霧夜事変 2
ベルフェゴールと黒い霧を発生させた声の主を追うマノと璃空。
「璃空さん、ベルフェゴールさんの気配は?」
「この先です! 姿こそ見えませんが、そこまで速く動いてないので、距離は着実に近付いているはず……。
マノさん、もう一度さっきの聖奥を使えますか?」
「わっかりました! 聖奥解放、グングニルウィルガニド!」
純白の槍を風の魔法で覆うと、ねじるような回転を加え前方へと穿たれる。
竜巻に近い現象を起こした槍は、進行方向に広がる黒い霧をかき集めると、槍に宿る光の魔力が霧を全て浄化していく。
「あ、いました!」
璃空の指し示した先に、ベルフェゴールともう一名……。
背後しか見えないものの、艶やかな黒髪の女性が共にいる事が窺える。
(あの人はいったい……それに、あの二人の魔力、妙に弱い気が……)「璃空さん、ベルフェゴールさんって一緒にいる人って誰か分かります?」
「……はい。
彼女の名前はバアル。 僕に大罪の悪魔の事と大罪が齎す力を教えてくれた悪魔です」
「バアル……」(聞いたことがない……そんな悪魔、いたっけ?)
追走しながら自分の記憶を呼び起こそうとするもマノの記憶の中にバアルなる悪魔は存在しなかった。
「その……バアルさん?が言ってる大罪が齎す力ってなんなんです?」
「僕も聞いただけなので真偽は不明ですが、大罪の悪魔が持つ権能を奪い、人が手にすれば、その人は万能の願望を叶えられる……と」
「はい〜?! 確かに願いは叶えられますけど、あれは悪魔側が選んだ場合ですよ?」
「そんな……って、どうしてマノさんがそんな事をご存知なんですか?」
「へっ? あ、いや、その……あ! 昔、おとぎ話の本で読んだことがあるなーって……」
「おとぎ話ですか……」
「ですです! それに、仮に悪魔側が選んだとしても、その人は魂を捧げなくちゃいけないから、願いが叶った瞬間に死んじゃうんです。 本当……最悪です……」
「……それで良いんですよ、僕は…………」
「えっ……」
「あ、マノさん!」
「っ! 聖奥解放!」
前方は再び黒い霧が立ち込める地帯へと迫る。
マノは再三、風に包んだ槍を投げ飛ばすが……。
「そんな……!」
その先は二手に分かれ、ベルフェゴール達がどちらへ行ったかを把握するよりも先に姿が消えていた。
慌てて魔力感知を行うマノ。 しかし……、
「っ! 魔力の反応が……四つ!?
いや、違う。 内二つは多分、分身による魔力反応……!」(まさか、さっきから魔力反応が弱かったのは、本人と分身の魔力を勘違いさせて撹乱させるため?)
「…………マノさん、危険かもしれませんが、ここは別々に追った方が……」
「そうですね……。 もし、璃空さんの方が危険な状況になったら、魔力反応を下げたり、逆に一気に高めたりしてください。 すぐに向かいます」
「マノさんも何かあったら教えて下さいね」
「もっちろんです! 死ぬのは怖いので!」
「あはは……。 あ、それと……先程はすみませんでした。
後々、生命魔法で肉体の修復をするつもりだったとはいえ、あんな酷いことを……」
「もうヘッチャラなのでモーマンタイですよ! そういうのは落ち着いてからにしましょ?」
「……はい」
酒場での出来事を和解した二人。
こうして、二人は悪魔の行方を各々追う事となった。
「あはっ☆ ちゃんと分かれてくれましたねぇ……。
ねっ、ベルフェゴール様っ?」
指先を頭部に触れ、一人で会話をする声。
動作から鑑みるに通信魔法を使用しているのだろう。
「ええ、そうね。 じゃ、そっちは任せたわよ、バアル」
もう一方の相手、ベルフェゴールは頭部から指を離す。
(璃空……ようやく、貴方を救える。
今度は貴方が、私やあの人達よりも貴方が幸せにならなくちゃ……)
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