神殿に巣食う魔獣 1
「エナさん、素朴な疑問なんですけど……」
「疑問?」
「はい。
エナさんが腰に付けてるその魔剣やガイムさんが持っていた魔剣って、どうして四つもあるんですか?
団長であるエナさんだけが持っていれば良いと思うんですけど……」
「ウム。 マノにはちゃんと説明をしていなかったな。
四魔剣は元は一つの魔剣だった。
だが、とてつもないほど強大な力を秘めていたため、人間が手にする事が出来なかった。 神の魔力で作られた代物だからな、当然といえば当然だが。
その為、人間が手にしても害が無いように個々の力を弱める意味合いも含め、魔剣を四本に分け、一本あたりの力を抑制したんだ」
「そうだったんですね……。 うん?
でも、だったら、ルイさんが持っていれば良くないです?」
「鋭いな。
俺も昔、そう思い、王に訊ねたんだ。 すると……。
…………」
「? エナさん、どうかしたんですか?」
「今、凄く嫌な魔力を感じてな……」
「嫌な魔力? ガイムさん達とは違う魔力ですか?」
マノからの問いかけに首を縦に振る。
「少し急ごう」
「はい! …と、いっても……」
数時間もの間、神殿内を歩き回っている二人。
しかし、どこまで行こうと果てのない道にマノは嫌気が差していた。
「……いっそのこと、地面に穴でも空けちゃいます?」
「そんな事をしたら浸水してしまうぞ」
「でもでもでも! 下に進むのが正攻法かもしれないし……」
「……はぁ。 だったら、試しにやってみるといい」
「良いんですか!? さっき、浸水がどうこうって……」
「そうなったら、俺の魔剣で塞ぐだけだ」
「エナさんの魔剣って、そんな能力もあるんですか……」
「うむ。刀身部分は生命体以外の修復にも使える」
「なるほどです!
じゃ、お言葉に甘えて……」
魔宝石の腕輪からダイヤモンドとルビーの力を引き出すマノ。
「聖奥解放! 穿て、グングニル!!」
轟ッ!
マノの放った聖奥は、そこに石床があった事を思わせないほどに粉砕し、砂埃の合間からは、、、
「マズい…ッ!」
水が神殿内へと入り込む。
「っ……いいえ! ちょっと待って下さい!」
「?」
「よく、見てください」
神殿内へと入り込むと思われた海水は、その直前で大きく流れを変え、神殿の外へと排出されていた。
「どういう仕組みなんだ……」
「あ、エナさん!」
「どうした?」
「ほらほら! やっぱり……」
「こ、これは……」
マノが空けた地面の下には夜のような空間。
「だれかいますね……」
「見えるのか?」
「はい……ロープで巻かれてミノムシにみたいになっている人が二人と……。
……。
……ん?
エナさん。 ツメがあって、目が埋まってて、丸みのある毛むくじゃらな二メートルぐらいの哺乳類っぽい生き物って何かいますか?」
「二メートル!? そこを除けばモグラだが……。
いや、待てよ。 確か、リバイアサンの使役する眷属には……」
「なんだーヨ、おマン等」
暗闇から聞こえるトンチンカンな口調のダミ声。
「これからワシがカワエエフェア〜ンセとイチャイチャするって時にジャマするなーヨ」
「「……」」
「エナさん、もしかしなくてもあのモグラって……」
「ああ。 リバイアサンの眷属だ」
「アァンッ!? ヒソヒソ話するなーヨ!!
…まあ、いいだーヨ。 これからフェア〜ンセと、おっセッセするのを見て興奮してればいいだーヨ」
「さっきから言ってるフェア〜ンセって……」
「んぅンンン〜〜? このフェロモンが分からないのかーヨ。
茶髪のロリと雌の匂いが濃いピンク髪だーヨ」
「まさか……イオとアリアの事を言っているのか…?」
「イオ? アリア?
なんだーヨ、おマンの知り合いかーヨ。
でも、やらねーヨ。 二人ともワシのフェア〜ンセだーヨ。
……ん? ウボげェ!?」
「? 今度はなんだ…」
「なんか、鼻をつまんでます」
「な………なななななななななななななななんだーヨ、おマン……」
「? アタシ、ですか?」
「おマン、なんで姐さんと同じ匂いするだーヨ……」
「姐さん……?
おい、モグラ。 一体、誰の事を……」
「うるせぇだーヨ!男に用はないだーヨ!
姐さんも変な魔力の塊持った男と二人っきりだーヨ…なんだーヨッ!」
一人で癇癪を起こし、暗闇の中で地団駄を踏むモグラ。
「フンッ……ともかく、ワシとフェア〜ンセのおっセッセを邪魔するつもりなら、おマン等から血祭りだーヨ!」
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次回は10月8日18時に投稿予定です。




