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罪に願いを 新世界の先駆者  作者: 綾司木あや寧
二章 赤陽世界編
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星を明かす罪人 1

 富士山周辺へと移動したアルハは、自身がこの世界にやって来た理由をツクヨミに説明する。


「なるほど、七つの大罪の悪魔ですか……」

「ああ。 クロノスが言うには、ソイツらを操っている親玉が六大世界を掌握だか征服だか絶滅だかをしてがってるらしい」

「それは恐ろしいですね……。 でも、大罪になった悪魔は、いずれも熾天使だった者……。 同じ熾天使かその上である神でなければ従うとは……」

「そうだ、だから、お前達二人とステラには誰が裏で大罪の悪魔に手引きをさせているのか調べてほしいんだ」

「はい、アッくん兄様のためなら何でもします!」

「ん?今何でm…ゲフンゲフン! そうか、なら、早くその傷を治さなきゃだな」


 ん?今何でもするっていったよね?と言いたい気持ちを抑え、ツクヨミとスサノオに向け、手をかざすアルハ。


「ん?」


 その時、開いた右手からグチャア…という嫌な音。 よく見ると右の掌には潰れた虫の死骸がある。


「イヤァァァァァァん!!! もう、なに!? ヤダもう!」

「どうしたんですか、アッくん兄様!?」

「ちょっと見てよぉ! おててに潰れた虫がほら…!」

「うわぁ…蝿、ですかね?」

「えぇ…蝿…? てか、分析するのはえー……なんてね」

「?? はい…? ありがとう、ございます?」

「……あ、いえ、はい……」


 オネエネタもダジャレも一切ツッコまず真面目に返され、逆に申し訳なくなり、おふざけに振り切ってしまったことを後悔する。


「でも、これが蝿だとするなら、俺が火口内部でぶん殴ったベルゼブブは、これで造られた偽物なんだろうな」

「偽物!? あの強さでですか!?」

「あの強さ……ああ! あ、うん! あれでも多分一割ぐらいだと思う!」


 あの強さ…というツクヨミの発言に違和感を覚えたが、あの時は瞬間的に超強化をしていた事を忘れてた。

 右の掌の汚れを拭い、二人に回復魔法を使う。 そんな折、スサノオがこちらに目線を向ける。 


「でも、スゲーよなアニキは!」

「えっ、あ、何が?」

「いやいや、メチャクチャスゲーよ!!!」

「お…おお……」


 唐突にも程がある。 会話の最後を掻い摘んで、それだけで話を完結させないでほしい。


「凄いってのは、ベルゼブブの偽物を殴ったことか?」

「おう! オレとツクヨミが神器使ってもボコボコされたのによぉ、アニキはイッパツだったろ! あの赤い姿にそういう超強ぇ力が秘められてんのか!? すぐに火口から避難したのは使える時間が限られてるからとかか!? つーか、あの全身が赤くなった姿ってブラッドブーストっていうやつじゃねーのか!? 前に姉貴の持ってた古文書に載ってたけど、どうやって覚えたんだよ!?」

「え、いや……あはは……」(コイツ、アホのくせに、こういう事にだけは目敏いな……)

「スサノオ、そんな一気に質問したらアッくん兄様も困るし、回復魔法でちゃんと傷を治せなくなっちゃうよ? ほら!今は黙ってる!」


「うぃーす……」とふて腐れながらも大人しくなると、腕を組み、こちらをジロリと睨むように見つめてくる。

 気が散る……。


「っ……………。

 天照城に戻ったら説明するから、それでいいだろ?」

「っ…! 約束だぜ!アニキ!」


 また、グイグイと近寄り、小指を差し出すスサノオ。 お前は小学生か!


 二人の傷を癒やすと、転移魔法を使い、一瞬で天照城に着く。

 マモンとステラがいる客間へと転移したことで、待ちぼうけの二人への説明もスムーズに済み、その日は各々の部屋で床に就いた。


「アルハさん」

「ん? なんだ、まだ寝てないのか? トイレか?」

「違います! こういうお城は初めてだから眠れないんです」

「こういうって……日本らしい城の事か?」

「はい。 アタシ達が赤陽世界に転移してきた時に見た城下町?は、時代が違う感じがしますし、それほど真新しいというか、西暦2010年代の世界観ではないなぁ…と思って……」


 なぜ、この悪魔は西暦という言葉を知ってたり、現状2010年が真新しい方だと理解しているのかは分からないが、六大世界を見ていたら大抵そう思うだろうな。


「城下町は昭和初期、1930年代ぐらいだからな。 それに対して、この天照城みたいな日本の城は昭和よりもっと昔の建造物だからなぁ」

「じゃあ、脆いんですか?」

「いいや、脆くはないさ。 つーか、脆かったら城の意味無くなるだろ」

「確かに」

「それに、この城にはスサノオが張った対物理結界とツクヨミが張った対魔法結界。 んで、ステラが張った対神様用結界があるから、どれほど科学技術が発展していても、どうする事も出来ないだろうよ」

「へぇ……。 月光の世界もそういう結界があるお城とかがあるんですか?」

「いや、ルイの世界は無いだろうな。 何より最大国家の王様が基本的に慢心してるからな」

「ですね。 その結果、アタシに奪われちゃいましたし」


「ふふーん!」と誇らしげなマモン。 やってる事は褒められることじゃないぞー。


「でも、驚きでした。 力を奪ったはずのルイさんが、どこからともなくアルハさんを連れてきて、聖奥?という技でアタシを瞬殺するとは思わなかったので」

「国王が国王なら、支配しにきた悪魔も悪魔だな。ハハハッ」

「ぐぬぬぅ…!」


 悔しそうに項垂れるマモン。


「つーか、何とも思わないのか?」

「?? 何ともとは?」

「男の俺と布団を横に敷いて寝ることだよ。 男はいつでも野獣になるんだよ……」

「…………」


 ほうでん亭センマイ並みのイケボでそう問いかけると、マモンは言葉に詰まらせながら顔を赤らめていr…


「捏造した地の文を入れないでください! 大体、アタシはアナタの事を異性として見ていませんっ!」

「ファッ!? ウーン……」


 心停止しそうな一言を食らってしまった……。 照れ屋さんなのかな?


「ちゅーかよぉ、何をそんなに怒ってんだ?」

「約束を破った事を怒ってるんです」

「約束? 強欲の力を返すっていうのは、条件付きで返したし……」

「その条件が返してもらってないのも同然だったから怒ってるんです!」

「ワガママだなぁ……。 それに、この世界を離れたら返すって条件だったろ?」

「そんな約束覚えてませーん!」

「うわぁ……友達少なそう!」

「いますぅー!一人ぃー!」

「……そっか」


「……はい?」


 気づいた時にはマモンの頭を撫でていた。

 そうだよな……一人だけでも友達いるのは良いことだよな…(泣)


「何ですか、その哀れみの目は!? 本当に友達いますからね!?」

「うん……うん…! そうだな……」


 あ、ヤバい……歳だ。 目が潤んでいるのが自分でも分かる。

 そんな事を考えながら、ギャーギャー騒ぐマモンを頭を撫でていると、その内静かになっていた。


「ん…?」

「すぅ……すぅ……」


 よく見ると寝ていた。

 立てかけられている時計を見ると、時間は午前0時を指している。


(疲れた、俺も寝るか……)


 そう思い、マモンの頭から手を離そうとした、、、


「アモ…ちゃん……」

「っ!」


 アモちゃん。 不安そうに誰かの名前を呼ぶ。


「行かないで……一人に、しないで……」

「…………」


 ネタにした事を少しだけ後悔しつつ、再びマモンの頭に触れた。


「……ふふ…アモちゃん……」


 どうやら触れているだけで安心するようだ。


(子供かよ……)


 やれやれ…と思いながらも、今の俺の顔はほころんでいた気がする。



 ……時刻は午前四時過ぎ、、、

 世界が陽の光を帯び始め、空の色が黒から蒼に変わりかけていた頃。

 それは、突然降り落ちた。


 ズドォォォォォォォォォォン!!!!!!


 空から飛来したソレは、隕石と呼ぶにはあまりにも目映く、光という概念そのものと思えるほどの輝きを放っていた。

 周囲は町も村も無い平原と近くに大きな湖がある地帯。


 ピキッ……。

 目映い隕石に亀裂が入る。

 僅かな亀裂が出来たかと思えば、その箇所を伝い一直線に亀裂が伸びていく。

 隕石は割られるように二つに分かたれ、その内側からは何かが顔を覗かせていた。


「……………」


 黒髪に黒い目をした東洋人の男。 背丈はアルハと同程度、あどけなさの残る顔立ちから察するに十代後半ぐらいだろう。


「…………ぇ…………ぁ……………」


 全裸の青年は、フラフラとおぼつかない足取りで、隕石で出来たクレーター状の部分から草原へと足を進める。


「…………………せ……………………あ……………」


 虚ろな目で周囲を見回す。


「……………………せ……………………………な………………」


 バキッッッッ!!

 背中から骨が一本飛び出る。


「………せ……………な………」


 バキッッッッ! バキッッッッ!

 背中から骨が今度は二本飛び出る。


「…せ……な………」


 バキッ! バキッ! バキバキバキッッッッッッ!!

 背中から骨が更に五本飛び出る。 計八本の背骨は四対の翼のように伸びている。


「せな………」


「せな」という名を呟く青年は、自分の体を見て、胸元に手を翳す。

 すると、青年は粒子状の魔力を生み出し、体の周りに密着させ、衣服が生成させる。


「待っててくれ、せな。 必ず、君を救ってみせる…!」


 青年は四対の骨を翼のように使い、彼方へと羽ばたいた。

 向かう先にあるのは、この赤陽世界で唯一の城である。

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