬間。
ギュィィィィィィ!!!
暗闇から耀く一筋の閃光。
光は右往左往しながら、暗闇を引き裂いていく。
「………」
唖然とするアスモデウス。
そして遂に、光の線は闇の外側へと現れる。
「うォォぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」
無我夢中で闇を切り裂き、気付けば八割近くをその剣戟で消し去っていた。
「ふぅ〜……無事、生還っと!」
「どうして……。
騎士の化身は闇に飲み込まれ、ワタシの邪奥で生み出した闇に対抗する方法は無いはずなのに……」
「ああ。
確かに騎士の化身はいない。つーか、いたのは最初の一瞬だけだ」
「最初だけ…?」
「お前の邪奥に飲み込まれる寸前に化身の力をある場所に集中させたんだよ。お前の技みたいにな」
「ある場所……。っ………そういうことね」




