神の正体 2
「ハッ! ここはどこ!フーアムアイ?!」
「て、店長!? 目が覚めたんですね!」
「あら、璃空ちゅわんじゃなァ〜い! 無事だったのねェ……良かったワァ〜……ハッ! そんな事よりもアテクシ、怖いドリームを見ちゃったノ! 聞いてくれル?」
一番怖いのは寝覚めからマシンガントークをかますこのオカマである。
「おい、オカマスター。 お前のティアマトの半身なんだよな?」
「オカマスター? 誰のことかしラ……」
「お前だよオカマ店主!」
「イヤぁ〜〜ンッ!! そんな言い方って無いわよアッちゃ〜ン……」
オヨオヨと泣きべそをかくオカマ店主のトーマ。
「やさしく……やさ〜しく! とーま……って呼んでくれなきゃ、涙がチョチョ切れるワァ……」
なんて面倒な。 本来のティアマトも言葉選びにクセがある女神だったが、オカマがこのクセアリ言語を継承するとウザいだけである。
「……ティアマトの半身なんだよな? トーマ」
ご機嫌を取るためにも名前で訊ねる。
「…………ぽっ」
「ッ――――! 顔を赤くしてないでさっさと言えよ!」
「んもゥ! そんな怒らないノ!
ツンツン」
人差し指でこちらの鼻先を突いてくるトーマ。
「……半身なんだよな?」
「そうヨ〜。 でも、半身だと上半身下半身の半身だと――――」
「なんで急に目を覚ました?」
「あら、無視なのネ……。 急に目を覚ました理由はァ……」
唸らせながら思い出したように手をたたく。
「そうヨ! アテクシ、怖いドリームを見たのォ……」
「怖い夢?」
「ええ! 竜に跨った歳の割にオッパイ大きめの女の子に蹂躙されるドリームなんだけどォ……」
「竜……」
それも大罪の悪魔絡みなら、竜を眷属に従えているサタンの可能性が高いだろう。
「それで?」
「その後はァ……アテクシとぉ〜ってもピンチになって……。 これは危ないわァ……と思ってティアマトの魂をこの体に移したのよォ!」
「……」
「……」
話を聞いていた全員が言葉を失う。
「サラッと凄い事言ったな……」
「あら、そうかしらァ……?」
志遠の言葉に飄々とした態度で返事をするトーマ。
「じゃあ、今の店長はティアマト様そのものって事ですか!?」
「んまぁ、そうなるわネ」
「という事は、神様としての力も……!」
「ごめんなさいネ、マノちゅわん」
「へっ……?」
璃空からの問いかけに肯定したトーマだったが、続くマノの言葉は否定的になる。
「アテクシも使えるかと思って権能を出そうと努力してるんだけどダメみたいなのヨ」
「そ、そうなんですね……知った感じで聞いちゃってすみません……」
「マノちゅわんが謝ることじゃないわヨ。
今回の件に関しては、アテクシが力の扱い方を間違えた結果だし……」
トーマが言うには、知恵と力の振り方を間違えたティアマトは、女性の肉体、幼児の知性、強い力のタイプと男性の肉体、成人並の知性、人並みの力のタイプの二つに分かたれたらしい。
正直、一発であれが出来てたら俺の面目が立たないので、ちょっと安心したのは内緒である。
だが、問題は神の力が発揮できない点だ。 過去三つの世界での件から考えるに……。
「おい、トーマ。 それはつまり……」
「残念だけど、この世界の封印も解かれちゃったワ」
「だよな……」
歯切れが悪そうだったので予想はしていたが、やはりティアマトも封印を解かれたようだ。
「ごめんなさいね、アッちゃん……。 アテクシ……」
「ん? ああ、それは別に気にしてないさ。 仮に全ての封印が解かれても、俺がアザトゥスをまた封印するだけだし」
「アルハさんって自尊心?が高いんだね……」
由利から鋭い言葉を飛んでくる。
「にしし……! あるはしゃんは強いからな!」
「そりゃあ、アッちゃんは創造神アフラ・マズダ・スプリウムだもノ! 自信があって当然じゃなァイ!」
「…………え?」
不意に誰かがこぼす。
「『…………」』
何気なく言ったつもりのトーマの一言で、その場は再び静寂に包まれた。
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