表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
罪に願いを 新世界の先駆者  作者: 綾司木あや寧
三章 森奏世界編
71/175

エリシウム 4

 ファウヌスの行方を追うために、森奏世界にある集落の一つへと足を踏み入れた頭が良くて善悪を統べるチョーSUGEEEEEE!!!!!!神だった現在人間の体で世界救おうと必死になっている顔も性格も超絶イケメンな男、アルハ・アドザムと、多分…いや、きっと、おそらく、五分五分の確率でクトゥルフの神アザトゥスが生み出した新たなる神の依代となった少女、黒井由利だったが、、、


「…………」

「…………」


 その集落は壊滅していた。

 外側から見えた青々とした光景が嘘だったかのように、建物も人も、何もかもが黒く塗り潰されている程に焼け焦げていた。


 そこら中に倒れる人間からは腐乱臭が漂い、その殆どが植物や木材で作られている建物は鎮火しきっていない物もある。


「うっ…ぷ…」

「由利っ」


 由利が手で口元を抑える。

 無理もない。 この異臭の中、普通でいられる俺の方が異常だ。

 ……まあ、そうしないと、あの甘い香りに堕ちそうだったし。


「ほい、匂いキツいから、少しでも誤魔化しとけ」

「あ…ありがとう……」


 辛そうな顔をしながら俺からハンカチを受け取り口に当てると、直視出来ない惨状に目を伏せていた。


 ……由利は集落の入口辺りで待たせておこう。

 敵が襲ってきたとしても八尺瓊勾玉が付いた髪留めが身代わりになってくれるだろうし、、、


「由利、ここに長居するのは大変だろうから、外の方で待っててくれ」

「ア、アルハさん…は?」

「俺は生き残ってる人がいないか探す。 それが終わったらすぐに由利の所に行くからさ」

「……うん、わかった」


 少ししょんぼりとしていたが、一緒に歩き回って体調を悪くさせるのも心が痛むので、由利とはここで少し別行動。


 先述にあったようにステラからの借り物である八尺瓊勾玉付き髪留めがあるので問題は無いだろう。

 説明しよう! 八尺瓊勾玉とは、日本神話において三種の神器の一つとされる物であり、その能力として所有者の生命に危機が迫る時、身代わりとなり砕かれるのと同時に所有者を最も安全な場所へと転移させる能力があるのである!

 まあ、この六大世界での能力であって、近代世界での能力とは多少異なってんだけど。


「固まれ…っと」


 今にも崩れそうな建物を重力で制御し、その中を探る。

 屋内には子供の死体が二つと大人の死体が一つ……それと犬の死体が一つか…。

 でも、そのどれからも魂を感じられない。

 いつもなら、昇天し、天上世界へ魂が転移した時にビビっ!と来るのに……。


 死体は、原形を保ちつつも、その表面は等しく真っ黒焦げになっている。

 黒くなっている表面の皮膚をペリペリっと剥がすと、しっかりと血肉は真っ赤な色をしている。


「わーお、レアなお肉が好きな人にはありがたい焼き加減…って生焼けやないかい!」


 なんて、バカなことを呟きながら部屋の中を調べていると、、、


「……ん? これは…」


 白い毛で体を覆われた赤い瞳の動物。

 少しだけ毛が焦げているが、それ以外に目立った外傷は特に無い。


「ウサギか…」


 それ以外は先程見た人や動物を除いて中身まで真っ黒クロスケ。

 全て調べつくしたので兎を抱え、一度、部屋を出る。

 兎は一切の抵抗をせず、おとなしく抱えられている。 どうやら、悪魔が化けていた…!的な事ではないらしい。


「さて、次は……」


 その後、あちらこちらと建物を見て回るも、生きていたのはこのウサギ一匹だけで、それ以外はみんな外身黒焦げ中身真っ赤とかいう状態になっていた。


「……これじゃあファウヌスの居場所云々以前の問題だなぁ」

「あら、ファウヌスを探しているの?」

「っ!」


 独り言で呟きながら溜め息を吐いてると、どこからか不愉快な女の声が聞こえる。


「っ……」


 神王の瞳を開眼させ、周囲を警戒する。

 …気配は一切しない。 隠れているというわけでもないのに、目の前にいるような……。


「…お前か」


 抱えていたウサギに視線をおろす。


「…………」


 ウサギはうんともすんとも言わない。 が、ウサギからは僅かながら洗脳と遠隔操作されているからか黒い魔力の残り香と口端が少しだけ上がっているように見える。


「ファウヌスの居場所を知ってるなら教えてもらおうか、可愛い可愛いウサギちゃん?」

「…………」


 ウサギは何も反応しない。


「やれやれ……自分から正体明かしといてダンマリかよ、色欲の悪魔」

「…!」


 ウサギが僅かに耳をビクつかせる。


「気づかないとでも思ったか?

 由利から出ていた甘い香り……あれはアイツの中に潜んでいる支配者の性質によるものだろう…が、それと合わせて俺はその香りで由利に欲情した。

 俺の考えどおりのモノでアザトゥスが新たな神を造り出したのなら、あの香りは人によっちゃあ多少の不快感はあっても欲情するなんて性質は無い。 んで、このウサギ……。

 悪魔にはウサギを象徴とする悪魔もいるし、そこで候補が絞られる。

 そして、行方不明の森奏世界の管理神ファウヌス。

 管理神ほどの存在が連絡の一つも無くいなくなるという事は、それほどまでにとんでもない脅威が迫ってきている…又は既に何か起きてしまっている可能性が高く、その驚異というのも神の力を持ちながらも他の神が感知しづらい存在……。

 そうなりゃ、クトゥルフの神と結託している七つの大罪の悪魔だってところまで分かる」

「そしてその大罪の中で欲情させる力を持つ悪魔は一体しかいない……。 ふーん…なるほどね」


 目を見開いたままのウサギから不愉快な女の声が聞こえてくる。


「んで、悪魔ちゃんはウサギさんの中にいるのかにゃあ〜?」

「……黒百合の洞窟近くにある泉に来なさい。 そこにファウヌスはいるわ」


 色欲の悪魔はこちらの質問に答えることなく指定の場所に来いと言う。


「えぇ〜!? そんな罠だって分かっちゃうところにトコトコ行っちゃうアルハさんじゃ……って…あれ?」


 なんか……ウサギのお腹辺りが膨らんできているような…?


「あ、言い忘れていたけど、実はそのウサギ、体内に糞を溜め込ませていてね」


 おやおやおや!? なんかヤバいような……!?


「錬成魔法で空気に触れると半径十数kmぐらいを吹っ飛ばす化学兵器に組み替えているから…」


 おいおいおいおい!?確実にヤバいやつですよね!?


「早く離れないと、一緒に来ている支配者の器共々塵になるわよ?」


 カッ!

 裂けはじめた腹部からは自分をウサギの糞だと思いこんでいる一般爆弾が外気に触れたからか閃光を放っている。


うん。 これは非常にマズい…!


「ッ…!!」


 ウサギを由利がいる入口とは正反対の方へ勢いよく投げる。 ここで何かに当たれば、その衝撃で爆発しかねないと判断し、由利がいる入口とは正反対の方向で、障害物に触れることがない一直線へと勢いよく投げる。


よし、次は…。


 魔力で生成した剣で腕を軽く切り、自身の血液を体外に出し、この世界における身体強化能力の一つブラッドブーストを発動。

 由利のいる方へと最高速度で飛ぶ。


「………」(アルハさん、まだかなぁ…)

「逃げるぞ」

「…へっ?」


 由利が俺に気付くのも束の間、ブラッドブーストの移動速度で彼女の体に負担がかからないよう、由利の体の周りを守護魔法で包み込み、烈風魔法で邪魔な枝を吹き飛ばしながら真っ直ぐ、自分の動体視力ですら認識出来ないほどの速度でブラッドブーストを使い続ける。

 ここまでで5秒。 ウサギを中心として、爆発の範囲が半径十数kmなら、最低でもあと十kmは離れないと…!


 ゴ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛!!!!


「ぐっ……!」


 少しだけ後方を確認する。 完全に外側に爆弾が放たれた。

 森が、地面が、ウサギの腹の裂け目から見えていたまばゆい閃光に包まれている。

 緑色の景色を白い絵の具で上書きされているような光景は、徐々にその範囲を広め、俺達すら白く塗り替えようと迫ってくる。


 急げ……急げ………急…。


 バ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ン゛


 不意に、鼓膜が破けたような、背中の皮膚が弾けたような感覚がして、ブラッドブーストを使ってる時以上の速さで、自分の意思とは関係無く押し飛ばされて、邪魔になる枝を処理できず傷だらけになりながら泉へと転がり落ちた。


 痛い。 

 痛い痛い痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ。

 背中から流れ出ている血が俺の目の前に見え、半分以上の血を失ったのをそこで察した。

 勘弁してくれ……。 いくら神様でも今は人間の肉体なんだぞ…?

 でも……弱音は言ってられない…。

 このままじゃ、二人揃って溺れ死ぬ……。


「っ………、っ……!」


 最後の力を振り絞って泉から這い上がり、腰をおろす。

 守護魔法を使っていたからか、由利は少し服が汚れる程度で済んだ。 俺はというと、、、

 言うまでもなく瀕死である。

 背中の皮膚は爆発により焼け焦げ、泉に落ちた時に剥がれ落ち、お猿さんよりも真っ赤な部分が多くなっちゃいました、テヘペロ☆ ……なんてな。


「ん…んんぅ〜……?」


 お、由利が気付いたらしい。 でも……もう、意識……が…たも…てな……。


「ん…あ、れ………ッ!?

 ……さん!? アルハさん…!!」


 由利が凄い表情で俺を見ている。

 今にも泣きそうな顔で。

 今にも嗤いそうな顔で。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ