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罪に願いを 新世界の先駆者  作者: 綾司木あや寧
三章 森奏世界編
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色欲の悪魔 7

 由利の体の異常が治まってから数分後。

 彼女は今、俺に抱かれて、すやすやと寝息を立てている。

 ……文脈だけを見ると事案である。


 これからどうっすかな〜。

 ファウヌスはヤバくなったら最終手段で逃げるだろうけど、そうなったら管理神不在で世界崩壊するんだよなぁ……。

 なぁ〜んか、地面の水?も大罪魔法の影響受けてるからか濁ってるし……。 俺は耐性あるし、由利…リリラクブはアスモデウスと一時期結託っぽいから耐性あるんだろうけど、ファウヌスは身動き取れてないだろうなぁ。


 なんせ、支配者の権能を所持してる=神と同格だからファウヌスでも影響を受けるだろうし、現状の由利はリリラクブの気配が一切感じられない。

 ラドジェルブを使い続けた事で支配者としての神性が弱くなりすぎているのかも……。とすると、彼女の意識が覚醒しても、自分の足で歩かせるのは悪手な気がする…。



「っ………くぅ?」


 そんな折、眠たそうに目をこすりながら、小動物みたいな声、、、


「あ……。

 おはよう、あるはさん…」

「おう、おはよ。 寝覚めの気分はどうだ?」

「うん…良い感じ……だよ…」

「そっか。そりゃよかった」

「あ……っ、ごめんね、アルハさん。 わたし、重いよね……」

「気にしなくていいさ。

 それに、今、地面に足をつけると、この濁った水の影響を受けるかもしれないし……」

「濁ったみず……?」


 由利が足元の水を確認する。


「悪魔の魔法がかけられている。

 俺は特別な神様だから、この魔法を中和できるけど、由利やファウヌスが触れると多分ヤバい。

 だから、もう少しだけ我慢して俺に抱かれててくれるか?」

「っ……!」


 ……ん?

 由利が目線を合わせないように、俺の胸に顔をうずめてくる。 てか、なんで顔、赤くして……。

 …あ、やっちまった。今のは語弊があった。


「あ、いやー…そういう意味じゃなくてだな……」

「おや〜?はっけーん!」

「っ!」


 ウザ絡み必至な口調、声からしてアスモデウスではない。が、聞き覚えがある。 この声は……。


「たしか…バアルだったか?」

「おやおや〜!! 名前を覚えててもらえるなんて……バアルちゃん、幸せものですねぇ!」


 頭を掻きながら照れているような仕草をするバアル。 


「ファウヌスはどうした?森奏世界全域に大罪魔法が使われてるみたいだが、まだ倒せてはないだろ?」

「ファウヌス様の処理はアスモデウス様にお願いしてます。

 私は、あの管理神サマより、あなたの方が気になっちゃったのでっ♪」


 気になる…? それはもう俺に対しての恋愛フラグビンビンということでは?


「あ、もちろん、恋心ではなく、あなたが抱いているクロユリちゃんに使った聖奥や黄金の瞳に関してです♪」

「聞かれたとして、殺気出しまくってるやつに教えると思うか?」

「おや?気付いてました? じゃあ、無理ですよねぇ!」


 あはは!と笑うバアル。

 何がおかしいのかは知らないが、ヤツの笑う姿には嘘偽りが無い。 それが余計に不気味さを醸し出す。


「でも、収穫はありました。

 管理神ファウヌスですら受けた直後に放心状態になるほどの力を秘める大罪魔法……。

 それをあなたは物ともせず、平然と大地を踏みしめている……。

 そんな光景をまじまじと目の当たりにしたら、そっちの方が気になっちゃいますよぉ!」

「……あほくさ。 要は物好きだから俺のとこに来たんだろ」

「は~い!正解ですっ!

 じゃ、さっそく……」


 空から見下ろすバアルの瞳がこちらを捉え、銀色に鈍く輝きだす。


「アルハ・アドザムさん。 抱きかかえている女の子を殺しちゃってください」

「…………」

「…………」

「………?」

「………………………お、や?」

「何かしたのか?」

「あれぇぇ〜〜!!? もしかしてもしかしなくても、こちらの異能力が効いてないぃ〜!?」

「異能力……?」

「おおっと…口が滑っちゃいました……。危ないあぶない……。

 んぅっ〜〜……まさか、発動時以外でも神王の瞳を保有しているのなら無力化されてしまうなんて……予想外でしたぁ……」


 コツンっ☆と頭をたたき、一昔前のあざとさを見せびらかし消沈するバアル。 


 こちらの瞳が変色した状態の名称を知っていて、それに対しての対抗策として銀色の瞳を見せてきた……。……!

 だとしたら、あの瞳は…!


「邪神王の瞳……」

「ん…? おや? おやおや〜?

 やっぱりご存じなんですねぇ! さっすがは□□□□□□様っ!!」

「……」


 俺の名前も知っているのか……。


「…おや? 違いましたか?」

「さあ、どうだろうな?」

「ふむふむ……どちらとも答えない…と」


 腕を組み、目を伏せた状態で首を縦に振っている。

 ん…?これはもしかして……。


「おい」

「っ? はい、なんです…」


 目線をこちらに向けるよりも先に鳥の形をした大型の炎の束をバアルめがけて放つ。


 ハ゛ハ゛ハ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ン゛!!!!!


 炎がそこにいたであろうバアルに被弾し、猛々しく燃えている。


「…………チッ」


 炎が消えさってバアルの姿が現れる。

 少しぐらい傷を負っていてもいいだろうに、全くの無傷って……。


「ワァオ!? 神としてあるまじき卑劣な攻撃手段!」

「焼死だったら後始末も楽だと思ったのになぁ……」

「しかも、悪魔よりも悪魔みたいな事言ってる…!?

 ヒドいカミサマですねぇ……。 でもまあ……。

 今の炎、ポイニクスブレイズでしたっけ? アレで未完成品の新支配者が殺られたのは頷けますねっ!」

「未完成品?」

「やだなぁ、アルハさんが倒したラ・イレブの事ですよっ!」

「…………」


 ライレブ……。

 ヤッバい、どうしよ。そのライレブさんの影が薄すぎて覚えてないなんて言えない……。


「ナ、ナンダッテー!」

「おや、これ、ガチで覚えてないパターンですねぇ…。

 じゃあ、この話は置いといて……。

 まずは、感謝ですっ!

 アルハさんがラ・イレブ様…というか久導星明さんを徹底的に追いつめてから逃してくれたおかげで、彼はただの人間ぐらいの力しか残っていません。

 そんな彼を依り代として、とある悪魔がコンタクトを取るでしょう。

 …そう、その悪魔とは……」

「ルシファーだろ、この世界の」

「ピンポーン!正解ですっ! 博識ですねっ♪」

「それが何だっていうんだ、お前らの目的と何の関係が…」

「っ……。ふふっ♪ アルハさんにこれを言ってしまうと、すぐに気づいちゃいそうですけど……ま、面白いからヨシ子さんとしましょう!」


 こちらを見下ろしていたバアルが、そこに足場があるように空中を歩きながら再び口を開く。


「……我らが主人、アザトゥス様の目的はたった一つ……。

 管理神が治める六大世界の撃滅ですよっ♪」

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