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罪に願いを 新世界の先駆者  作者: 綾司木あや寧
三章 森奏世界編
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色欲の悪魔 9

「んっ………。

 …………? あ、れ?」

「由利、大丈夫か?」

「あ、アルハさん…うん、へいきだよ……。

 っ? でも……あれ…?」


 自分が寸刻前となんら変わらず抱きかかえられている事に疑問を抱く由利。

 邪奥が放たれた方向を目を向けると、アスモデウスとバアルが一驚し、ただこちらを見ているだけで何もしてこない。


「何が……」

「何が。と、言われると、俺がお前の技を完全に無力化しただけだよ」


 アスモデウスがこぼした言葉は至極当然だ。

 邪奥キュバステンペストは俺達の目と鼻の先まで迫っていた。

 それが触れようとした瞬間に消失するとは誰も思わなかっただろう。


「聖奥結界…ですか。 セコいなぁ、アルハさん」

「聖奥結界?」

「はい。 アルハさんの足元を見てください」

「………あれは」

「見えました? あれが聖奥結界です。

 おそらくですけど、あの結界内ではアスモデウス様の力が通じないのでしょうねぇ」


 …人に博識云々言って道化を演じてたくせに、すぐ気付きやがった、こんにゃろめ……。


「っ? どうかしましたか、アルハさん?」

「いや、博識ですねー!」

「おや…私、ディスられちゃってます? ヒドイなぁ…傷付いちゃうなぁ…。ねぇ?アスモデウ……」

「邪奥解放!」


 再三、キュバステンペストを放とうとするアスモデウス。


(あーあ……このままじゃあ勝負あり!って感じですかねぇ)「アスモデウスさまー?」

「うるさい」

「また撃ったとしても、アルハさん達があの結界内にいる間は無効化されちゃいますよぉ? 多分ですけど、あの結界は使用者から離れた異能の力を弱めるのであって、武器などを使った近接戦闘なら、弱体効果もあまり意味は無いかもですっ!」

「……うるさい」


 そう言いながらもキュバステンペストの発動を中断し、どこからか槍を出すアスモデウス。


(んもぅ…アスモデウス様ったら、素直じゃないですねぇ……)「じゃあ、アスモデウ…」

「これ以上口出ししないでもらえるかしら?」

「…………でっ、でも…」

「黙って」

「……………………………しゅん」


 仲、悪っ……。

 俺とマノもあそこまでではなかったのに……。


「アルハさん!」

「っ!」


 他人の揉め事見てやれやれと頭振ってる場合じゃなかった…!

 由利の声で、咄嗟に生成した魔力の剣を生成したことで、アスモデウスの一突きを受け止めれた……。 いや、ヤバっ!?油断してる場合じゃなかったわ……。


「荷物を抱えた状態でよく防げたわね」

「荷物? それって可愛くてカワイイ由利の事か?

 はァッ…ッッ!!」


 力で押し返し、アスモデウスの足が初期化され浅瀬となっている森奏世界の地面につく。


「邪奥解放……」

「ッ…!」


 邪奥をさらに発動しようとするアスモデウス。

 だが、次の攻撃は遠距離型ではなく槍を用いた近接型の邪奥なのは間違いない。 と、すれば、ヤツが使う技は……。


「サランスデイドリウム!」


 跳躍をし、急接近するアスモデウスの矛。

 周囲が白いベールのような幕で覆われ、体に流れる魔力が肉体と分離しかけているのを感じる。

 でも…!


「聖奥解放……」


 この技は天上の雷神から力を借りる事で発動する技。

 それ故にヤツの邪奥による魔法力遮断の効果はほとんど意味が無い!


「キラジウス!!」


 電撃を纏わせた剣を槍の穂先に合わせ、斬り上げて弾き返す。

 斬撃により、彼女の上半身には大きな傷とその傷口から大量の出血をしていた。

 よし、死ぬ前に大罪の力を封印して、それから……。


「邪奥解放っと!」


 えっ…?


 アスモデウスとは異なる場所から聞こえてくるその言葉。

 空だ。 空中にいるあの悪魔が言った。


「ゼブルグリモワウル」


 邪奥の名を呟くと同時に、ブブブブブ……という耳障りな蝿の羽音に近い音が聞こえてくる。

 音の出どころはバアルが大きく開いた口だ。


 いまさら何を……。


「ッ!? グガげぎゃぁァァァぁ!?!?!?!?!?」

「!? なんだッ!?」


 けたたましいほどの断末魔、声の主はキラジウスで吹き飛ばされていたアスモデウスだ。 だが、様子がおかしい、、、


 体の至る部分がボコボコと膨れ上がり、やがてその様相を変えていく。


 ト゛カ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ン゛ッ゛ッ゛ッ゛!!!!!!!!


「っ…………」

「ふふっ…アルハさんも知ってますよねぇ?」

 

 地面に叩きつけられたソレを、美しい姿をしたあの悪魔だとは到底思えなかった。

 横たわるソレは、上半身が面長な三つの首、下半身が巨大なトカゲに似た生物へと変容していた。


「これが、七つの大罪の悪魔本来の姿……」


 嬉しそうに、誇らしげに、両手を自分の前へと突き出し広げながら、この魔獣の名を答えた。


「魔転化ですっ☆」

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