神の正体 4
「ガタノゾア?」
「ああ。
旧支配者の王アザトゥスが最果ての世界以外も我が物としようと動き出した時に造りだした神の一柱。 それがガタノゾアだ。 あんなに可愛らしい見た目じゃなかったがな?」
「ち、違うの……?」
「旧支配者の殆どは汚物の塊みたいな姿をしているからな。 マノも知らないんだよな?」
「え……?」
何故、自分に話題が振られたのかと不思議そうな顔をするマノ。
「……アイツ、バアルって名乗ってただろ? なら、悪魔としてパンデモニウムに居た頃、見かけた事は無かったのか?」
「ああ! そういう意図があっての質問だったんですね!
アタシは見たこと無いですね。 レヴィさんはあったみたいですけど……」
「レヴィさん……?」
俺とマノとの会話に出てきた名前に璃空が疑問符を浮かべる。
「嫉妬の悪魔レヴィアタン。 この世界に来る前にマノが遭遇した悪魔で、まんまと逃がしちまった悪魔だ」
「ぐぬぬ……。 ちょっと言い方に悪意がありますよね?」
「でも、レヴィアタンが見知ってるなら、ガタノゾアがパンデモニウムに居た事は確実だろうな」
「話逸らされた……」
「マノちゃん、ショゲないのッ!」
「しょげてません……。
あ、でも、アタシ、パンデモニウムの事は全部知ってますよ?」
何を思っての……いや、このちょっと調子に乗ってるドヤ顔は、それ以外の質問ならどんと来い! と言いたいのだろう。
「ふーん」
「ホントですよ!?」
「うん」
「ぐぬぬぬぬぬ〜〜ッ!! 何なんですかその興味なさげな態度!」
こちらの素っ気無い返答にプリプリと怒りを露わにするマノ。
「いや……別に興味が無いわけじゃ……。
ガタノゾアは闇を操る力があるから、他者の記憶から自分の事を認識できないようにする事も出来るし、石化で思考停止状態にも出来るしで、お前が知らないのもしゃーないと……」
「闇……石化……?」
キョトンとしたアホ面を見せるあたり、能力の詳細を把握してないらしい。
「ガタノゾアの能力だよ。
今、ナトミーの町に充満している黒い霧はアイツの闇の力で生成されたものであり、体の一部なんだよ」
「あの霧が全部、体なんですか!?」
「そ。 だから頭が潰れようが、肉体がミンチになろうが霧を全て消し飛ばさない限り、ガタノゾアは何度でも蘇る」
「っ…………」
「それじゃ、バアルさんは実質不死身……」
勢いは何処へやら。 マノは言葉が出せず、言った俺ですら信じがたい事実を璃空が述べる。
「アドザム、もう一つの能力はなんなんだ?」
闇の能力の詳細を聞き、おののく二人に代わって志遠がガタノゾアが持つもう一つの能力を訊ねてくる。
「石化能力。
名称的には肉体を石にするみたいな感じだけど、思考や神経、水分といった一部分を石にする事もできる。
勿論、人間の水分を石にしたら死ぬし、思考を石にされたら植物状態になる。
由利が言うには、トーマはガタノゾアに触れられていたんだよな?」
「うん……」
「触れた時、ガタノゾアはティアマトが発動していた防御魔法の機能を石化で麻痺させて、その後に記憶を閲覧。 ティアマトの所在地をサタンに報告したんだろうな。
トーマが昏睡状態に陥ったのは、防御魔法の機能麻痺時に受けた石化が原因だろうな」
「だが、トーマは目を覚ました」
「あら、ヤダ……。 アッちゃんと顔の似ているイケメンに名前呼びされちゃったワ……」
両頬に手を当て、恥じらいの表情を浮かべるトーマ。 誰得の絵面なのだろう。
「ティアマトの魂がトーマの肉体に転移した事で石化への耐性がついた……というのが俺の見解だな。 こんなキモくても管理神だし……」
「ちょっとッ! せめてキモかわいいって言いなさいヨッ!」
キモいところは否定しないのか……。
「なんにせよ、ガタノゾアがいる限り俺達の方が不利──」
「それは私が戦いに参加した場合……ですよねっ!」
『「!?』」
何を言うかを予見したように、嬉々とした女の声に背筋が冷えた。 全員の視線は……。
「……ワッツ!? アテクシ!?」
「の、上ですかねっ?」
「?」
声はトーマの頭上からだった。
「全員集合していて安心しましたよぉ!」
浮遊した状態で笑顔を振り撒く女がそこにいた。
「イヤぁぁァァ〜〜ンッッ!!!!」
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