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罪に願いを 新世界の先駆者  作者: 綾司木あや寧
四章 魔剣使徒編
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認識の支配者 6

 コツコツコツ…と暗闇に響く足音。


(道中で地下牢はいくつか見かけましたけど、そこには誰も居なかった。 もしかしてウソだった?

 でも、そんな事でウソをつく理由なんてあるんでしょうか……?)「う〜〜〜ん……」


 地下道を歩き始めて二十分。

 右手には先程拾った白い弓、左手は松明代わりにファボエルを使用している。


(それにしても、この腕輪もかなり使いこなせている気がします。 まさか手の部分だけを武装できちゃうなんて…)


 マノの左手には赤い魔宝石で作り出された篭手が装着されていた。


(これなら、長時間ファボエルを使っていても魔力がリサイクルされるので楽チンです!)


「……オ…………」

「!!」


 マノの歩く音だけが反響していた地下道から聞こえたうめき声。


(この声、もしかして…!)


 駆け足で声のする方へと進むとそこには……。 


「……っ! ガイムさん!」

「………………」


 地下の最深部らしき牢にて、手足を鎖で拘束されガイムを発見する。


「ガイムさん、いま、外しますね!」


 一時的に弓を手放し、右手で鎖を掴んだ瞬間――


「……?!」


 灯りとして常時発動していたファボエルが使えなくなり、反射的に後退する。

 否、使えなくなった訳ではない。


(魔力が、体から抜けていった!?

 そっか、ガイムさんが一切抵抗しないのは、この鎖に魔力を吸収されて……)「ガイムさん、ちょっと荒っぽいけど許してください」


 ダイヤモンドの魔法石に指をかざし、グングニルのレプリカを召喚する。


「ファボエル! …よしっ、じゃ遠慮なく……。

 はッ…! てやっ!」


 自身の魔力を吸収されないようファボエルで鎖の位置を把握し、一撃、一撃を重く振って鎖を断ち切る。


「っ……」

「ガイムさん!」


 拘束が解け、その場に力無く倒れ込むガイムを支える。


(酷い……。 魔力はほとんど吸い尽くされて、体もすごく冷たい……)「待ってくださいね、今、アタシの魔力を――――」


 ザシュ……。


「!?」


 服を突き破るような感覚と、ほんの僅かだが身体に走る痛みに思わずガイムとの距離を取る。


「ガイム、さん…?」

「お前が……イオを……」

「イオさん? 何を言って……」

「絶対に、許さないぞ……レヴィアタン!!」

「!……」(違う…! ガイムさんはアタシに対しての認識を……)

「うぉぉぉぉぉぉ!!!」


 ガイムは足元に散らばる石の柱を得物にマノへと襲いかかる。


「ぐヤァっ!!」

「ぐっ…! ッ――!」


 ブン…と薙ぎ払う音を頼りに、攻撃を往なしてカウンターを図るも、灯りとして発動したファボエルはガイムからの不意打ちを受けた際に中断し、真っ暗闇なため、マノの攻撃は思うように当てられず躱されてしまう。


「く…っ!」(こっちの攻撃は全然当たらないのに、ガイムさんの攻撃は確実にアタシの位置を狙って攻撃している……)


「お前がイオを……お前が……」

「ガイムさん! アタシです、マノです!」

「くたばれ、クソ悪魔!」


 マノの必死の呼びかけにも耳を傾けず、ただひたすらに攻撃を行うガイム。


(こうなったら、少し申しわけないけど、力づくで無力化させるしか…)「聖奥解放!」


 マノの背後に顕現する騎士の化身。

 光の魔力を帯びているため、周辺を照らし出す。


(ちょっと…いえ、だいぶ痛いけどガマンしてくださいね!)「ナイト・オブ・セイバー!」


 マノと化身の動きが重なり、ガイムへと強大な一撃振るわれる。


「聖奥解放!」

「!?」


 直後、ガイムも聖奥の号令をかける。


(まともな武器も魔力も無いのに聖奥が使えるわけ……)「はぁぁぁ!!」


「ティルフィング!!」


 ガイムは手にしていた石の柱で、マノの聖奥、ナイト・オブ・セイバーを相殺せんと放ったのは、彼が愛用する魔剣ティルフィングによる刺突の聖奥だったが、、、


 ドゴォォォぉン!!!


 魔剣を使用したわけではないので何が起きる事もなく、石の柱はマノの技で粉々に……。

 ガイムも聖奥を正面から受けたので意識を失ったものの、、、


「ぁ…………が…………」

「はぁ……はぁ……」(傷が残らないように加減したつもりですけど……)「威力の大きい技って……調整する方が…………むつかしいなぁ……はは…………はぁ……」


 、、、、、


「あらら……。 せっかくガイムくんにだけは、暗闇でも戦えるよう魔力感知を出来るようにしてあげたのにまけちゃったか……。

 ま、相手がマノちゃんじゃ、団長さんや守護者くんでも結果は同じだったろうし仕方ないかも?」


 トンボの眷属を通して地下最深部での出来事を観察するレヴィアタン。


『……』

「?……」


 すると、突然マノの動きが止まる。


『……っ』

「……!」


 次に体か一瞬動いた時には、マノの姿は眼前……すなわち、眷属のすぐそこにまで迫っていた。


『アタシがアナタを必ず止めます』

「…………」


 マノが言い残すと、地下最深部を監視する映像はそこで途切れた。


「……マノちゃんったら、最初から私が目的か……。

 ふふ……可愛い。 こんな可愛いモノが他の人に靡いているなんて、嫉妬しちゃうな……」


 、、、、、


(と、啖呵を切ったのはいいもの……。

 今のガイムさんに魔力を分けたら、また暴れ出すだろうし、このままの状態だと、いつまで保つかわからない……)「はぁ〜〜〜〜っ……。 どうすれば……」


 深い溜め息を吐き、頭を悩ませるマノ。


(こんな時……)「こんな時、アルハさんなら、どうしてたんでしょうか……」


 その一言が引き金だった。


 ゴンッ!


「ぎゃ!?」


 マノの頭へ激突した(ソレ)は。


「いたた……。 はいはい……今度はなん…え……」


 淡く、優しい白光を放ち、地面から数センチ浮いた状態で直立していた。


「弓が立ってるゥゥゥゥ〜〜〜っッ!?!?」

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