異神の森 6
これまでの「罪に願いを 新世界の先駆者」
一つ、境界の守護者とされる青年、未代志遠と和解したアルハは霧を抜け、彼の隠れ家へと到着。
二つ、マノとの再会早々、胸へ顔をうずめ欲情する。
そして三つ! 頭に剣が刺さっていた!
「いってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?!?」
「騒ぐな、あまり興奮すると出血の量が増えるぞ」
「誰のせい…っ! あたたたたたぁ………」
「神なんだろ? なら、このぐらいじゃ死なないはずだ」
「いや、そらそうだけど! 死にはしないけどクソ痛いからな!?」
「そうか、それは悪かった…なっ!」
アルハの頭から勢いよく剣を引き抜き、剣先に付着した血を払い飛ばす。
「あふンっ!」
力が抜けたような声を出しながらも、出血を防ぐために刺されていた部分を手で塞ぐ。
「お前ェ……覚えてろォ……」
「自分のやった事を棚に上げるとは、ふてぶてしいな神様?」
「スキンシップだし!」
「相手が嫌がってるのによくそう言えたな」
「いやいやいや! マノたんも嬉しかったよn…」
「……」
視線を向けるアルハだったが、そのマノはというと死んだ魚のような目でアルハを見ていた。
「え、なに…その眼差し……何で無言なの…?」
「ふんっ!」
アルハから顔を背けると急ぎ足で歩き、その先にいた志遠へと抱きつく。
「なッ……!?」
「お、おい、マノ……」
「未代さん、どうして一人で行っちゃったんですか!?」
潤んだ瞳で上目使いをし、背中に腕を回すと、これでもかというぐらいに体を密着させている。
「だ、だから、君を危険な目に合わせたくなかったからで……」
「そんなに……そんなにアタシを信用できませんか…?」
「い、いや…そういうわけじゃ……」
「未代……それは嫌味か…?」
「はぁ? おい、お前、何言って……」
「俺がマノたんのおっぱいに顔うずめたら拒絶されてたけど、自分はマノの方からおっぱいくっつけてくれんだぜ!羨ましいだろ〜? っていう嫌味だろ!!!」
「んなわけあるか!」
「いえ、未代さんなら…いいですよ?」
「マノ、その発言はこの状況を悪化させるからやめてくれ……」
「そうかそうか。 つまり、君はそういう奴なのか……」
どこかで聞いたセリフを言うと、おもむろに魔力で剣を生成しだすアルハ。
「おい、待て! そもそも目的はマノとの合流だろ!」
「ぶぅ〜……。 だって……だってぇ〜(泣)」
膝から崩れ落ちるアルハ。
「だってマノたんが、未代のオティンティンじゃなきゃ満足できないって言うんだもん〜!!」
「言ってないですよ!」
「しおんきゅんもコイツの体は俺以外じゃイけなくなったんだぜ。とかマウント取るしぃ〜!」
「言ってない」
「でもいいもんっ! 由利たんは俺の事、愛してくれてるし!(どやあ…!)」
「お前なぁ……」
「由利…?」
「ん? ああ……マノは会ったことが無いんだったな。
アイツの後ろに隠れている子供の事だよ」
「へぇ…子供? ふーん……」
「お? ヤキモチ焼いた?」
「いえ、やっぱりロリコンなんだなぁと思いまして」
「フッ…困るな、マノくん。俺はロリコンじゃない。
ただ、俺を愛した女がロリだっただけだ」
「アタシの中では、アルハさんがあの金色の目で催眠とか洗脳してるんじゃないかと思ってるんですけど」
「俺がそんな事をする男に見えるのか!」
「はい、見えます」
「即答ッ!? ヒンドォ〜い……」
ショボンと落ち込んだアルハに構うことなく、後ろに隠れている由利と顔を合わせようと背後へまわる。
「こんばんわ!」
「…! っ…………」
「あっ……」
しかし、挨拶に驚いたのか由利は近く木の陰へと逃げていってしまう。
「あーあ、やっぱマノの顔が怖いから」
「それはアタシ以上に、この体の持ち主だったミオに失礼なんですけど!?」
「いやいや、やっぱオーラが怖いんだよ。 なんかさ…自分よりも可愛こぶるんじゃねーよ!みたいなオーラを感じるだよな〜」
「そんなオーラ出してないです!」
「え〜? ほんとにござるか〜?」
「あ……あの…っ……」
木の陰に隠れている由利が消え入るような小さい声を発する。
「そ…その……。 ちょっと…ビックリしちゃっただけ…なので……こ、怖いわけ…じゃ、ない…です……。
だ…だから……っ……。
…………。
っ…………。
……ッッーーー〜〜〜!!」(うっ……。 わ、私なんかが……あ…あんな綺麗な人と…会話して…いいのかな……。
き、きっと……調子に乗ってると思われて……嫌われちゃう……)
必死に声を振り絞ろうとするも、不安な感情が込み上がりうまく声を出せないでいると、、、
「大丈夫。マノはそんなやつじゃない」
「っ!」
溜め込んでいたものを悟ったのか、アルハが由利の肩にそっと手を置き、黄金の瞳で見つめる。
「…………」
そんな二人のやり取りを怪しげに窺う志遠。
(まただ……。 また、あの瞳……。
それに手からも光のエネルギーを流して……それをあの少女に送り込んでいるのか?)
「………っ」
数分間アルハの瞳を見続けていた由利は、ゆっくりと瞼を閉じ、深い呼吸をする。
「少しは落ち着いたか?」
「は…はい……」
「ほいっ! じゃ、落ち着いてる今のうちに挨拶しとけ!」
「っ……はい…」
アルハに背中を押され、小さな歩幅で距離をつめていく。
「えっ……えっと……」
「?」
モジモジしながらも、意を決して口を開く。
「……わ、私……黒井…由利……って、でしゅっ!
ッッッ〜〜〜!!」
結果、緊張からおかしな言い回しをした挙げ句に舌を噛んでしまい口元に手を当てがる。
「えっと…あの…「って、です」というのは、黒井由利です。と、黒井由利って言います。が合わさってしまっただけで、変な口調とかそういうわけではなく……!」
痛みと恥ずかしさで涙が滲み出てしまいながらも弁解する。
「…………。
ぷっ…ふふふっ……」
しかし、どういうわけかマノはその説明で少しだけ口元が緩んでいた。
「あ……あぅ……」(や…やっぱり……私…は……)
ぷるぷると震える体を縮こまらせ、ポロポロと涙を流しながら顔を伏せてしまう由利。
「ご……ごめんな…さい……」
「しゃ、謝罪!? というか、どうして泣いてるんでs…あだっ!」
突然の事にマノがあたふたしていると、彼女の頭にポンっと軽いチョップが振り下ろされる。
「お前が笑うからだ」
「笑う……?」
「自分よりもバカそうな奴にバカにされてると思ったんだよ」
「……あっ! なんか、可愛いなって思ったから微笑んだだけですよ!」
「……え?」
その言葉に俯いて隠していた顔を少しだけ覗かせる由利。
「ていうか、誰がバカそうな奴ですかっ!?」
「お前」
なっ…!? ホント失礼ですね…! まあ、それは置いといて……。
えっとですね……話すの苦手そうなのに必死になってるのを見て、なんていうんですかね…う〜ん………そう! 母性みたいな気持ちが溢れてきたんですよ!」
「ぼ、ぼせい…?」
「そうです! 母性です!」
「ええ〜っ!? マノたんの母性要素って、そのFカップのおっぱい以外にあったの〜!?」
「やかましいです! そもそも、万年卑猥神にあーだこーだ言われる覚えはありませんよ!」
「俺のどこが卑猥だって言うんだよ?」
「全てですよ! なんでこの体の事をアナタが知ってるんですか!」
「いや、おっぱいなら服の上からでもカップぐらい分かるだろjk
なあ、未代?」
「えっ、俺に振るのか……」
「そんな事で未代さんを巻き込まないでください!
んもぉー! なんか変な感じになっちゃったじゃないですか! ともかく……」
マノは由利の両肩に手を乗せて視線を合わせる。
「アタシは、由利さんの事をイヤだと思ってないです。 むしろ、可愛い妹が増えたみたいでちょっと嬉しいぐらいです!」
「っ……」
地面に向いていた視線を少し、また少しと上へ向ける。
「っ……!」
その瞳には青みがかった黒髪サイドテールの少女が優しげな表情で、こちらの顔を覗き込もうとする光景が映る。
「やっと…目を合わせてくれましたね!」
「あ……ぅ……。
っッ〜〜ーーー!!!」
「あっ!」
嬉しそうな笑顔の彼女に耐えられなくなったのか、肩に乗せられていた手を払いのけ、再びアルハの後ろへと隠れて彼にしがみつく。
「あらら……またかくれんぼ状態になったか……」
やれやれと苦笑しながらも、ほんの少しの勇気への労いを込め、由利の頭を柔らかく撫でるアルハだった。




